1
ロンドンを覆いつくした魔霧。
その力でもって人類史を焼却すべく、バッキンガム宮殿上空を目指そうとしていたマキリ・ゾォルケンと二コラ・テスラの前に立ちはだかった男は、その身より眩いばかりの電光を放っていた。
金色。
ゴールド。
そう呼びたくなるほど、男はまぶしい存在だった。
「世界の危機って奴だろ、こいつは。俺の嗅覚はいつだって正確だ。あんたらを止めないと世界がやばいってのは判るぜ」
言葉を向けられたゾォルケンとテスラは、沈黙をもって答える。
突如、目の前に現れた男を警戒しているのが判る。
ある意味、日本においてこれほど有名な存在は他にいないだろう。
平安時代の武将、
そして、
日本童話で有名すぎるくらい有名な「金太郎」の成人した姿でもある。
日本の英霊の中では、間違いなく最強の一角。
その坂田金時が今、人理焼却に際し、壊滅の危機にあるロンドンへと馳せ参じたのだ。
「どうやら、あんた達は空へと行きたいらしいな。だが、そうなれば世界は、炎に加えて、霧と雷で滅茶苦茶にされちまう」
言い放つ金時に対し、
「素晴らしい」
賞賛の声を送ったのはテスラだった。
「貴様の理解は稲妻のように鋭く、稲妻のように迅速だ!! いかにも、我々を止めねば世界は終わる!!」
自分たちの行動を、包み隠さず暴露するテスラ。
隠すつもりは無いのか、あるいは隠そうとする意志が無いのか。
そんなテスラの様子を、ゾォルケンは傍らで黙したまま容認している。
止めるだけ無駄、とでも思っているのかもしれない。
「Mrキントキ・サカタ・・・・・・いや、ここは敢えて、Mrゴールデンと呼ばせてもらおう。否、呼ばねばならぬッ どうか呼ばせてくれたまえッ 君が、この魔霧を止める為に召喚された英霊であるならば、この私を止めなくてはならない。そうでなければ、このロンドンは確実に滅びる事になるだろう」
テスラの言葉に対し、金時はサングラス越しにニヤリとした笑みを返す。
「あんた、意外にノリ良いな。気に入ったぜ」
「だが生憎、この身は狂化が与えられており手加減は出来ぬ。やりすぎてしまったなら、許してくれ給えよ」
大仰に言いながら、身構えるテスラ。
対抗するように、金時もその手に巨大な戦斧を召喚する。
「良いぜ、とことんまでやってやろうじゃねえかッ」
吹き上がる戦気。
雷を操る2騎の英霊が、ロンドンの地において対峙する。
激発の瞬間が訪れる。
そう思った。
次の瞬間、
「あいや、しばらく、しばらく~ はいはい、ちょっとすみませんね~」
突如、気が抜けるような女性の声が響き渡り、青い和装姿の女性が、2人の間に割り込んで来た。
驚いたのは、女性の姿である。
外見年齢は20前後、と言ったところだろうか? 絶世、と言っても過言ではない美貌があり、多くの人々を引き付けるに足る容姿をしている。
しかし頭には狐を思わせる尖った耳が飛び出し、お尻からはふさふさした尻尾まで生えている。
半人半獣を思わせるようしながら、どこか神々しさすら感じさせる存在。
しかし、その口から飛び出して来たのは、随分と俗っぽいセリフだった。
「ここ、霧のロンドンで合ってますよね? 夢の二階建てバスは何処? 大英博物館、時計塔、セントポール大聖堂は何処? この不気味な霧は何です? どうして昼日中に誰もいないんです? 楽しみにしていたフィッシュアンドチップスは? 密かに憧れていたアフタヌーンティーは? スコーンは? クロテッドクリームは? フォートナム&メイソーンの本店は? これもう、半分以上廃墟っぽいんですけどッ!? みこッ? もしかしてロンドン、サクッと滅びかけてません? ご主人様とのハネムーンへの予行練習にと、ロンドン旅行に着いて来てみれば何ですかこれ? もしや金時さん、私を謀りました? 神様舐めてます?」
いや、あんさん何しに来たんすか?
