Fate/cross wind   作:ファルクラム

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第14話「其れはブリテンに名高き」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 決着が着いたのは、まさに凛果達が地上へと駆け上がった瞬間だった。

 

 迸る閃光が白色の壁となって迫る。

 

「うわッ!?」

 

 視界全てを焼くような雷光が周囲一帯を覆いつくす中、凛果はとっさに顔を覆って視界を保護する。

 

 物理衝撃すら伴った雷撃。

 

 それが晴れた時、

 

 凛果は恐る恐る顔を上げる。

 

 晴れる、視界の先。

 

 そこには、

 

 互いに視線をぶつけ合い対峙する、テスラと金時の姿があった。

 

 戦斧を振り下ろした金時が、サングラス越しにニヤリと笑う。

 

 それに合わせるように、フッと笑みを浮かべるテスラ。

 

 次の瞬間、

 

「ハッ 僅かに、及ばねえかよ」

 

 舌打ち交じりの笑みと共に、戦斧を取り落として崩れ落ちる金時。

 

 倒れる金時に合わせるように、彼の背後で援護に当たっていた玉藻もまた崩れ落ちた。

 

 テスラの宝具による一撃は、二大英雄の力をもってしても打ち破る事は叶わなかったのだ。

 

 やはり、戦うには条件が悪すぎた。

 

 片や地の利を得ており、更に聖杯のバックアップにより強大な力を振るう事が出来るテスラに対し、如何に最強クラスの英霊とは言え、マスターすらいない金時と玉藻が敵う道理は無かった。

 

 だが、

 

「見事だ」

 

 地に倒れた2人に対し、テスラから送られたのは、紛う事無き称賛の言葉だった。

 

「我が魔霧を完全に吹き飛ばすか。Mrゴールデン、それに麗しきフォクシィ・レディよ。その力に、この二コラ・テスラ、感嘆を禁じえん」

 

 見れば確かに、テスラの身を覆っていた魔霧は完全に消え失せている。

 

 金時の放った一撃は、決して無効だったわけではない。

 

 渾身の宝具は、テスラを無敵たらしめていた魔霧を、完全に吹き飛ばしていたのだ。

 

 これで、先程までのように魔力を吸収する防御手段は使えなくなったはずだ。

 

 そこへ、駆けてくる複数の足音が聞こえる。

 

 凛果達は倒れている金時と玉藻に駆け寄ると、彼等を守るようにテスラ達に対峙する。

 

 事情はイマイチ呑み込めないが、取りあえずテスラ達と戦っていた以上、敵ではないと判断したのだった。

 

 少女たちの姿を見た金時は、座り込んだまま片手を上げる。

 

「おう、アンタ等、カルデアっ連中だろ? 悪ィが、あと頼むわ。俺達もそろそろ限界だ」

「いや、良いんだけど・・・・・・」

「ん、ぶっちゃけ、誰?」

 

 凛果達からしてみれば、地下から這い出て来てみれば、見知らぬ男女のサーヴァントが敵と戦っていたのだ。驚くなと言う方が無理がある。

 

 とは言え、今はそこに構っている暇は無かった。

 

「遅かったな、カルデア」

 

 マキリ・ゾォルケンは、追ってきた凛果達を見やって、陰気な声で呟いた。

 

 そんな魔術師を守るように、テスラも控える。

 

「あの小僧ではなく、小娘の方が来たか。舐められた物だ」

「言ってくれるわね」

 

 侮るような発言をするゾォルケンに対し、凛果は強気に返す。

 

 正直、凛果にも不安はある。

 

 しかし、恐怖は無い。

 

 自分は1人ではない。

 

 地下では今も、兄たちが戦っている。

 

 そして目の前でも、

 

 信じるべきサーヴァント達が、凛果と共に戦ってくれている。

 

 ならば、恐れるべき何物も、そこには存在しなかった。

 

 だが、

 

