Fate/cross wind   作:ファルクラム

86 / 120
第4話「魔霧に悪魔は嗤う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霧の中で少女は詰まれた木箱の上に座りながら、ぼんやりと宙を見つめて考えていた。

 

 ジャック・ザ・リッパーの名前で呼ばれている少女は、その容姿に不釣り合いなナイフを携えている。

 

 ナイフの刀身からは血が滴り、少女が今日も何人か、人を殺した事を意味していた。

 

 その証拠に、彼女の足元には、今まさに殺したばかりの死体がうつぶせに転がっている。

 

 地面に広がる血だまりから察するに、その人物が既に絶命しているであろうことは明白だった。

 

 しかし、

 

 手の中でナイフを弄ぶジャックには、既に目の前の死体に対する興味は皆無だった。

 

 ぼんやりと考え込むジャック。

 

 その脳裏に浮かぶのは、先の戦闘でのこと。

 

 命じられるまま襲ったカルデア一行。

 

 そこで出会った・・・・・・・・・・・・

 

「・・・・・・うーん」

 

 腕を組んで考え込む。

 

 正直、こんな事初めてだったため、ジャックも迷っているのだ。

 

 何と言うか、

 

 どうにも胸の奥が「もやもや」する気がしたのだ。

 

 いったい、この「もやもや」は何なのか?

 

 気になって今日は、「かいたい」に集中できなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・うん、よしッ」

 

 何かを決断したように、ジャックは勢いよく木箱の上から立ち上がった。

 

 悩むくらいなら行動しよう。

 

 もう一回、会いに行こう。

 

 そうすれば、何かわかるかもしれない。

 

 そう考えたジャックは、霧の中を音も無く走りだした。

 

 

 

 

 

 駆け去った少女。

 

 その背中を見送りながら、

 

 霧の中から1人の青年が現れた。

 

 長い髪に整った顔立ち。ゆったりとした白いローブに身を包んだ若い男。どこか、研究員のような出で立ちをしている。

 

 男はじっと、霧の先を見詰めている。

 

 既にジャックの姿は無い。

 

 暗殺者(アサシン)のサーヴァントであり殺人鬼の少女。

 

 その思考を推し量る事は常人には不可能に近い。

 

 理解できるとすれば、余程、彼女に寄り添う事が出来る人間か、

 

 あるいは、彼女と同類か。

 

 そして男は、自分が後者である事を誰よりも自覚していた。

 

「・・・・・・・・・・・・いやはや、ままなりませんね、何事も」

 

 嘆息気味そう言うと、

 

 男の姿は霧に溶け込むようにして消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 緊張が包む、フランケンシュタイン邸。

 

 中央に佇むは、ピエロのような形をした男。

 

 悪魔メフィストフェレスを名乗る、キャスターのサーヴァント。

 

 それを取り囲むように、複数の影が身構える。

 

 響、美遊、クロエ、モードレッドはそれぞれ、手にした剣の切っ先を真っすぐにメフィストに向け、斬りかかるタイミングを計っている。

 

 対して、微動だにしない悪魔。

 

 メフィストは今まさに、カルデア特殊班相手に、単騎で挑もうとしていた。

 

 無謀、としか言いようがない。

 

 が、

 

 メフィストは、まるで現状が見えていないかのように、周囲を囲まれながら、笑みを浮かべて佇んでいた。

 

 そんな一触即発の状況の中、

 

 少し離れた木の影から、状況を見守る複数の影があった。

 

「・・・・・・どう思います、あれ?」

「どうも・・・・・・こうも」

 

 尋ねられた女は、面倒くさげに髪をかき上げながら答える。

 

「死にたい、みたいね、彼」

 

 答えた女は、西洋の街並みにそぐわない、巫女装束を身に纏っている。

 

 第三特異点オケアノスにおいてカルデア特殊班の前に立ちはだかった、キャスターを名乗る女である。

 

 相変わらず、気だるげな眼差しと仕草で、今にもカルデア特殊班との戦端を開こうとしているメフィストを見やっている。

 

 そしてもう1人。

 

 彼女に問いかけたのは、軍服姿にコートを羽織った少年。かつて復讐者(アヴェンジャー)を名乗って響達の前に現れた少年だ。

 

 2人の目は今、魔霧の向こうで戦闘を開始しようとしている両陣営に向けられていた。

 