誰もがそうツッコみたがっている中、
「おお、なんという・・・・・・」
驚嘆の声を上げたのはテスラだった。
「何と言う、眩しくも美しい貴婦人だろうか。この二コラ・テスラ、麗しきレディには礼を尽くそう。オリエントの気配濃き美しきレディ。ここは危険です。聊か離れていた方が良い」
「みこッ!? あら、素敵なイケ魂・・・・・・いえ、いえいえ、この玉藻、ご主人様一筋と心に決めておりますから、いけませんッ それにあなた、心がイケてない様子。もしかして、狂化スキルでもくっついてます?」
「しかも聡明ときた。聊か異なるが、その通りではあるのですレディ。私の言葉に意味は無く、私はただ、一つの行動を成すのみ」
言い寄られて存外、満更でもない様子の玉藻と名乗る狐女。
平安時代末期、鳥羽天皇に仕えたとされる絶世の美女。その美貌と博識から、天皇からの寵愛を一心に受けたという。
しかしその正体は、
やがて、天皇が病に倒れると、陰陽師
その後、那須野に潜伏し悪徳の限りを尽くしていたが、その行為によって己の存在が再び露見。差し向けられた朝廷の軍勢と死闘を演じる事となる。
それでも玉藻の魔力は強大であり、一度は朝廷の軍勢を撃退するまでに至っている。
しかしその後、体勢を立て直した朝廷軍の侵攻を再び受け、ついには討ち取られるに至った。
暴虐の限りを尽くしたその存在は、鈴鹿山の大嶽丸、大江山の酒呑童子と並んで、日本三大化生の1体とされている。
その一方、その真の姿は日本神話の主神たる、
「さて、では残念であるが、君達は私を止める為、私と戦わなくてはならん。そうでなくては、このロンドンは救えぬからね。なに、遠慮はいらん。2対1で来たまえ。私は一向に構わんぞ」
言いながら、身の内より雷電をほとばしらせるテスラ。
既に、戦闘準備は十分な様子だ。
対して、玉藻は嘆息しつつ金時を見る。
「だ、そうですよ。どうします金時さん? できれば私、ちゃっちゃと片付けてロンドン観光を楽しみたい所なんですけど。ああ、観光の際は金時さんはいなくても大丈夫ですよ。束縛はしませんとも。ええ」
「べ、べつに着いて行きゃしねえよ。つーかあんた、俺の召喚にタダ乗りしてきただけだろうが」
などと言いつつ、なぜか顔を逸らす金時。
そんな金時の態度に、玉藻は眉をひそめて詰め寄る。
「ちょっと金時さん、真面目に聞いてます? なぜ顔を逸らすんですの?」
「聞いてるよッ 判ったから離れろフォックス!!」
などと言って、更に離れようとする金時。
その顔は、サングラス越しにも分かるくらい赤くなっている。
どうやら、見た目のピーキーさに似合わず、随分と純情な性格らしい。
まあ、無理も無い。何しろ玉藻の恰好と言ったら、和装の胸元は肩口まで大胆に露出し、その大きな胸は、谷間まで見えてしまっている。着物の裾も短く、まぶしい太腿を惜しげも無く晒していた。
何より顔。
かつて、天皇すら誑かしたとされるその美貌は、傾国の美女に相応しい妖艶な美しさを放っていた。
とは言え、おふざけはそこまでだった。
金時は気を取り直して戦斧を構える。
「あんたは援護に専念してくれ。俺が前に出て殴る」
言いながら、その身より雷光を放つ金時。
サングラス越しに鋭い視線が、世紀の大天才へと投げられた。
「んじゃあ、ケンカ祭と行こうぜッ 雷人同士、派手に花火をぶち上げようぜ、二コラ・テスラ!!」
「ハハハハハハッ 面白いッ 受けて立とうッ 来たまえMrゴールデン!!」
互いに放たれる雷光が、
次の瞬間、激突した。
2
立香達が地下大空洞でアヴェンジャー達と交戦、凛果達はテスラとゾォルケンを追って地上へと急ぎ、金時と玉藻はテスラと戦闘開始。
三か所で繰り広げられる大激戦。
そして今、
戦端はさらに一つ、開かれようとしていた。
アパートの前は、既に敵で溢れていた。
ホムンクルスにオートマタにヘルタースケルター。
既に見慣れた感のある敵の姿だが、数が尋常ではない。
通りを埋め尽くすほどの敵の数を前にしては、流石に絶句せざるを得ない。