 ゾォルケンは泰然としたまま凛果を見ると、フッと息を吐く。

 

「良いだろう。だが・・・・・・・・・・・・」

 

 手にした聖杯を掲げるゾォルケン。

 

 同時に、あふれ出た魔力が魔霧に反応し、再び活性化するのが判った。

 

「いずれにせよ、君達に勝ち目は無い。新たな英霊は、既に召喚済みだ」

 

 ゾォルケンの言葉に応えるように、聖杯が輝きを増すのが判った。

 

 光り輝く聖杯により、再び召喚の儀式が完成する。

 

「出でよ、偉大なる嵐の王。我が呼び声に応え、この地へと来たれ」

 

 朗々と響く詠唱。

 

 魔霧の中から聞こえてくる蹄の音。

 

 その姿に、誰もが息を呑む。

 

 巨大な漆黒の軍馬に跨った騎士は、全身を甲冑に鎧い、手には巨大な騎士槍を手にしている。

 

 禍々しき、その姿。

 

 まるで、地獄から駆けてきたような出で立ちの騎士。

 

 誰もが固唾を飲んで見据える中、

 

「あ・・・・・アァ・・・・・・まさか、あの姿は、そんな・・・・・・・・・・・・」

「ん、モーさん?」

 

 愕然とした調子で呟くモードレッドを、響は怪訝な面持ちで見上げる。

 

 だが、モードレッドは、そんな響にも気付かぬ様子で、現れた漆黒の騎士を見つめ続けている。

 

「あの姿・・・・・・それにあの槍・・・・・・見忘れもしねえ・・・・・・」

 

 やがて、

 

 一同が見ている前で、

 

 騎士はゆっくりと、ヘルメットを外す。

 

 その下から出てきた素顔。

 

 後頭部で纏めた髪に、白さが目立つ肌。吊り上がった瞳からは、稲妻のような眼光が迸っている。

 

 そして、

 

「あれは・・・・・・」

「ん、モーさんに、似てる」

 

 美遊と響が声を上げる。

 

 確かに。

 

 騎士の方が年齢は明らかに上だが、その顔の特徴は、モードレッドにどことなく似ている。

 

 否、

 

 この場合、モードレッドが騎士に似ている、というべきか。

 

「そうか・・・・・・・・・・・・」

 

 モードレッドが、どこか気の抜けたような声で、騎士を見上げながら呟く。

 

「あんたは・・・・・・そんなに俺が憎いのか・・・・・・あんたを裏切り、あんたの国を滅ぼした俺が、憎かったのか・・・・・・死んでまで、俺を追いかけて来て・・・・・・俺を殺した槍まで持ち出して・・・・・・・・・・・・」

 

 見上げる視線が、ぶつかり合う。

 

「なあ、そうだろッ・・・・・・父上ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 市街の中心に進むにつれ、敵の数は多くなっていく。

 

 今やロンドンは、完全に魔窟と化していると言って良いだろう。

 

 人間よりも、化け物たちの数の方が多いのは、目に見えていた。

 

「クッ しつこいのだわ!!」

 

 魔力弾を放ってヘルタースケルターを撃ち倒すナーサリー。

 

 しかし、倒しても倒してもきりがない。

 

 敵は仲間の死体を乗り越えて迫って来る。

 

 否、そもそもからして仲間と言う概念など、連中には無いのだろう。

 

 死ねばせいぜい「路上に転がる障害物」程度の認識しか無いのかもしれない。

 

 いずれにしても、群がる敵が四方から迫ってきている。

 

「いやはや、これは想像を絶していますぞ。まさに地獄の如き様相(apocalypse)とでも言うべきでしょうか」

 

 周囲を見回しながら、シェイクスピアが肩を竦める。

 

 今はナーサリーの他、フラン、それにハイドと化したジキルが奮戦しているが、ナーサリーはともかく、残り2人はあまり殲滅戦に向いているとは言い難い。

 