「どのみち、たかがキャスター1人、ここで使い潰しても問題は無いのですが・・・・・・」

「なら・・・・・・」

「しかし、カルデアに何の打撃も与えられず手駒を1つ失う、と言うのは流石に面白くない。既にアサシンにも動いてもらっていますが、できればもう一押し、こちらからテコ入れをしたい所です」

 

 言い募ろうとするキャスターを遮り、アヴェンジャーは向き直る。

 

「そんな訳でキャスター、お願いできますか」

「・・・・・・・・・・・・はあ、面倒」

 

 キャスターは嘆息しつつ、心底イヤそうに目をつぶる。

 

 しかし、仕事を放棄する気は無いらしい。

 

 懐に入れた手を抜いた時、その指には数枚の呪符が握られていた。

 

「改めて見ると、あなたのそれ、随分と便利ですよね」

「・・・・・・師匠が、良かったから」

 

 心底、どうでも良さそうに答えると、キャスターは軽く呪符を投擲する。

 

 風に吹かれて飛翔する呪符。

 

 呪符から魔力が放出されたかと思うと、呪符は地面に張り付く。

 

 やがて、

 

 土がまるで生き物のようにこね回されたかと思うと、意思があるように立ち上がった。

 

 

 

 

 

 場を満たす殺気は、全て中央に立つピエロへと向けられている。

 

 鋏を構えたメフィスト。

 

 そんな悪魔を取り囲む、特殊班のサーヴァント達。

 

 360度、どこから斬りかかられてもおかしくはない中、

 

 しかしメフィストは口元から笑みを絶やす事は無い。

 

「随分、余裕じゃねえか」

「いえいえ~ こう見えて小心者ですからね~ ワタクシ。もう、心臓バクバク、このまま帰っちゃいたいくらいです」

 

 モードレッドの挑発に、へらへらした調子で答えるメフィスト。

 

 対して、

 

 モードレッドは土を踏みながら、剣を振り翳す。

 

「生憎、逃がす気はねえよッ!!」

 

 言い放った。

 

 次の瞬間、

 

 叛逆の騎士の背後から、襲い掛かる影があった。

 

「チッ!?」

 

 視線をわずかに反らして舌打ちするモードレッド。

 

 予期しえなかった、背後からの奇襲。

 

 しかし、

 

 この程度で、円卓の騎士は怯まない。

 

 振り返りざまに、勢いを殺す事なく剣を横なぎに一閃。

 

 赤雷を纏った斬撃は、背後に立った相手を容赦なく斬り捨てる。

 

 しかし、襲撃はそれで終わりではなかった。

 

「敵襲ですッ 立香先輩、凛果先輩、警戒をッ!!」

 

 すぐさま、マシュが藤丸兄妹の下へと移動し大盾を構える。

 

 これまでの戦いで、既に彼女も自分の役割を理解している。

 

 彼女はマスターを守る、文字通り最後の盾。敵を倒す事ではなく、あくまで守る事を目的としている。

 

 その為に、彼女の持つ宝具もスキルも、防御面に特化している。

 

 逆を言えば、マシュまで前線に出なければなら無くなれば、完全に切羽詰まった状況である事を現していると言えよう。

 

「来るわよッ 結構な数!!」

 

 干将・莫邪を構えながらクロエが叫ぶ。

 

 彼女の言葉通り、木々を押し分ける形で、次々と湧き出てくる。

 

 それは、不気味な存在だった。

 

 先に戦ったマネキン人形はまだしも人の形をしていた。

 

 目の前の連中も一応、人の形をしていると言えない事は無い。

 

 が、

 

 異様に長い腕、首の無い頭部、全身は体毛に覆われ、毛の奥から深紅の瞳が覗いているのが見える。

 

 明らかに人ではない。

 

 それどころか、自然発生の魔獣とも違う。

 

 人造生命体ホムンクルス。

 

 そうとしか言いようがない。

 

 それが、少なくとも10以上。

 

 のっそりと現れる。

 

 ちょうど、メフィストを包囲したカルデア特殊班を、外側から更に包囲した形である。

 

「クソッ いきなり現れやがったッ 何で気付かなかったッ!?」

 

 向かってくるホムンクルスの頭を斬り飛ばしながら、モードレッドが叫ぶ。

 

 流石の剣技と言うべきか、瞬く間にホムンクルスを斬り捨てるモードレッド。

 

 しかし、

 

「馬鹿め。こいつらは所詮、意志の無い人形。ここで急造で作られただけだ。気配なんぞあるわけ無いだろう。そんな事も気付かんとは」

「なあ、あいつから先に斬って良いかッ!?」

 

