ゼノブレイド2 the Novelize   作:natsuki

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第十二話 メレフ

 モーフの攻撃は、狡猾そのものだった。

 自らのブレイドを盾にして、銃を使って攻撃してきているのだ。

 

「ブレイドを……盾に!」

「何が悪い? ブレイドは生きていないのだ。ブレイドは、私たち人間に従うものなのですからぁ!」

 

 銃を撃ち放つ。

 しかし、モーフ自体はあまり銃の使いになれていない様子で、時折銃を撃つのに時間がかかっている様子が見て取れた。

 そのチャンスを狙えば――。

 

「ボン。面倒やから、一気に決めるで」

 

 そのときだった。

 

「覇王の心眼よ、ワイにその力を貸せええええええええっ!」

 

 そして。

 ジークの左目が炎を灯したかのように光り出した。

 

「何だ、あれは……」

「これがジークの力や。覇王の心眼。その力。デメリットはあるけれど、その分力の解放をするんやああああああ!」

 

 びしゃああああああん!

 雷が二人に落下する!

 俺は見ていて、二人が怪我を負ったのでは無いかと心配した。

 だが、それよりも先にジークの攻撃がモーフのブレイドに命中する。

 モーフのブレイドはそのまま消滅し、モーフは慌てて銃を落としてしまった。

 ジークは、その刀身をモーフの首に当てる。あわや首を掻っ捌くところだった。

 

「ジーク!」

「大丈夫や、ボン。……一応、コントロール出来てるさかい。気にすることやない。……なあ、モーフと言ったなあ? これ以上ワイにこの力……使わせるんやないで」

「ひ、ひいっ!」

 

 モーフは完全に銃を手放している。

 戦闘の意思は、完全になくしていた。

 

「これで一先ずお終い、と言ったところかな」

 

 俺は剣を仕舞い、ふうと深い溜息を吐いたところだったが――。

 

「船が騒がしいと思っていたら、こんなところに居たのか。天の聖杯」

 

 声が聞こえた。

 そこに居たのはカグツチと――黒い軍服に身を包んだ女性だった。

 

「げえっ、メレフ。なんでお前がここに!」

 

 いち早くその正体に気づいたのはジークだった。

 

「ほう。天の聖杯に、『流転の王子』までついているとは。これまた珍しい」

「何が『これまた珍しい』や! 他人事と思いよってからに! 天の聖杯はスペルビアが狙っているから、今回のような事態になったんやろうが」

「一応言っておくが、天の聖杯を狙っているのは、彼自身の判断だと思うが。確かに、天の聖杯は誰もが羨む能力を持ち合わせている。しかしながら、あくまでも我がスペルビアは天の聖杯の目覚め、及びその行動に『傍観』する態度を取っている」

「傍観……」

 

 つまり敵じゃない、ってことで良いのか?

 

「王であるネフェル公は、天の聖杯との謁見を所望しているが……それはまだ早いだろう。何せ、ドライバーの力がそれに見合っていないのだからな」

「何を根拠にそんなことを……!」

「では君は、ブレイドの何を知っている?」

「え……?」

「君は、ブレイドの何を知っていると言っている。ブレイドは、この武器に力を補充する。だが、それは完全ではない。相手がその力を封じることが出来れば、簡単にその力は使えなくなる。それに……ブレイドとドライバーはただ力を与える・与えられるの関係では無い」

「何だって……?」

「それはまた、別の機会にすることとしよう。……君は、天の聖杯を目覚めさせて、何がしたい?」

 

 その言葉に、少し躊躇するも、俺はゆっくりと答えた。

 

「……決まってる。俺は、楽園を目指す」

「楽園、か。……あれば、人間への希望となるのだろうが。……まあ、良い」

 

 踵を返し、歩き始めるメレフ。

 

「良いのですか、メレフ様?」

 

 カグツチの問いに、失笑で答えるメレフ。

 そうして、カグツチもまたメレフの後を追いかけるように歩いて行った。

 こうして、呆気なくニア救出作戦は幕を閉じるのだった。

 

 


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