Fate/cross wind   作:ファルクラム

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第12話「地下に棲むモノ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どれくらい、歩いた事だろう。

 

 果てが無いかに思える地下道を、どこまでも降りて行く。

 

 既に、行程は4層目に達していた。

 

 その間、時折襲ってくるヘルタースケルターやホムンクルスと言った敵は、サーヴァント達によって悉く撃退されていた。

 

「あらら、まだ続くみたいね」

「ん、長い」

 

 先頭を歩くクロエと響の衛宮姉弟が放つ言葉にも、嘆息が混じるのが判る。

 

 その視界の先では、尚も続く暗闇が続いていた。

 

 先の戦いを終え、一時の休息により調子を整えたカルデア特殊班一同は、敵本拠地を目指して探索を開始していた。

 

 ヒントは、先に倒した2人の魔術師、パラケルススとチャールズ・バベッジが残していた。

 

 ロンドンの下に広がる大空洞。

 

 その深遠で、魔霧計画の首謀者たる魔術師「M」が待っている。

 

 このロンドンにおける人理焼却を目論んでいるのが、その「M」である事は、もはや疑いない事実だ。

 

 ならば、乗り込んで討ち取るまで。

 

 その想いを胸に、特殊班一同は、暗い地下道を進んでいた。

 

 19世紀のロンドンには既に鉄道が整備され、地下鉄も存在していた。

 

 その地下鉄構内から、更に隠し通路を探し当て、内部へと進んで行く。

 

 地下道内部は意外なほど広く、サーヴァントが全力で戦闘しても余裕があるくらいである。

 

「しっかし、噂では聞いていたが、ロンドンにこんな地下があったとはね」

 

 モードレッドが、周囲の壁を見渡しながら、呆れたように言った。

 

 今回、この場に来たのは、立香、凛果の両マスターに加え、サーヴァントはマシュ、響、美遊、クロエ、モードレッド、ジャックである。

 

 ジキル、アンデルセン、シェイクスピアと言った戦闘力の低い面子はアパートに残っており、それをナーサリーとフランが護衛と言う形で付き添っている。

 

 フランに関しては同行を希望していたが、それは却下された。

 

 却下したのは、モードレッドである。

 

「良かったのか、フランの事?」

「ああ。今のあいつは、できれば戦わせたくねえからな」

 

 尋ねる立香に、モードレッドは静かな口調で答える。

 

 先の戦いで、旧知のチャールズ・バベッジ博士が消滅する様を見たフラン。

 

 しかもバベッジは、彼女が見ている前で、敵の手によってトドメを刺された。

 

「今、フランを連れて来たら、たぶんあいつは、何もかもかなぐり捨てて、敵に突っ込んでいくだろう」

 

 まるで、その光景をどこかで見た事があるかのように呟くモードレッド。

 

 それは、時々、脳裏に浮かぶイメージ。

 

 翠の電撃を放ち、戦槌を振り上げて迫る花嫁衣裳の少女。

 

 それを迎え撃つのは・・・・・・・・・・・・

 

 剣を構え、禍々しい鎧を着込んだ。

 

 自分自身(モードレッド)

 

 そんな馬鹿な、と思う。

 

 自分が、フランと敵対する事などありえない、と。

 

 しかし、だからこそ思ってしまう。

 

 フランはきっと、ボロボロに成り果て、留まる事を知らずに破滅へと転がり落ちていく、と。

 

 いずれにせよ、

 

 そんな光景は見たくなかった。

 

「優しんだな」

「馬鹿言え」

 

 笑みを浮かべる立香の脇腹を、モードレッドは照れ隠し交じりに軽く小突いた。

 

 モードレッドはフランに甘い。

 

 これは以前、響にも言われた事だ。

 

 この事について、恐らくモードレッド自身、理由は判っていない。

 

 しかし、放っておけない。

 

 それはモードレッドが持つ、生来の面倒見の良さだけではない。どこか、別の時空から繋がる因縁による物なのかもしれなかった。

 

 そうしている内にも特殊班一同は歩を進め、更に地下へと降りて行く。

 

 どれくらい、潜った事だろう?