 小ばかにしきった調子の少年に、いよいよ(と言うほど頑丈でもなさそうな)モードレッドの堪忍袋も限界を迎えている。

 

 だが、実際問題として、それどころではない。

 

 次々と湧いてくるホムンクルス。

 

 カルデア側を標的と見定めたらしく、次々と攻撃を仕掛けてくる。

 

「行きますッ」

 

 鋭い声と共に、白百合の剣士が駆ける。

 

 地を蹴って相手の懐に飛び込む美遊。

 

 伸ばされたホムンクルスの腕を鋭い一閃で半ばから切断すると、剣の切っ先を相手の胸中央に叩き込む。

 

 核心を突く一撃。

 

 ホムンクルスは悲鳴を上げる事も無く、その場で消滅する。

 

 だが、敵は次々と湧いてくる。

 

 ホムンクルスの腕は元々長いのだが、攻撃時には更に3倍近くにまで伸びる。殆ど伸縮自在の槍のような物だ。

 

 勿論、サーヴァントの戦闘能力には敵し得ない。冷静に対応すれば、決して強敵とは言い難い。

 

 しかし、リーチを制されているのは、聊か以上のやりにくさがあった。

 

 他の特殊班メンバーも、既に交戦を開始している。

 

 そして、

 

「うゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

 戦槌を携えた少女もまた、近付こうとするホムンクルスを殴り飛ばす。

 

 戦槌からは雷光が迸り、直撃を受けたホムンクルスは、ひとたまりもなく砕け散って消滅する。

 

 いったい、どこに少女の細腕のどこに、あれだけの力があるのかと言いたくなるような光景だ。

 

 彼女の活躍もあり、包囲網が崩れ始める。

 

 ホムンクルスとは言え、所詮はサーヴァントに敵う者ではない。

 

 だが、

 

 そんな中で1人、音も無くその場を去ろうとする者がいる。

 

 メフィストフェレスだ。

 

 カルデア特殊班がホムンクルス殲滅に躍起になっている内に、撤退してしまおうと言う算段らしい。

 

 だが、

 

「ん、どこ行く?」

 

 静かな声と共に、立ち塞がる影。

 

 振り返った悪魔の目に飛び込んで来たのは、漆黒の着物に短パンを穿いた暗殺者(アサシン)の少年。

 

 手にした日本刀を大上段に携え、響はメフィストに斬りかかる。

 

「おおーっとー!?」

 

 振るわれる白銀の剣閃。

 

 とっさに、その場から飛びのいて回避するメフィスト。

 

「おやおやおや~」

 

 軽薄な笑顔を浮かべるメフィスト。

 

「いえですね~ 皆さんどうやらお忙しいようですし、ワタクシ出直してこようかと思いましてですね、はい」

「ん、その必要、無いッ」

 

 告げると同時に疾走する響。

 

 首元に巻いたマフラーを風に靡かせて斬りかかる。

 

 間合いにメフィストを捉えると、刀を横なぎに振るった。

 

 風を切る刃。

 

 だが、

 

「はッぁあああッ」

 

 奇声と共に、のけ反るようにして響の剣を回避するメフィスト。

 

 響は逃すまいと空中を蹴って連撃を仕掛ける。

 

 放たれる剣閃が、霧を反射して映る。

 

 しかし、

 

「んッ!?」

 

 舌打ちする響。

 

 攻撃が、当たらない。

 

 確実に自身の間合いに捉えているはずなのに、響の剣はメフィストを斬る事は無い。

 

 ほんの数ミリ。

 

 微妙な差で斬れない。

 

「・・・・・・・・・・・・成程」

 

 一旦、距離を置いて呼吸を整えながら、響は呟く。

 

 幾度かの応酬を経て、響はカラクリが読めてきた。

 

 最初は、メフィストが何かのスキルか宝具でも使っているのかと思っていたが、どうもそれは違う。

 

 響の感覚を狂わせているのは恐らく、この霧だ。

 

 魔霧が響の感覚を微妙に狂わせ、斬撃の間合いを誤らせているのだ。

 

 誤差が微妙であるせいで、却って響は目測のずれを修正できなかったのだ。

 

 だが、

 

「ん、狂った分を、考えて・・・・・・」

 

 呟くように言うと、

 

 響は再びメフィストに斬りかかる。

 

「ん~ッフッフッフ、また来ますか~ 良いですよ~ メッフィーは如何なる挑戦をもお受けしま~す」

 

