ゼノブレイド2の小説的な何か   作:natsuki

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第一章 天の聖杯
第一話 出会い


 

 

 

 この世界は、終わりゆく世界だ。

 そんなことを言ったのは、どの国のどの科学者だっただろうか。

 そんな判別がつかないくらいに、口を揃えて皆が言うのは、この世界に対する不安。

 雲海に浮かぶ巨神獣の上に、俺たち人間は生きている。

 そして雲海に覆われた世界――アルスト。

 この世界は、巨神獣の寿命によって――終わりに近づいている。

 

 

◇◇◇

 

 

「ええっ! こんなにサルベージしたのに、これだけえ!?」

 

 アヴァリティア商会、中央交易所。

 そのカウンターにて、サルべージャーである俺、レックスは思わず大声を上げてしまっていた。

 

「そんなこと言われても、困るも。こちらだって、レックスの腕を買ってそれなりにオマケしているんだも」

 

 カウンターに居るノポンは、そう言って俺にゴールドの入った袋を手渡す。

 しめて、一万三千ゴールド。

 あの量ならもう二千ゴールド積まれてもおかしくはないのだが……。

 

「そ・れ・よ・り! ちょっと耳を貸すも、レックス」

「ん? どうしたの?」

「最近、インヴィディアとスペルビアが戦争を始めそう、という話は知っているも?」

「ああ、聞いたことはあるけど」

 

 インヴィディア烈王国とスペルビア帝国は、それぞれの巨神獣――領土を求めて戦争を始める。そんな話はアルストに住む人間なら常識だ。

 確か、テンペランティアってところが共同管轄地になっていたはずだったけど、詳しい話は俺にも分からない。サルべージャーは国境に縛られないからね。

 

「軍需物資を取り扱う、というのはどうも? そっちなら、一回ごとに三千ゴールドは儲けが出るも! 勿論、アヴァリティアが二割の手数料をもらうからそこから……六百ゴールドは差し引かれるも」

 

 物資を運ぶだけで二千四百ゴールド。

 確かに儲けは申し分ない。二千四百ゴールドもあれば無駄遣いさえしなければ五日ほどは生活出来る。

 でも。

 

「でも、俺は軍需物資は取り扱わないって決めているんだ」

 

 そう言って、袋の中から三千ゴールド分だけ取り出す。

 

「一万ゴールドはイヤサキ村のコルレルさん宛に送っといてよ」

 

 俺の返事を聞いたノポンは表情一つ変えず、袋を受け取った。

 

「了解も。……それにしても、この年で故郷に仕送りとは、流石だも。うちのドラ息子にも見習って欲しいも……」

 

 ノポンは背後でじっと何か本を読んでいるノポンを見ながら、言った。

 何というか、ノポンの家庭事情も複雑なんだな。

 そんなことを思いつつ、俺は袋を受け取って『じいちゃん』の所に戻ろうとした――。

 

「レックス、ちょっと待つも」

 

 

 ――そのタイミングで呼び止められた。

 

 

 振り返ると、そこにはノポンが居た。そして彼の両端にはボディーガードよろしく黒服の男が二人。……ってことは相当偉い人?

 俺がどうすれば良いのか判断に迷っていると、

 

「バーン会長がお呼びだも。会長室に向かうも」

「会長が? 俺を? 何で?」

 

 バーン会長。

 会長とついているからお察しの通り、このアヴァリティア商会のトップだ。ノポンは金にがめつい性格をしているというけれど、その中でもバーン会長が一番がめついんじゃないか、って思う。堅実で、確実に、大金を稼ぐやり方を知っている。しかし噂によるとマザコンとの話もあるけれど……。

 

「何でも何もないも。会長直々に、お前に依頼したいことがあるらしいも」

「会長直々?」

 

 何でまた。

 サルベージの依頼ならもっと良いサルべージャーだって居るだろうに。

 まあ、俺の腕が悪いってことを言いたいわけじゃないけれどさ……。

 

「とにかく向かうも。話はそれから。依頼人も既に待っているも」

「分かったよ。取敢えず話を聞きに、会長室へ向かえば良いんだね」

 

 そうだも。とだけ言って踵を――そういえばノポンって踵はあるのかな?――返していった。

 

 

 

 俺が会長室に到着したのは、それから二分後のことだった。

 

「失礼します」

 

 一応、礼儀は正しく。相手は目上だ。何かあったらサルべージャー生命に関わる可能性だって充分にあるわけだし……。

 

「お前が、レックスだも?」

 

 噂には聞いていたとおり、巨大なノポンがふてぶてしい態度をとって椅子に腰掛けていた。……この人がバーン会長か。そう思いながら俺は頷く。

 

「お前、リベラリタス島嶼群のイヤサキ村出身……だったも?」

「そうですけれど……」

 

 何で知っているんだ?

 もしかしてサルべージャーのリストでも確認したかな。会長権限ならあり得る話だ。

 

「実は、お前に依頼が来ているも。報酬は前金で十万ゴールド、さらに成功したら十万ゴールド。しめて二十万ゴールドの報酬だも」

 

 じゅ、十万!?

