サイレンが響き渡る静かな夜。
俺は今、屋根の上を飛び移りながら逃走しているところだ。
警察が追いかけてきているが少し遊んでやろうと思い、川沿いの道路へと飛び移る。
チャンスと思ったのかすぐさま周りを取り囲む警察たち。
……お仕事が早いことで。
「ったく……いつまで追いかけてくるんだ。めんどくせーな。」
「今日こそ逃がさんぞ。盗んだものを返せ!」
警察の一人が叫ぶ。
俺は耳に小指を突っ込み、グリグリとかき回してうるせぇ、と呟いた。
右手に盗んだ絵を持ち、その手を川の上に突き出す。
手を離せば絵が川にボチャンっといってしまう場所だ。
警察たちは勿論焦っていた。
「さーん」
俺がカウントダウンを始めると、警察たちはざわめいた。
動けば落とされる。動かなければカウントは進み、そのまま逃げられてしまうと察したのだろう。
打つ手を必死に考えている様を俺はニヤニヤと笑いながら眺めていた。
「にー」
「おい、待てよ!」
少年の声がその場に響き、俺は冷めた目で声のした方向を見つめる。
警察たちの壁をかき分けて現れたのは、警察の制服を着た少年だった。
「……いーち」
「だああ!こら、待てって言ってんだろ!」
「お前……また警察についてきたのかー?子供はお寝んねしてる時間だぞー。」
はぁー、と少年に聞こえるように大きくため息をつき、そのまま少年を見下ろした。
少年は俺の言葉に腹が立ったのか、俺を睨んで叫んだ。
「ついてきたんじゃねぇ。俺も警察官なんだよ。」
「うーるせ、前も聞いたわ。」
俺は再び小指を耳に突っ込みグリグリとかき回しながら少年の叫び声を聞く。
その態度にさらに腹を立てたようで、掴みかかる勢いで叫んでくる。
「今日こそお前を捕まえてやる!とりあえず手に持っている絵を返せ。」
「はいはい。」
俺は持っていたものを少年に投げつけながら逃走を再開した。
少年と話している間に俺の隙をつこうとしたのか後ろから近づいてくる警察がいることに気が付いたのだ。
もう少し揶揄いたかったのだが……まぁ仕方ない。
「すまんな、面倒だから逃げるわ。」
俺の投げた絵に注意をそらした少年。彼に聞こえるように言いながら俺はその場を離れていく。
警察たちは急な出来事に驚いていたようで、すぐに俺を追いかけてくる者はいなかった。
しかし、少年は違った。投げられたものをつかんだ少年はすぐに俺を追いかけ始めたのだ。
俺を追いかけながらも、絵が無事かどうかを手探りで確認していた。
「すぐ返してくるなんて“月猫”らしくねぇと思ったら……。」
掴んだそれを後ろに投げながら叫ぶ。
「ダンボールじゃねぇかこれ!!」