 まあ、それでも前線で暴れまくるフランとハイドの様子を見れば、放っておいても大丈夫なような気もするが。

 

 今も、2人がいると思われる辺りで敵がポンポンと、景気良く空中に踊っているのが見える。

 

 しかし、多勢に無勢である事に変わりは無かった。

 

「まずいな、こいつは・・・・・・」

 

 珍しい事に、アンデルセンが焦慮に近い言葉を吐く。

 

 今のロンドンは、崩壊が加速しつつある。

 

 それが、魔霧が活性化したせいである事を、稀代の童話作家は、既に把握している。

 

 増え続ける敵。

 

 いかにサーヴァントが強力な存在であったとしても、万を超える軍勢を相手に、いつまでも戦い続けられる物ではない。

 

 その時だった。

 

「キャァッ!?」

 

 鳴り響く悲鳴。

 

 視線を転じれば、奮戦していたナーサリーが、複数の敵に取り囲まれている所だった。

 

 魔術師(キャスター)は懐に入られると弱い。

 

 魔力弾を駆使して敵を倒していたナーサリーだったが、一瞬の隙を突かれ、接近を許してしまったのだ。

 

「いかんッ」

 

 アンデルセンが叫ぶ中、倒れたナーサリーに敵が群がる。

 

 ホムンクルスが、ヘルタースケルターが、オートマタが、

 

 少女サーヴァントを貪りつくすべく迫った。

 

「・・・・・・・・・・・・アリスッ」

 

 小さな呟きと共に少女が、ギュッと目をつぶる。

 

 次の瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全投影連続層写(トレースオン・ソードバレル・フルオープン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬く閃光。

 

 銀の剣閃が、驟雨の如く降り注ぐ。

 

 油断無く、

 

 容赦無く、

 

 遺漏無く、

 

 銀の雨は、化け物の頭上にあまねく降り注ぎ、刺し貫いていく。

 

 ただ1匹の例外も許さない。

 

 その全てを、殲滅の名の下に飲み込んでいく。

 

 次の瞬間、

 

 舞い降りた何者かが、路上に座り込んでいたナーサリーを抱え上げて跳躍する。

 

 群がる敵を殲滅しつくした男は、そのままアンデルセン達の下へと降り立った。

 

「お前は・・・・・・・・・・・・」

 

 驚くアンデルセンたちの前で、

 

 男は腕の中に抱えたナーサリーを、そっと地面に下した。

 

「あ、ありがとう」

 

 戸惑いながら礼を告げる少女に、男は無言のまま、かぶっている帽子を直してやる。

 

 頭から膝下まで、白い外套にすっぽりと覆った男。

 

 そのせいで顔を伺う事は出来ない。

 

 だが、サーヴァントである事は、すぐに判った。

 

「・・・・・・合流するなら急げ。彼等も今、苦戦しているだろうからな」

 

 フードの奥から、低い声が聞こえる。

 

 年齢までは判らないが、ひび割れたような、かすれた声だ。

 

 告げると男はアンデルセンたちに背を向け、まるで傷付いた我が身を引きずるようにして歩き出す。

 

 ここでの自分の役目は果たした、とでも言うべき素っ気ない態度。

 

 あるいは、留まる事は許されない、とでも思っているのだろうか?