 

 既に10階建てのビルに相当するくらいの深度には達しているはずだった。

 

 そう思って、何度目かの階段を伝って階下へと降りた時だった。

 

 突如、

 

 視界いっぱいに、巨大な空洞が出現した。

 

 大きさは野球場がゆうに5~6個程度はすっぽり収まるくらい。天井は高く、ドーム状になっているのが判る。

 

 照明のような物があるのか、内部は昼間のような明るさがある。

 

 どこか、特異点Fにおける最終決戦の地となった円蔵山の大空洞に似ている。

 

 そして、

 

「何、あれ?」

 

 凛果が指さした方向を見る。

 

 果たしてそこには、巨大な装置が鎮座していた。

 

 見上げるほど巨大なそれは、複雑にパーツが接合され、傍目には巨大なボイラーのようにも見える。

 

 あちこちから突き出たパイプからは、莫大な量の霧が噴き出していた。

 

「どうやら・・・・・・」

「ああ、ここが魔霧計画の中心。そして、あの装置が元凶ってところか?」

 

 立香の言葉に、モードレッドが頷いた。

 

 その時だった。

 

「『アングルボダ』。と我々は呼んでいる。北欧神話に登場する女型の巨人。邪神ロキとの間に魔狼フェンリル、大蛇ヨルムンガント、女神ヘルを生んだとされる女の名だ」

 

 突如、聞こえてくる声。

 

 警戒する一同。

 

 と、

 

マスター(おかあさん)。あそこ!!」

 

 ナイフを構えるジャックは、立香を守るように立ちながら装置の脇を指差す。

 

 すると、

 

 霧に包まれた装置の脇から人影が歩み出てきた。

 

「ようこそ、カルデアの諸君。ここには何もないが、取りあえず歓迎しよう」

 

 細身で長身。ロングコートに身を包んだ若い男だ。

 

 端正な顔立ちをしているが、その顔つきには生気が薄く、まるで霊体のような印象を受ける。

 

 現れた男は、装置の前に立って振り返った。

 

「悪逆の徒は、正義の刃によって打ち倒される、か。パラケルススの言った通りになったな」

「お前が、魔術師『M』か」

 

 問いかける立香に対し、

 

 男は頷きを返す。

 

「我が名はマキリ・ゾォルケン。君が言った通り、この魔霧計画の首謀者の1人である、魔術師Mとは私の事だ」

「ハッ つまり、テメェを倒して、奥のデカブツを破壊すれば、全て解決って訳だ」

 

 抜き放った剣を構え、凶暴に言い放つモードレッド。

 

 そんな騎士の様子を、ゾォルケンはどこか虚ろな目で見つめる。

 

「円卓十三番目の騎士、モードレッドか・・・・・・アーサー王伝説に終止符を打った叛逆の騎士。君はこちら側の英霊だと思っていたのだがな。どうやら、当てがはずれたようだ」

「ハッ 俺でもない奴が、このブリテンの地を穢すなんざ、許せるはずないだろ」

「モーさん、変わらず俺様流」

 

 響のツッコミを無視して、モードレッドは、更に前へと出る。

 

「覚悟しやがれ」

 

 殺気をほとばしらせて言い放つモードレッド。

 

 そのモードレッドの傍らに立ち、立香は真っ直ぐにゾォルケンを見た。

 

「待てゾォルケン。あなたはなぜ、人類を滅ぼす側に回ったんだ? あなたは人間じゃないか、それなのに・・・・・・」

「当然の質問だが、それに答える訳にはいかない」

 

 尋ねる立香に対し、ゾォルケンは淡々とした口調で答えた。

 

「勿論、わたしとて魔術師の端くれ。そもそもは、今回の事態に対し憂いを抱える立場にあった・・・・・・」

 

 だが、

 

 ゾォルケンは、目を見開いて続ける。

 

「私は出会ってしまったのだよ、『あの方』と。そして知ってしまった。自分のしている事の無意味さを」

 

 また、だ。

 

 レフ・ライノールやオケアノスで戦ったメディアのように、背後の黒幕を匂わせるゾォルケンの言葉。

 