「フム・・・・・・主力が出払った隙を狙われた、という訳ではなさそうだな、どうやら」
「いかにも。敵兵は津波の如く、されどその統率は烏合に似たり、と言ったところですか。どうやら、無差別な破壊を行っていると見ましたぞ」
アンデルセンの分析に、シェイクスピアも同意の頷きを返す。
2人が見ている前で、尚も敵が増え続けている。
とは言え、文豪2人が言っている通り、その動きには統率めいた物は見られない。
ただ無軌道に暴れ、破壊を繰り返しているだけの様子だ。
「けど、このままじゃ、連中がここに来るのも時間の問題だろうね」
顔を出したジキルが、緊張交じりに呟く。
先程、アンデルセンが言った通り、今ここには「主力」がいない。
特殊班メンバーの内、戦闘に特化した連中は出撃してしまい、ここにいるメンバーの大半は戦闘に向かない連中ばかりだ。
辛うじて戦えるのは、フランとナーサリー・ライムの両名のみ。
援軍も期待できない。
「まさに状況は絶望的。神々ですら、この戦いの結末を嘆かずにはいられない事でしょう」
「フンッ」
芝居じみたシェイクスピアの言葉に、アンデルセンは鼻を鳴らす。
偏屈な童話作家は、もはや異形の「川」と化した感のある眼下を眺めやった。
「生憎、俺は生前から無駄に諦めが悪い方でな」
言ってから、アンデルセンは一同を見やる。
「どうにか包囲を突破して、立香達と合流するぞ。あの脳筋連中と合流できれば、事態は打開する目も出るだろう」
言ってから、今度は佇む2人の少女を見やった。
「お前ら2人が頼りだ。頼むぞ」
「ゥゥ」
「まったく不本意だわ」
低い声で頷くフランと、不承不承な感じのナーサリー。
ナーサリー的には、嫌っているアンデルセンの護衛など不満でしかないだろうが、ここでその不満をぶちまける気は無い様子だ。
と、
「なら、僕も、今回は出し惜しみは無しで行こう」
どこか、落ち着き払ったようなジキルの言葉に、一同が振り返った。
いったい、何をしようと言うのか?
ジキルはサーヴァントではない。まったくの一般人である。それどころか、どう見ても戦闘向きの性格ではない。
正直、下手に前に出られるより、後ろで大人しくしていてくれた方が助かるのだが。
対して、皆の視線を受けた青年は、静かに佇む。
「おいおい。生身でアレの中に突っ込んでいこうというのか?」
「大丈夫。奥の手があるからね」
呆れた調子で尋ねるアンデルセンに答えると、ジキルがポケットから取り出したのは、小さなガラスの瓶だった。
薄い青色の液体を満たした便は、手のひらに収まるくらい小さい。
ジキルはコルクの蓋を親指で弾いて飛ばすと、中身の液体を一気に煽った。
いったい、何なのか?
一同が固唾を飲んで見守る中、
変化は劇的に起こった。
髪は逆立ち目は吊り上がり、口元には凶笑が刻まれる。
「ヒャハハハハハハハハハハハハッ!! 来た来た来た来た来たァ!!」
狂ったように笑い声をを上げるジキル。
それは、あまりに有名な一つの怪談話。
若き天才科学者ヘンリー・ジキルは、人間の心に潜む善悪の感情について研究していた。
やがて研究を進める上で「完全な善をもってすれば、完全な悪を封じ込める事が出来る」と考え、ついには悪意を消し去る為の薬を開発する事に成功した。
しかし、薬を飲んだジキルに起こった変化は、悪意を消し去るどころか、かえって悪の人格を表に引きずり出す結果となってしまった。
それでも諦めないジキルは、何とか自らの悪意を封じ込めようと、研究に没頭していく。
しかし皮肉な事に、研究を続ければ続けるほど、彼の中で悪の人格は増幅されて行く事となる。
やがて、薬無しでも悪の人格は表に出るようになり、ジキルの恋人や友人まで傷つけるに至る。
一連の事件に絶望したジキル。
彼が、自らの悪意を断ち切る為に取った行動は、自らの命を断つ事だった。
ジキルから引き出された悪の人格。
その名を、ハイドと言う。
ハイドはその手に、一振りのナイフを抜き放つと、迷う事無く階下の敵の群れへと飛び込んでいく。
「さあ、ハイド様のお通りだァ!! 切り刻んでやるぜェ!!」