 手に持った鋏を構えながら、響を挑発するメフィスト。

 

 ピエロ男の眼前に迫る、暗殺者の少年。

 

 擦り上げるように、斬撃を繰り出す響。

 

 だが、

 

 駆けあがるような一戦は、メフィストの鋏に防がれる。

 

 火花を散らす両者。

 

「んッ」

「イヒッ」

 

 暗殺者と魔術師。

 

 視線が、至近距離でぶつかり合う。

 

 その間にも、響は頭の中で素早く計算する。

 

 必殺の間合いに捉えたにも拘らず、攻撃はメフィストに届かなかった。

 

 それは、まだ計算が甘かったからだ。

 

 ならば、

 

 更に計算を付け加える。

 

 答えに至る数値が足りなければ、必要な数値を付け加えるだけの話。

 

「ん・・・・・・これ、でッ!!」

 

 響の左手は、

 

 自身の腰裏に伸びる。

 

 そこにある柄を、逆手に握る。

 

 同時に魔術回路を起動。

 

 刃に魔力を流し込む。

 

「イヒッ!?」

 

 驚愕するメフィスト。

 

 その眼前で、

 

 刃が振られる。

 

 手に伝わる、確かな手応え。

 

「ギィッ!?」

 

 同時に、メフィストの口から初めて、苦悶の声が漏れた。

 

 響の一撃が、悪魔に初めて有効打を与えたのだ。

 

 見れば、メフィストの体に、斜めに斬線が走っているのが見える。

 

 数歩、傷口を抑えて後退するピエロ男。

 

「グッ おのれ・・・・・・」

 

 先程まで、薄笑いを浮かべていた顔を険しく歪め、響を睨みつける。

 

 一方、

 

 響の左手には、一振りのナイフが握られている。

 

「ん、流石、ダ・ヴィンチ・・・・・・」

 

 切れ味に満足する。

 

 このナイフは、レイシフト前にダ・ヴィンチに作ってもらった物だ。

 

 少しでも戦力の底上げを狙った物だったが、出来は響の予想以上だった。

 

 ダ・ヴィンチは響の腕の長さや重心バランスを計測して振り易い長さと重さを選別し、更に響の魔術回路と連動できるように加工してくれたのだ。

 

 簡易型の魔剣と称しても良いナイフは、その一閃でメフィストにダメージを与える事に成功したのだ。

 

「ん・・・・・・じゃあ」

 

 響はナイフを腰の鞘に戻すと、刀の切っ先をメフィストに向けて構える。

 

「これで、決める」

 

 スッと、目を細める響。

 

 対して、

 

「・・・・・・キヒッ」

 

 傷口を無造作に拭うと、メフィストは立ち上がる。

 

 増大する魔力に、響は警戒を強める。

 

 メフィストは、口元に笑みを張り付ける。

 

「いやいや~ 外見に似合わずお強いのですね~ ワタクシ、完全に騙されてしまいましたよ、はい」

 

 どこまでも、へらへらした態度を崩そうとしないメフィスト。

 

 だが構わない。

 

 奴の動きは既に捉えた。次は攻撃を外さない。

 

 響が攻撃を仕掛けようとした。

 

 だが、

 

「ですので・・・・・・」

 

 メフィストが、動いた。

 

「ワタクシも、切り札を使う事にしました。ええ、ええ、はい」

 

 言い放つと同時に、

 

 サッと、腕を頭上に掲げるメフィスト。

 

 次の瞬間、

 

 響の周囲に、無数の爆弾が出現した。

 

「なッ!?」

 

 驚く響。

 

 対して、

 

 悪魔は笑う。

 

微睡むの爆弾(チクタク・ボム)!!」

 

 次の瞬間、

 

 響の周囲の爆弾が、一斉にさく裂した。

 

 踊る爆炎。

 

 爆風は、半壊していたフランケンシュタイン邸を更に吹き飛ばしていく。

 

「響ッ!!」

 

 ホムンクルスを斬り飛ばし、叫ぶ美遊。

 

 少年暗殺者の姿は、立ち込める煙に遮られて視認する事は出来ない。

 

 その時だった。

 

 

 

 

 

「あらあら、よそ見をするなんて、いけない子ね」

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 突如、聞こえてくる声。

 

 美遊は殆ど本能に従い、その場から飛びのく。

 

 一瞬の間を置いて、美遊がいた空間が薙ぎ払われる。

 

 風を切る音。

 

 間一髪、

 