 その正体が何であるか、未だに片鱗すら掴めていなかった。

 

 と、

 

 アングルボダと呼んだ装置の影から、ゾォルケンを守るように複数の影が現れる。

 

 アヴェンジャーと名乗る、軍服姿の少年。

 

 キャスターと呼ばれる、巫女服姿の女。

 

 アサシンと称する、仮面の女。

 

 いずれも、ゾォルケンを守るように、立香達の前に立ち塞がった。

 

「・・・・・・生きていたのか」

 

 立香は、現れたキャスターを見ながら呟く。

 

 あの時、大英博物館前の戦いにおいて、キャスターは割って入った謎の人物によって斬られ、致命傷を負ったはずだった。

 

 それ以前に、オケアノスでは美遊によって倒されたはず。

 

 しかし今、キャスターは五体健全な姿で、立香達の前に立っていた。

 

 対してキャスターは、立香の視線など気にも留めず、気だるげにしている。

 

 そんな中、ゾォルケンは一同に背を向ける。

 

「任せる。少しで良いから、時間を稼いでくれ」

「ええ、あなたも、どうかお早く。我が主も、あなたには期待しているとの事です」

 

 ゾォルケンの言葉に頷きを返しながら、アヴェンジャーは刀を抜き放つ。

 

 同時にキャスターは呪符を取り出し、アサシンは鞭を振るう。

 

 サーヴァントの数から言えば、敵が3騎であるのに対し、特殊班は6騎。

 

 仮に戦闘になったとしても、数で圧倒できる。敵のサーヴァントを抑えている内に、ゾォルケンを倒す事が出来ればこちらの勝ち。

 

 そう思っていた。

 

 だが、

 

「一つ、君達は勘違いをしている」

 

 ゾォルケンは、落ち着き払った調子で口を開いた。

 

「君達は恐らく、こう考えている事だろう。『パラケルススやバベッジがくれた情報を元に、自分たちはここを探り当て、攻め込んで来た』と」

 

 いったい、何を言っているのか?

 

 当たり前のことを告げるゾォルケンに、訝る一同。

 

「だが、それは誤りだ。君達をここに招き入れたのは、この私なのだよ。パラケルスス、バベッジにはそれぞれ必要な情報を与え、君達が、自然とこの場所を探り当てる事が出来るようにな」

「どういう事だッ!?」

 

 そんな事をして、いったい何になるというのか?

 

 訝る立香に、ゾォルケンは淡々と答える。

 

「勿論、今日ここで、君達に消えてもらうためだ。メフィストフェレス、パラケルスス、バベッジを葬った君達を無策に迎え撃つほど、私は無謀ではない」

「抜かせッ 消えるのはテメェ等のほうだッ」

 

 強気に言い放つモードレッド。

 

 だが、

 

 対してゾォルケンが翳した物。

 

 その存在に、思わず目を見張った。

 

 魔力が溢れる、光り輝く器。

 

「あれは、聖杯ッ!?」

 

 この特異点の基点ともなっている聖杯。それが今、ゾォルケンの手に握られていた。

 

「そうだ。このアングルボダの動力源にしていた聖杯を、一時的に取り出して来た物だ。全ては、君達を屠る為の罠を完遂する為にね」

 

 言いながら、

 

 聖杯を掲げるゾォルケン。

 

「告げる、我が命運は汝の剣に、汝の剣は我が手に・・・・・・」

 

 朗々と告げられるその言葉は、聖杯召喚の詠唱。

 

「されどその眼は、狂気に曇らん」

 

 高まる魔力の中、光がゾォルケンを包み込む。

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」

 

 言い放った瞬間、

 

 ゾォルケンを中心に、雷光が迸った。

 

 空間を切り裂く、凄まじい衝撃。

 

 とっさに、マシュが盾を掲げて前へと出る。

 

「皆さん、私の後ろへ!!」

 

 叫びながら、盾兵の少女は魔力を全開放する。

 

 同時に、展開される障壁。

 

 マシュの宝具「人理の礎(ロード・カルデアス)」が展開され、迸る雷撃を防ぎ止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 訪れる静寂。