喜々とした雄たけびを上げながら、手にしたナイフで片っ端から敵を斬り捨てて行く。
その様子を、残った面々は唖然とした調子で眺めていた。
「何とまあ・・・・・・」
「まるで
呆れた様子で、ハイドの奮戦を眺めるアンデルセンとナーサリー。
不倶戴天の2人が思わず呆気に取られるほど、状況は斜め上に吹っ飛んでいた。
圧倒的、と言って良いだろう。
今のハイドは、サーヴァントすら凌ぐ戦闘力を発揮して、敵を屠り続けている。
つまり、
何はともあれ、今がチャンスなのは間違いなかった。
「仕方ない。行くぞ。お前ら、遅れるなよ!!」
アンデルセンの声と共に、一同もまた階下の戦場へと踊り込んでいくのだった。
駆ける足は、自然と早くなる。
テスラとゾォルケンを追って、地上を目指す凛果達。
途中、現れる敵を蹴散らしながら、上へと目指す。
「状況はどう? ダ・ヴィンチちゃん!?」
凛果は腕の通信機に向かって尋ねる。
生身の人間である凛果は、モードレッドによって抱えられている。
少しでもスピードを上げる為だった。
響、美遊の2人は露払いの為、モードレッドよりも少し先を駆けている。
ややあって、カルデアのダ・ヴィンチから連絡が入った。
《良いぞ。連中、どうやらあまり動いていないようだ。一か所にとどまっているぞ》
「バッキンガム宮殿に行く、とか言っていたけど?」
《まだ、到着していない。このまま行けば追いつけるはずだ》
ダ・ヴィンチからの連絡はカルデア特殊班にとって朗報ではあるが、同時に困惑をも呼び込んでくる。
いったい、どういうつもりなのか?
時間的に言えば、敵はとっくの昔にバッキンガム宮殿に到着していてもおかしくはないのに。
テスラが金時、玉藻両名と交戦中である事を知らない凛果達は首を傾げるしかなかった。
「もしかして、テスラは本能的にはこっちの味方をしたいのかな?」
「そう言えば、聞いてもいない事を勝手に話していました」
美遊も頷きを返す。
自分の目的地やら、計画の趣旨やら、テスラは自分から話していたのを思い出す。
それらの事は本来なら、彼にとっては秘密にすべき事だろうに。
「ん、もしかしていい人?」
「それは、ちょっと違うかもしれないけど・・・・・・」
「何だって良いさッ 連中が止まってくれてるなら好都合だろ。とにかく急ぐぞ!!」
モードレッドの言葉に促され、駆ける足をさらに速めた。
地上までは、あと少しだった。
3
激突する、雷と雷。
破壊的な閃光が、周囲に容赦なく撒き散らされる。
坂田金時と二コラ・テスラ。
片や奇跡により、片や自らの才知により、
共に雷の力を得るに至った両者が激突する。
「これで、どうかねッ!?」
戦斧を振り翳して向かってくる金時に対し、手甲から雷撃を放って迎え撃つテスラ。
紫電の矢が次々と、大英雄に突き刺さる。
だが、
「ハッ 効くかよ!!」
構わず前へと出る金時。
その肉体より金色の雷撃を放ち、テスラへと迫る。
「これで、どうだァ!!」
間合いに入った瞬間、
戦斧を振り下ろす。
だが、
「甘いなッ Mrゴールデン!!」
両手を突き出すテスラ。
その手掌より、
金時の胸へ目がけて雷撃が放たれた。
「ぐおッ!?」
溜まらず、後退する金時。
そこへ、テスラはすかさず追撃を仕掛ける。
放たれた雷撃の矢が、次々と金時へ突き刺さる。
「グッ!?」
呻き声と共に、崩れかかる金時。
だが、
「金時さんッ!!」
後方で待機していた玉藻が、すかさず呪符を取り出して金時へと翳す。
たちまち、金時の身体にある傷が癒されていくのが判る。
玉藻は更に、手を止めずに動く。
新たな呪符を取り出すと、金時を援護すべく、テスラ目がけて投擲する。
「ぬッ!?」
飛んできた呪符を、雷撃の矢で迎え撃つ。
空中でぶつかり合い、呪符は次々と破かれていく。
だが、その内の1枚がテスラの眼前に踊る。
同時に、内包された魔力が解き放たれ、爆炎が迸る。
視界全てを焼くに足る、強烈な炎。
いかにテスラと言えど、無事では済まないはず。