 思わず俺は目が点になってしまうような、そんなリアクションをとってしまった。

 分からない人のために言っておくと、俺の普段の稼ぎがだいたい七日で二万ゴールドあれば良いほうだ。まあ、三千ゴールドもあれば七日は暮らせるほどの食料を買い占めることは出来るのだけれど、それを考えると、十万ゴールドは破格だ。

 気付けば俺は二つ返事でその依頼に了承していた。

 

「やります! やらせていただきます、このレックス、全身全霊をもって任務に当たらせていただきます!」

「……お前、依頼内容は聞かなくていいも?」

 

 はあ、と深い溜息を吐きながらあきれ顔でバーン会長は言った。

 おっと、十万ゴールドという価格に驚いて依頼内容のことをすっかり聞きそびれていた。

 

「ああ。そうだった。……で、依頼内容ってどういうもの? サルベージですか?」

「本当に大丈夫かも……。ま、いいも。入るも」

 

 ぎい、と横の扉が開いた。

 中から出てきたのは、白い仮面の男と、黒い服のりりしい顔立ちの男――そして、

 

「……猫?」

 

 否、修正しておこう。正確には、グーラ人だ。確か獣みたいな耳をしているはずだったし。グーラ――スペルビア帝国の植民地で、確か近々遷都が予定されていたはず――出身なのだろうか。

 そして、そのグーラ人の少女の隣にいる白い虎のような獣。

 ただのペットには見えないし、もしかして……。

 

「ドライバーに……ブレイド。凄い。初めて見た」

 

 ドライバー。

 ブレイド。

 簡単に言えば、ブレイドが能力を武器に提供し、その武器を使ってドライバーが攻撃する……だったかな? 俺もドライバーじゃないから細かいことは分からないけれど。

 

「シン。今回の任務って、子供の世話も兼ねているんだっけ?」

 

 そんなグーラ人の少女ドライバーは、俺を見て失笑した。

 どうやら白い仮面の男はシンというらしい。

 ってか、子供ってどういうことだよ。子供って。

 

「お前だって子供じゃないか」

 

 気付いたら俺は反論していた。……普通に考えれば、その反論自体まさに『子供』の代表格的なものなのだけれど。

 

「私はそれくらいの価値で馬鹿みたいに喜ばないからね。……で、ドライバーは一人でいいんだっけ?」

「ああ。……レックス、といったな。一応再確認しておくが、リベラリタス島嶼群のイヤサキ村出身で間違いないな?」

 

 シンと呼ばれた男は俺に問いかける。

 鋭い目つきだ。見られるだけで硬直してしまうような、そんな目線。

 氷のように、冷たい目だ――。

 

「聞いている。イヤサキ村出身で、間違いないか?」

「ああ」

 

 俺は、その目線に負けないように、はっきりと頷いた。

 

「本当はそれくらいの報酬に見合う腕利きのサルべージャーに依頼する予定だったも。けれど、リベラリタス島嶼群のイヤサキ村出身のサルべージャーかつ実力があるのは、お前しかいなかった、ということだも」

 

 俺とシンの会話にバーン会長が割り入る。

 

「へへっ。実力を買ってもらうのは、有難いね」

「……依頼内容は、ある物品のサルベージだ」

 

 シンは静かに、かつ簡潔に話し始めた。

 

「ある物品、って……聞くのは野暮かな」

「分かってるじゃねえか、小僧」

 

 りりしい顔立ちの男は俺を見てそう言った。

 

「レックスだ。あんたは?」

「俺はメツ。よろしく頼むぜ、小僧? 金を払うんだ。その分の仕事はしてもらわねえとな」

「……あたしはニア。そして、」

「私はビャッコと申します。お嬢様のブレイドをしております」

 

 ……驚いた。ブレイドは話せるってのは聞いたことあるけれど、獣型のブレイドでも普通に話せるんだ。

 

「あ、ああ。よろしく」

「出発は明日。先ずはこれが手付金の十万ゴールドだ。これで装備を調えてくれ。出発は、ゴルトムント門出の港から、ウズシオという船を利用してサルベージポイントへと向かう。くれぐれも準備を怠らないように。以上だ」

 

 そうしてシンたちはそのままバーン会長の部屋を出て行ってしまった。

 なんだかサバサバした感じだけれど、ま、依頼人と引受人の関係だし、そこまで気にすることもないか。

 俺も準備をするためにバザールへ向かうことにしよう。そう思って俺もバーン会長の部屋を出るのだった。

 

「……おっと」

 

 その矢先、俺は慌ててしまって誰かにぶつかってしまった。

 大きな剣を背中に背負った男だった。隣にはブレイドと思われる曇りメガネをかけた女性もいる。

 

「ごめんね、急いでたんだ!」

 

 俺は急いで謝罪し、そのまま一階にあるアヴァリティア・バザールへと向かうのだった。

 

 

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