 

 その視界の先では、

 

 突如、1人の男が佇んでいるのが見えた。

 

 長身でがっしりとした印象の体格。ピッタリとしたスーツ姿に、手には手甲のような物を嵌めている。

 

「・・・・・・私を呼んだな」

 

 低く、唸るような声で告げる。

 

「雷電たるこの身を、天才たるこの身を呼び寄せたもの。それは叫びか? 願いか? 善か? 悪か? あるいは全てか?」

 

 言っている傍から、身の内より電撃を放つ男。

 

 その眼は爛々と輝き、どこか狂気じみているようにも見える。

 

「そうまで呼ばれたならば、応えねばなるまい。この二コラ・テスラが!!」

 

 二コラ・テスラ

 

 19世紀、オーストリア出身の天才科学者にして発明家。

 

 交流電気方式、無線操縦、蛍光灯、テスラコイル等の開発者。磁束密度の単位「テスラ」は、彼の名前から来ている。

 

 生前、上司との間に起こった「直流・交流戦争」のエピソードは、あまりにも有名である。

 

 雷霆の申し子、ゼウスの化身、インドラを超えし者。

 

 この世界の基礎を築いた「星の開拓者」の1人。

 

 現代における電気技術の大半は、この男の開発と言っても過言ではないだろう。

 

 その二コラ・テスラが、まさか英霊として召喚されるとは。

 

「これだけ多くの碩学者達が、揃いも揃って私を呼ぶとは、実に面白い!!」

 

 高笑いを上げるテスラ。

 

「ならば良かろう!! お前たちの願いのまま、天才にして雷電たる我が身は地上へと赴こう!!」

 

 哄笑するテスラの横に、ゾォルケンが並び立つ。

 

「ならば、私と共に行こうじゃないか。この私が、君の行くべき道を見届けよう」

「良いだろう。この身は本来、人類を守護すべき立場だが、今はお前の言葉に従わなければならないようだ」

 

 ゾォルケンの言葉に頷くと、テスラはもう一度、立香達の方を振り返った。

 

「我々はこれより、バッキンガム宮殿の上空へと向かう。止めなければ、わたしの電撃によって霧は活性化され、このロンドンは滅びる事になるだろう。せいぜい、頑張るがいい!!」

 

 挑発するような言動と共に、ゾォルケンを伴って歩き出すテスラ。

 

 その背後から、立香達が慌てて追いかけようとする。

 

 だが、

 

「おっと、これ以上は行かせるわけにはいきませんよ!!」

 

 抜き放った日本刀で斬りかかるアヴェンジャー。

 

 その一撃を、マシュが盾で防ぐ。

 

 更に、素早く斬り込む影が2つ。

 

 クロエはアサシンに、ジャックがキャスターに、それぞれ斬りかかる。

 

「あらあら、色黒のおチビちゃん。今度は、あなたがお相手なのね。嬉しいわ」

「うげッ とんだ変態ね。こりゃ、美遊が苦戦するわけだわ!!」

 

 干将・莫邪を投影して斬りかかるクロエに、仮面アサシンが振るう高速の鞭が襲い掛かる。

 

 一方、

 

 ジャックもまた、巫女キャスターと切り結ぶ。

 

 飛んで来る呪符を斬り捨て、爆炎を回避して、キャスターの懐に斬り込むジャック。

 

 しかし、殺人鬼の刃が届く前に、キャスターは障壁を展開。ジャックの攻撃を防ぎにかかる。

 

「むー かいたいできないじゃん、これじゃあ」

「物騒な、子ね・・・・・・はあ、面倒」

 

 言いながら、更に呪符の枚数を増やすキャスター。

 

 ジャックもまた、ナイフを翳して斬り込むタイミングを計る。

 

「さっさと、死んで」

「やだよ。だって、マスター(おかあさん)に褒めてもらうんだもん!!」

 

 次の瞬間、両者は同時に動いた。

 

 

 

 

 

 マシュVSアヴェンジャー、クロエVSアサシン、ジャックVSキャスターの戦いが展開される中、

 