 美遊が飛びのいた為、攻撃は空振りに終わる。

 

 だが、

 

「フフ、残念、外してしまったわね」

「・・・・・・誰?」

 

 問いかけながら、美遊は剣の切っ先を、笑みを浮かべた女に向ける。

 

 妖艶な女性だった。

 

 胸元と肩が大胆に開いた裾の長い、真っ赤なイブニングドレスを着こみ、手には肘まである長い手袋をしている。

 

 顔の上半分を覆う仮面が、怪しさを増している。

 

 手にした鞭。恐らくあれが、美遊を攻撃した物だろう。

 

 仮面の奥から覗く瞳は、どこか引き込まれるような印象がある。

 

 女は美遊の背後から、突然現れた。

 

 まるで、少女の気が完全に逸れるタイミングを計っていたかのように。

 

 しかも、

 

「気配を、感じなかった・・・・・・・・・・・・」

 

 美遊が持つ直感スキルは伊達ではない。いかに目の前で戦闘を繰り広げていたとしても、周囲にどのくらいの敵がいるのか、ある程度なら把握できる。

 

 しかし、相手が攻撃を開始するまで、美遊はその存在を殆ど察知できなかった。

 

 と言う事は、相手は何らかのスキルを使って身を隠していた事になる。

 

「アサシン・・・・・・」

 

 美遊の呟きに対し、笑みを見せる女性。

 

 次の瞬間、手にした鞭を振り翳して美遊に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 踊る爆炎。

 

 その様を、メフィストは笑みを刻んで見つめている。

 

 「微睡む爆弾(チクタク・ボム)

 

 魔術師(キャスター)メフィストフェレスの持つ宝具の1つ。

 

 効果は爆弾と言う物理的攻撃手段でありながら、その正体は一種の「呪い」にある。

 

 対象となるサーヴァントの霊基を改変し、その体内で炸裂させる。

 

 言わば、体の中に爆弾を仕掛けるに等しい。

 

 つまり、真名解放して宝具を発動した時には、既に爆弾は仕掛け終わっている事を意味している。

 

 何とも悪魔らしい、えげつない宝具であると言える。

 

 これを回避するには、敏捷よりも幸運のパラメータが必要になる。

 

 晴れる煙の中、

 

「イヒ・・・・・・・・・・・・」

 

 跡形もなく吹き飛んだ少年に、笑いを浮かべるメフィスト。

 

 いかな大英雄でも、体内に爆弾を仕掛けられて生き残れるはずもない。

 

「イヤ~ 見事に木っ端微塵ッ これぞ、芸術って感じですかね~ アヒャヒャッヒャヒャッ!!」

 

 高笑いを浮かべるメフィスト。

 

 彼は自らの意にそぐわぬ人間を破滅させる悪魔。

 

 かつて、ゲオルグ・ファウスト博士を死に追いやった時と同じだった。

 

「さて、それじゃあ、お暇させていただきましょうかね~ これでもワタクシ、多忙の身でして」

 

 そう言って、踵を返そうとしたメフィスト。

 

 次の瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 軽い音と共に、肩に何か細長い物が置かれる。

 

「・・・・・・・・・・・・はい?」

 

 目を見開く悪魔。

 

 果たして、

 

 メフィストの視界の先では、

 

 刀を真っすぐに構えた、響の姿があった。

 

「んなッ!?」

 

 目を見開く悪魔。

 

 メフィストの肩に置かれていたのは、響の刀だったのだ。

 

 「微睡む爆弾(チクタク・ボム)」をまともに受けたにも拘らず、響は傷一つ負った様子がない。

 

「馬鹿な・・・・・・なぜ・・・・・・」

 

 次の瞬間、

 

 ザンッ

 

 メフィストの肩に置いた刀をそのままスライド。首を引き斬った。

 

「ガァッ!?」

 

 飛び散る鮮血。

 

 首を斬られ、霧の視界が深紅に染まる。

 

「ああ・・・・・・やっぱり、こうなりました、か」

 

 どこか恍惚とした表情で呟くメフィスト。

 

 同時に、その体から金色の粒子が立ち上り、消滅現象が始まる。

 

 前のめりに崩れるピエロ男。

 

「それにしても・・・・・・な、ぜ・・・・・・ワタクシの、爆弾は、確かに、あなた、を・・・・・・・・・・・・」

 

 驚愕の眼差しを顔面に張り付けたまま、消滅していくメフィストフェレス。

 

 後に残った少年は、刀を血振るいして鞘に納める。

 

