……それにしても、まさか同じ学校だとは思っていなかったし、同じ学年だとも思っていなかった。
正直今でも信じたくないと思っている。
警察だというのが本当であれば、少しの可能性を追っても高校生。さすがに中学生はあり得ないと思っていた。
私は両親を軽く恨みながら職員室の扉をノックした。
「今日は転校生が来ています。では自己紹介してもらいますね。どうぞ、水無月さん。」
担任の先生に声を掛けられ、教室前の廊下で待っていた私はガラッと扉を開けた。
教室にいる学生たち皆が注目している中、静かに教室に入る。
教室前の檀上に立ち教室を見渡す。
ここは1年3組。刑部君がいるクラスである。
……そう。同じクラス。ここまでの偶然があってもいいのだろうか。
「あっ、子子ちゃんじゃん!」
あぁ、気付かれた……。
驚いた目をしながらも嬉しそうに柔らかく笑う刑部君。
私は気付かれないようにため息をついた。
「水無月さんの席は真ん中の列の一番後ろです。あの空いてる席ね。刑部君の隣よ。」
さて、ここまでの偶然があってもいいのでしょうか。刑部君と同じ学校、同じクラス、そして隣の席……。
名前を呼ばれたことで刑部君と親しいと先生に勘違いされ、隣の席にされてしまった感がある。
お仕事中何度もからかってきた彼と、どうしてここまで物理的に近い存在になってしまっているのか……。
これは軽くではなく、本格的に両親を恨まなくては……。
と、私はクラスメイトの質問攻めに答えながら思うのだった。
「刑部君って英語得意?」
「え?んぁー、そうだな……。授業で習った範囲ならまあできるぞ。」
「ん、そう、ありがとう。」
私は学生であると同時に怪盗というお仕事もしているので、空いた時間を使ってお仕事の作戦を立てたり依頼の確認などもしなくてはならない。
勉強の心配は全くないため学校でそれらを行っているのだが、勿論日本語でメモなどをしていては意味がないを通り越してバレバレで即怪盗人生終了だ。
頭で整理した事柄のメモをしているのだがどれだけ警戒していても読まれてしまう可能性は0ではない。
なので英語で書いているのだ。少なくとも中学生レベルの英語力では読めないように単語を選びながら慎重に記入していく。
警察官だという刑部君のことだから英語ぐらいは読めてしまうと考えていたのだが考えすぎだったようだ。
安心してメモを記入できる。
良かった良かった。
「え、子子ちゃん……何その英文……。」
授業中に記入してるってのに覗かれるとは思ってなかったよ。
英語で書いててよかった。