 立香は妹へと振り返った。

 

「ここは俺達が押さえるから、凛果達はゾォルケンを追いかけてくれ」

「兄貴、でも・・・・・・」

 

 兄の言葉に、躊躇いを覚える凛果。

 

 これまでの戦いから、アヴェンジャー達が容易ならざる相手である事は想像できる。

 

 同数勝負で、果たして勝てるかどうか疑問が残る。

 

 しかし、立香は妹以上に、状況を冷静に見ていた。

 

「ゾォルケンやテスラを逃がせば、魔霧が活性化してこのロンドンは滅びる。さっき、テスラ本人が言っていた事だけど、そうなったら、この特異点は俺達の負けだ」

 

 つまり今、最もやらなくてはならない事はゾォルケンとテスラの補足、撃破。これは全てに優先される。

 

「大丈夫。奴らを倒したら、俺達も合流するよ」

 

 立香の言葉に、唇を噛み締める凛果。

 

 しかし、迷っている暇が無いのもまた、事実である。こうしている間にも、刻一刻と滅びは様っているのだ。

 

 次いで、立香は叛逆の騎士へと向き直った。

 

「モードレッドも行ってくれ。妹たちを頼む」

「・・・・・・ったく、殿は騎士の華だってのに。勝手にお株を奪ってんじゃねえよ」

 

 苦笑するモードレッド。

 

 しかし彼女自身、立香の主張の正しさを認めている。

 

 冷静に考えれば、足を止めて戦った方が有利なマシュが、この場に残って敵を足止めするのがベストだ。そしてマシュが残る以上、彼女のマスターである立香や、同じく立香をマスターとするクロエ、そして立香をマスター(おかあさん)と呼び慕うジャックが残るのが自然だろう。

 

「頼りにしてるよ」

「・・・・・ハッ そうまで言われて断ったとあっちゃ、騎士の名折れだな。まあ、任せとけ。お前の妹とチビ共は、俺がきっちりと守ってやるよ」

 

 そう言うと、踵を返すモードレッド。

 

 それを追って、駆け出す響、美遊、凛果の3人。

 

 凛果は後ろ髪を引かれる思いで一度だけ振り返ったが、すぐにモードレッド達を追って、通路の方へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 一方、

 

 いち早く地上へと出たゾォルケンとテスラ。

 

 その視界では、既に霧に覆われたロンドンの街が広がっていた。

 

 既に魔霧計画は最終段階に入っている。テスラの召還によって、計画は加速されたのだ。

 

 恐らく、ロンドン市内で生き残っている者は、もはやほとんどいないだろう。

 

 後は宣言通り、バッキンガム宮殿の上空に上り、ロンドン全体に雷を振りまけば、この特異点は完全に崩壊する事になる。

 

「さて、では行くとするか」

「ああ、頼む」

 

 頷くとテスラは、自身の魔力を活性化させる。

 

 すると、上空目がけて、巨大な階段が現れたではないか。

 

 この段を上れば、ロンドン上空へと行きつく事が出来る筈。

 

 だが、

 

 階段の一段目に、脚を掛けようとした。

 

 その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおっと待ったッ その階段は行き止まりだぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、

 

 響き渡る鮮烈な声。

 

 同時に、迸る雷光が、霧を吹き散らしてテスラ達に襲い掛かる。

 

「ぬんっ」

 

 とっさに、自身も雷撃を発して相殺するテスラ。

 

 しかし、

 

 そんな彼らの前に、立ちはだかる人影。

 

 大きく胸元がはだけたシャツに、スラックス。バックルの大きなベルトを締め、髪はストレートの金髪、双眸はサングラスで覆い隠している。

 

 やたらと金色の装飾が目立つ男だ。

 

 派手、

 

 としか言いようがない男。

 

 だが、その鮮烈なる印象は見た者全てに焼きつけられる事だろう。

 

「俺の名は坂田金時(さかたのきんとき)。悪ィが、こっから先は通行止めだぜ」

 

 そう告げると、男はニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

第12話「地下に棲むモノ」      終わり

 


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