「ん、秘密」

 

 鍔鳴りの音と共が鳴り響いた。

 

 その様子を見ていたアサシンの女は、仮面の奥で舌打ちを漏らす。

 

「やれやれ、先走る奴は、これだから嫌いよ」

 

 斬りかかろうとする美遊を、鞭を振るって牽制する。

 

「ねえ、あなたも、そう思わない?」

「関係ないッ」

 

 鞭の一撃を、横にスライドして回避。

 

 再度、斬りかかろうとする美遊。

 

 だが、

 

「動きが単調すぎよ」

 

 薄笑いを浮かべて、鞭を振るうアサシン。

 

 蛇のようにしなる軌道に、美遊の突撃は阻まれる。

 

「まあ、このまま遊んであげても良いんだけど、流石にあなた達全員相手にするのはきついわね。私、攻めるのは好きだけど、攻められるのは好みじゃないの」

 

 そう言い放つと、美遊がひるんだすきに素早く跳躍、木の枝に飛び乗る。。

 

「待てッ」

「また会いましょうね子猫ちゃん。今度は、出来ればプライベートで」

 

 そう言い残すと、アサシンは木立の影へと消えていく。

 

 既に、その気配を追う事も出来なくなっていた。

 

 嘆息しつつ、剣を鞘に納める美遊。

 

 見渡せば、既にホムンクルスも大半が倒されている。

 

 半面、特殊班の面々は、全員無事な様子だ。

 

 今、最後のホムンクルスをモードレッドが斬り倒したところだった。

 

 後に残る静寂。

 

 と、

 

「ふん、終わったか。戦闘力は流石と言うべきか。もっとも、これくらいやってくれなければ話にならんところだったが」

 

 1人、偉そうにふんぞり返って、少年が告げる。

 

 対して、

 

 初めからケンカ腰だったモードレッドは、容赦なく少年に剣を向けた。

 

「テメェ、何もしてねえだろ」

「ん、モーさんより偉そう」

「やかましい」

 

 余計なチャチャを入れる響を黙らせつつ、モードレッドは少年に向き直った。

 

「テメェ、何モンだ? あの道化の仲間じゃないって言っても、怪しい事には変わりねえぞ」

「おいおい、俺だけが怪しいのか?」

 

 問いかけるモードレッド。

 

 対して、少年は肩を竦めながら、戦槌を持った少女を差す。

 

「そっちは良いのか?」

「ああ、そいつは構わねえ」

 

 しかし、モードレッドはあっさりと言ってのけた。

 

「詳しい事は省くが、そいつとは少しばかり縁があってな。まあ、こんな所で会えるとは思ってなかったが」

 

 モードレッドが視線を向けると、少女は軽く頷きを返すのが見えた。

 

 その様子を見て、少年は嘆息する。

 

「成程な。まあ、俺としても、これ以上無駄な時間を使わされるのは堪らんしな」

 

 どこまでも偉そうに言いながら、少年は一同を見回して言った。

 

「それでは名乗らせてもらおうか。俺の名はハンス・クリスチャン・アンデルセン。見ての通り、しがない物書きに過ぎん。そこの・・・・・・」

 

 言いながら、アンデルセンを名乗る少年は、花嫁衣裳姿の少女を差して言った。

 

「フランケンシュタイン嬢と違って戦闘面に関しては役立たずの極みだが、まあ、よろしくな」

 

 呆気に取られる一同を前にして、アンデルセンは、そう言って肩を竦めた。

 

 

 

 

 

第4話「魔霧に悪魔は嗤う」      終わり

 




オリジナルサーヴァント

【性別】女
【クラス】アサシン
【属性】混沌・悪
【隠し属性】人
【身長】163センチ
【体重】58キロ
【天敵】??????

【ステータス】
筋力:C 耐久:B 敏捷:B 魔力:C 幸運:D 宝具:C

【コマンド】:AABBQ

【保有スキル】
〇闇の淑女
敵一体の防御力をダウン(3ターン)、敵一体の攻撃力をダウン(3ターン)、自身に回避状態付与(1ターン)

〇耳に蕩ける色良き悲鳴
自身のアーツ性能アップ(1ターン)、敵一体にスタン付与(1ターン)

〇??????

【クラス別スキル】
〇気配遮断
自身のスター発生率をアップ

【宝具】 
 〇??????

【備考】

 AD1888のロンドンに現れた女アサシン。ドレス姿に仮面を付けた、妖艶な雰囲気を持つ美女。

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。