そう思った次の瞬間、
燃え盛る炎を突く形で、雷撃が迸った。
「危ねェ!!」
「金時さんッ!?」
驚く玉藻の目の前で、雷撃の前に立ちはだかる金時。
とっさに防御の姿勢を取るも、テスラが放った雷撃を真っ向から浴び、大英雄はその身を焼かれる。
「ちょっと金時さん。無茶しすぎですわよ!!」
「ヘッ この程度ッ」
心配して言い募る玉藻に、金時は強がって見せる。
実際のところ、金時の受けた傷は浅くない。
ダメージは、着実に蓄積されていた。
坂田金時、玉藻の前。
日本が誇る2大英霊を前に善戦し、それどころか有利に戦続けているテスラ。
しかし、それにはれっきとした理由があった。
英霊の力とは本来、人々が信じる力であり、こうあってほしいという願いの結晶でもある。
これには英霊の「知名度」も大きく関わってくる。要するに、人々により知られている英霊は、本来の実力を超えた力を発揮する事も不可能ではないのだ。反対に、実際にどれだけ強かったにせよ、知名度の低い英霊は、本来の実力を発揮できないのだ。
これには地域性も大きく関わってくる。その英霊が活躍した土地であるなら、知名度も最高になるが、その土地から一歩でも出れば、その効力は失われてしまうのである。
金時と玉藻は日本においては最強クラスの英霊だが、反面、西欧諸国での知名度はゼロに等しい。
一方のテスラは、活躍の場こそアメリカだが、それでも欧州における知名度は2人に比べればまだ高い。何より出身はオーストリアである事を考えれば、知名度としては申し分ない。
この差が、両者の明暗を大きく分けていた。
加えて、
金時も玉藻も気付いていた。
テスラを取り巻く魔霧。
テスラ自身の雷電によって活性化した魔霧が魔力を吸収し、金時や玉藻の攻撃を減衰させているのだ。
今の2人は、本来の実力の半分も出せていない状態だった。
「とは言え、流石だ、Mrゴールデン、そして麗しきフォクシィレディよ。君達の勇戦敢闘振りには驚嘆を禁じえない」
「ヘッ そいつはどうも」
賞賛されて満更でもない様子の金時。
敵でありながら、テスラはどこか憎めない一面を持っていた。
「しかし、すまない。今の私は、君達を倒さねばならない身。私は、ままならない私を呪いながら、君達にトドメを刺すとしよう」
言いながら、
周囲の雷撃を収束させていくテスラ。
テスラ自身を中心に、莫大な量の電撃が収束していくのが判る。
対して、
金時は苦笑いを浮かべてテスラを見やる。
ここまでやや不利な状況ながら、連携と自力によって戦線を維持してきた金時と玉藻だが、テスラは軽くそれを上回るだけの攻撃を放つ事が出来る。
恐らく、彼の宝具なのだろう。
もし、テスラが雷撃を解放すれば、今度こそ金時と玉藻は終わりである。
「おうフォックス。ちょいと趣味じゃねえが、ここらで一つ、賭けに出ようと思うんだが、どうよ?」
「・・・・・・仕方ありませんね。私も折角来たロンドン。早々に退場したくはありませんので」
言い放つと、
手にした複数の呪符を一斉に投げる玉藻。
同時に、その姿が一変する。
着てる和装の上から、十二単のように打ち掛けが重ねられ、頭には金の髪飾りが乗せられる。
更に1本だった尻尾は3本に増え、オーラを纏ったように光り輝いた。
手にした鏡を、金時に向けて翳す玉藻。
「出雲に神あり。審美確かに、魂に息吹を、山河水天に天照す。これ自在にして禊の証、名を
朗々と読み上げる詠唱。
同時に、溢れ出る魔力。
「
天照大神が天岩戸に隠れた際、大神を連れ出すために神々が用いたとされる「八咫鏡」。
その力の一部を引き出した宝具こそ、玉藻が使う「
玉藻の援護を受けて、金時も仕掛ける。
「オォォォォォォォォォォォォ!!」
その身より発せられる電撃が、一斉に放出される。
サングラス越しに睨むテスラ。
自身の全てを賭けて、日本を代表する大英雄が、ゼウスの申し子へと挑む。
テスラもまた、自らの全霊でもって、金時を迎え撃つ。
「
「
次の瞬間、
2つの雷撃が激突し、周囲一帯を染め上げた。
第13話「雷火」 終わり