 

 まるで、苦行を自らに課した聖者のように、男は己の道を歩く。

 

 と、

 

「待て」

 

 その背後から声を掛けたのはアンデルセンだった。

 

 足を止めて振り返る男に、童話作家は問いかける。

 

「まだ戦う気か? そのボロボロに傷尽き果てた霊基で?」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 問いかけるアンデルセンに、男は何も答えない。

 

 否、答えるまでもない、と言いたいのかもしれない。

 

 戦い続ける事。

 

 守り続ける事。

 

 それこそが、己を己たらしめている唯一の存在価値なのだから。

 

 そんな男の意図を察したのだろう。

 

 アンデルセンは嘆息する。

 

「仕方がない奴だ。今回は特別、ノーギャラにしておいてやろう」

 

 取り出した紙とペン。

 

 アンデルセンが筆を走らせると、

 

 驚いた事に、紙の上に魔力が躍り出したではないか。

 

 不世出の天才童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセン。

 

 あらゆる人物を観察し、その人物の本質を見抜き、そして書き連ねる事に掛けて、古今東西、彼を抜く者は遂に現れなかった。

 

 それ故に、アンデルセンの宝具は、こうある。

 

貴方の為の物語(メルヒェン・マイネスレーベンス)

 

 紙片が躍る。

 

 魔力によって綴られた物語は、男の胸元に当てられ、そして溶け込むようにして消えて行った。

 

「これは・・・・・・・・・・・・」

「それで、少しは楽になっただろう。もっとも、俺は修理屋じゃないから、抜けた底を直す事は出来ん。あくまで零れていく物を水増ししただけだと言う事を覚えておけ」

 

 アンデルセンは宝具のバフを用いて、彼の中で不足していた魔力を補充したのだ。

 

 男は確かめるように、拳を握る。

 

 確かに、体は軽くなった。魔力も、先程と比べて、見違えるように溢れていた。

 

「・・・・・・ありがとう」

「なに、誰だって自殺しようとする奴がいれば手を差し伸べたくなるだろう。それと同じだ」

 

 皮肉なのか本気なのか分からないアンデルセンの言葉に、男はフードの奥でフッと笑ったような気がした。

 

 そのまま跳躍すると、屋根に飛び乗って駆けて行く。

 

 その姿は、あっという間に見えなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、そうだろッ・・・・・・父上ッ!!」

 

 モードレッドの叫びが、悲痛に響き渡る。

 

 その言葉に、誰もが耳を疑った。

 

「ん、モーさんのお父さん? 美遊じゃなくて?」

「響、お願いだから黙って」

 

 空気を読まないボケをかます相方を引っ込めつつ、美遊は現れた馬上の騎士を睨む。

 

 円卓の騎士モードレッド卿の父親。

 

 それは即ち、ブリテンの大英雄アーサー王に他ならない。

 

 美遊自身、かつて冬木の地において参戦した聖杯戦争でアーサー王(アルトリア)を召喚し、マスターとして彼女と共に戦っている。

 

 それ故、アーサー王の性別が、実は女性だった事は知っている。

 

 見れば確かに、目の前の馬上の騎士は、アルトリアに特徴が似ている。

 

 もっとも、美遊と契約したアルトリアが、まだ少女のような若い姿であったのに対し、目の前のアルトリアは、成熟した大人の女性と言った外見をしている。

 

 それは、

 

 まあ、

 

 何と言うか、

 

 ある一点、女性を象徴する部分が特に。

 

「ん、美遊、どこ見てる?」

「え、あ、い、いや、別に・・・・・・」

 

 いきなり、ジト目の響に声を掛けられて、しどろもどろになる美遊。

 

 まあ、無理も無いと言えば無理も無い。

 

 何しろ、目の前のアルトリアの胸は、母性を連想させるほど大きく、それでいて鎧越しにも判るくらい見事な張りと形をしているのに対し、剣士(セイバー)アルトリアの胸は、まあ(自主規制)

 

 と、

 

 ガシッ ガシッ

 

 そんなチビッ子サーヴァント2人の頭を背後から鷲掴みにする、マスターたる少女。

 

「あのね、2人とも。お願いだから真面目にやってくれる?」

「す、すみません」

「ん」

 

 とは言え、おふざけもそこまでだった。

 

 現れたアルトリアは、手にした槍を掲げる。

 

「貴様の事など、私は知らぬ。ただ、目の前に立つなら倒すまで」

「父上・・・・・・・・・・・・」

 

