「久しいね。息災のようで何よりだよ、イサビ。」
木場の絶叫からの
ながら旧知の仲である魔王・サーゼクスその人であった。
彼の声は普段と変わらず、いっそ普段よりも朗らかに思える。短い言葉から伺えるその感情も、ただ久しぶりに会えた友人との再会に喜ぶ以外の色は見られない。妹達が未だ動揺と困惑に自分たちを見比べているが、それもわかりきっていたことだった。
そう。結局の所、彼は最初からこうなる事ぐらいは分かっていたのだ。この山に踏み入れば最初から監視の目に囚われることも、その素質から小猫が、木場が気付くであろうことも、異質な理に動く山の精に驚かされることも…
自分も心底驚いた「これ」に、君たちも驚いて欲しかった。つまるところ、これはそういうことだ。
悪趣味と言われればそうだろう。しかしこの男は本来、王である以前にこういった一面を持ち合わせている。無邪気で、悪戯好き、子供のように奔放。好きなものを好きと胸を張れる、そんな悪魔。
だからこそ。
自分が好きになった
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「ほっほ。主ゃちと老けたかのう、サーゼクス。子でも成したかえ?」
その言葉にイサビもまた同様、敵意なく返した。久しく会っていないとは聞いていたものの、目の前の二人が友人関係である事を一同が疑う余地はなかった。
そして和やかな談笑が続き、時間の経過が全員の頭に冷静さを呼び戻していく。それぞれが困惑と警戒からある程度脱却する頃には、全員は目の前の人物、イサビから、次第に目を離せないでいる自分に気が付き始めていた。
その身に纏う浮世離れした雰囲気か、はたまた根底から感じる異質さか。悪魔とは、本来「智」に対して密接かつ貪欲な生き物だ。悪魔と人間の知恵試し、聖者との駆け引き、召喚者に知識を授ける…その手の話は世界中に吐いて捨てるほどに存在する。長けた知啓が魔性を帯びると考えられるのも、馴染みある表現の一つだ。
智に挑み、未知を収集し、欲を満たす。それは、人間にも共通する原始的な渇望だ。
早い話、彼らは引き込まれ始めていたのだ。イサビの放つ、未知の世界の理、その一端に。
ここに来るまでに既にサーゼクスより聞かされた、未知の数々。それは見事に、彼らの好奇心を刺激する先駆けとなっていた。
異世界の地獄。使者。魔法律。禁忌の使い手。危険にして魅惑に満ちた未知の数々が、目の前で形を成している。散々刺激を受けた彼らにはもう先程までの恐怖や狼狽、警戒心さえ、興味を掻き立てるスパイスでしかなく。若く、冒険心に満ちた年頃も、それを加速させていた。
やがて話に区切りがついたのか、「ひい、ふう、みい…」とイサビが残りの面々に視線を向け、品定めをするように指を向けていく。どこか怪談めいた不気味なその所作に、何人かが思わず身を固くするも、それに微塵も気にした様子も見せない。
無論、彼は人数など最初から分かっている。ならばその行為は、一つの戯れなのだろう。その眼もとには、隠しきれない喜の色があった。
「合わせて八人。いやはや、これだけの
「非常識は百も承知だが、今回彼女達は外せなくてね。どうか無理を通してほしい。」
胸元を掻きながら「今更常識なぞ知るか」と呟き、考える素振りを見せはする…も。その口元は、微かに笑んだままであった。答えなど、最初から決まっているかのように。老獪にして邪気のないそんな仕草は、どことなくサーゼクスにも似た印象を一同に与えた。
一拍置き、勿体ぶるかのようにイサビは口を開く。ぎょろりと、その相貌が見開かれた。今まで静かだった、
闇の淵を映し出すような視線に射抜かれ、一同が息を呑む。
「元よりソヤツらは
深く刻まれた嗤みと共に、部員メンバーの心に強い不安を残しながら。一同は山門の中を通され、その奥の本堂へと足を進めていった。
風邪。故に短め。
後日修正するかも