 アルトリアの言葉が、モードレッドの胸を抉る。

 

 目の前にいるアルトリアは、王としての慈悲も、仲間を慈しむ心も持ち合わせてはいない。

 

 あるのはただ、勝利を得る為にあらゆる存在を殺戮する戦闘マシーンに他ならない。

 

 その「父」の言葉に、モードレッドは唇を噛み締める。

 

 彼女の心に去来する物が何であるか、それは凛果達には推し量る事が出来ない。

 

「それにしても・・・・・・・・・・・・」

 

 アルトリアの視線が、美遊へと向けられた。

 

 一瞬、緊張した面持ちで、視線を交わす美遊。

 

「そちらの幼子、随分と面白い」

「・・・・・・・・・・・・」

「貴様は、私か」

 

 やはり、というべきか、同一存在である美遊の存在には気付いたらしい。

 

 美遊の中にあるアルトリアの霊基。

 

 それが、目の前にいるアルトリアと共鳴しているのかもしれない。

 

「何だって良いさ」

 

 モードレッドは剣を鞘から抜き放つと、切っ先を馬上のアルトリアへと向けた。

 

「父上。あんたが俺の事を眼中に無いってんなら、無理やりにでも振り向かせてやるよ」

 

 最強の騎士王に対し、吼えるモードレッド。

 

「行くぞアーサー王ッ あんたが俺の前に立ち塞がるなら、俺は何度でも、あんたに叛いて見せるぞ!!」

 

 彼女はブリテンに悪名高き叛逆の騎士。

 

 ならばこそ、その運命を果たすべく剣を取る。

 

 対して、

 

 アルトリアもまた、槍の穂先をモードレッドへと向ける。

 

「良かろう。名も知らぬ騎士よ。歯向かうならば、我が槍でもって誅戮するのみ」

 

 言い放つと同時に、馬の手綱を取るアルトリア。

 

 対抗するように、モードレッドも腰を落として斬りかかるタイミングを計る。

 

 睨み合う、2人の円卓の騎士。

 

 次の瞬間、

 

 互いに駆けた。

 

 魔力放出と同時に空中に跳躍。

 

 剣を振り翳すモードレッド。

 

 対抗するように、槍を繰り出すアルトリア。

 

 互いの刃が、空中で激突した。

 

 

 

 

 

 アルトリアとモードレッドが互いに刃を交えている頃、響、美遊もまた、テスラとの交戦を開始しようとしていた。

 

 剣を抜き、構える響と美遊。

 

 対して、テスラもまた、身の内より放電しながら向かい合う。

 

「よく来たな、小さき勇者たちよ。さあ、私を倒すがいい。そうすれば、君達の世界は守られるぞ」

 

 やはり、というべきか、誘導するようなテスラの発言。

 

 敵対しながらも、どこか世界の危機を食い止めたいとする天才科学者の意思を感じずにはいられなかった。

 

「響」

「ん、全力で行く」

 

 言いながら、響は宝具を発動する。

 

 漆黒の着物の上から浅葱色の「盟約の羽織」を着込む、少年暗殺者。

 

 これで響の身は、暗殺者(アサシン)から剣士(セイバー)に変化した。

 

 事ここに至った以上、アサシンの特性である奇襲は不可能。正面からの戦闘で打ち破る以外に勝機は無い。

 

 対抗するように、己の身の内より雷撃を迸らせるテスラ。

 

 子供たちの背後から、戦いの推移を見守る凛果。

 

 訪れる、一瞬の静寂。

 

 次の瞬間、

 

 響と美遊は、同時に斬りかかった。

 

 剣を振り翳し、左右から挟み込むようにテスラに斬りかかる子供達。

 

 銀の刃は、テスラを標的に定めて迫る。

 

 対して、

 

「フンッ!!」

 

 テスラは両手を左右に広げると、その手のひらより雷撃を放つ。

 

 迸る、雷撃の矢。

 

 その一閃を、

 

「やッ!!」

 

 美遊は剣を振るって弾く。

 

 一方の響は、跳躍して回避。

 

 駆け抜ける電撃を足元に見ながら、テスラへと斬りかかる。

 

「んッ!!」

 

 振り下ろされる剣閃。

 

 しかし、

 

「フッ 甘いな」

 

 笑みを浮かべるテスラ。

 

 同時に、収束した雷が、盾となって響の剣を弾く。

 

 金時、玉藻との戦闘で魔霧による防御を失ったテスラ。

 

 しかし、それに代わる防御手段を既に用意していた。

 

 雷撃の盾が、斬りかかろうとした響の接近を阻む。

 

 しかもこれは、ただの盾ではない。

 

 まさに攻防一体の防御障壁。

 

 触れただけでダメージを負うのは間違いなかった。

 

「ハッハッハッハッハッハッ どうしたどうしたッ!?」

 

 テスラが腕を振るう度、雷光が迸り、斬り込もうとする美遊と響を阻む。

 

「このッ!!」

 

 美遊は自身の持つ剣に魔力を込め、一気に振るう。

 

 魔力放出で、進路を斬り拓こうというのだ。

 

 だが、

 

「甘いなッ 少女よッ その程度では私には届かんぞ!!」

 

 対抗するように放たれた雷撃。

 

 美遊の魔力とテスラの雷撃が激突した瞬間、互いに相殺される。

 

 衝撃と共に晴れる視界。

 

 立ち上がりが速かったのは、

 

 テスラだ。

 

「そらそらそらァッ!!」

 

 テスラは美遊目がけて次々と雷撃の矢を放つ。

 

 対して、美遊は堪らず、攻撃を諦めて後退せざるを得ない。

 

「クッ 速いッ!?」

 

 バックステップで距離を取ろうとする美遊。

 

 だが、

 

 その間に、響がテスラの背後へと回り込んだ。

 

「んッ!!」

 

 今なら、テスラの注意は美遊に向いてる。

 

 奇襲を掛ける絶好のタイミング。

 

 そう思った。

 

 次の瞬間、

 

「フハハハハハハ!!」

 

 強烈な笑い声と共に、腕を真横に振るうテスラ。

 

 その雷閃により、響の体は大きく振り払われた。

 

 後退する、響と美遊。

 

 そこへ、容赦なくテスラの追撃が奔る。

 

「どうしたどうしたッ!? 逃げてばかりでは私は倒せないぞ!!」

 

 哄笑を上げるテスラ。

 

 対して、響と美遊は攻め手に迷っていた。

 

 テスラの雷撃は攻防一体。盾にもなれば槍にも弓にもなる。

 

 響達が接近して斬りかかれば、壁となって阻み、攻めれば刃となって切り裂き、放てば矢となって貫く。

 

 死角は一切ない。

 

 加えて、

 

 響はチラッと、テスラの背後に立つゾォルケンを見やる。

 

 一見すると、この戦いには介入していない魔術師だが、その手にある聖杯を見逃さない。

 

 敵の手に聖杯がある以上、テスラは事実上、無限の魔力を持っているに等しい。

 

 となると、

 

「どうしたね? 迷っていても世界は滅びるだけだぞ?」

 

 言いながら、魔力を放出するテスラ。

 

 同時に、活性化する雷撃。

 

 迸る雷撃が、テスラを中心に収束する。

 

 立ち尽くす、美遊と響に向かって両手を突き出すテスラ。

 

「宝具ッ!?」

 

 2人が身構えた。

 

 次の瞬間、

 

人類神話・雷電降臨(システム・ケラウノス)!!」

 

 致死の雷光が、幼きサーヴァント2人を葬るべく迸った。

 

 

 

 

 

第14話「其れはブリテンに名高き」      終わり

 

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