ゼノブレイド2 the Novelize 作:natsuki
モーフの攻撃は、狡猾そのものだった。
自らのブレイドを盾にして、銃を使って攻撃してきているのだ。
「ブレイドを……盾に!」
「何が悪い? ブレイドは生きていないのだ。ブレイドは、私たち人間に従うものなのですからぁ!」
銃を撃ち放つ。
しかし、モーフ自体はあまり銃の使いになれていない様子で、時折銃を撃つのに時間がかかっている様子が見て取れた。
そのチャンスを狙えば――。
「ボン。面倒やから、一気に決めるで」
そのときだった。
「覇王の心眼よ、ワイにその力を貸せええええええええっ!」
そして。
ジークの左目が炎を灯したかのように光り出した。
「何だ、あれは……」
「これがジークの力や。覇王の心眼。その力。デメリットはあるけれど、その分力の解放をするんやああああああ!」
びしゃああああああん!
雷が二人に落下する!
俺は見ていて、二人が怪我を負ったのでは無いかと心配した。
だが、それよりも先にジークの攻撃がモーフのブレイドに命中する。
モーフのブレイドはそのまま消滅し、モーフは慌てて銃を落としてしまった。
ジークは、その刀身をモーフの首に当てる。あわや首を掻っ捌くところだった。
「ジーク!」
「大丈夫や、ボン。……一応、コントロール出来てるさかい。気にすることやない。……なあ、モーフと言ったなあ? これ以上ワイにこの力……使わせるんやないで」
「ひ、ひいっ!」
モーフは完全に銃を手放している。
戦闘の意思は、完全になくしていた。
「これで一先ずお終い、と言ったところかな」
俺は剣を仕舞い、ふうと深い溜息を吐いたところだったが――。
「船が騒がしいと思っていたら、こんなところに居たのか。天の聖杯」
声が聞こえた。
そこに居たのはカグツチと――黒い軍服に身を包んだ女性だった。
「げえっ、メレフ。なんでお前がここに!」
いち早くその正体に気づいたのはジークだった。
「ほう。天の聖杯に、『流転の王子』までついているとは。これまた珍しい」
「何が『これまた珍しい』や! 他人事と思いよってからに! 天の聖杯はスペルビアが狙っているから、今回のような事態になったんやろうが」
「一応言っておくが、天の聖杯を狙っているのは、彼自身の判断だと思うが。確かに、天の聖杯は誰もが羨む能力を持ち合わせている。しかしながら、あくまでも我がスペルビアは天の聖杯の目覚め、及びその行動に『傍観』する態度を取っている」
「傍観……」
つまり敵じゃない、ってことで良いのか?
「王であるネフェル公は、天の聖杯との謁見を所望しているが……それはまだ早いだろう。何せ、ドライバーの力がそれに見合っていないのだからな」
「何を根拠にそんなことを……!」
「では君は、ブレイドの何を知っている?」
「え……?」
「君は、ブレイドの何を知っていると言っている。ブレイドは、この武器に力を補充する。だが、それは完全ではない。相手がその力を封じることが出来れば、簡単にその力は使えなくなる。それに……ブレイドとドライバーはただ力を与える・与えられるの関係では無い」
「何だって……?」
「それはまた、別の機会にすることとしよう。……君は、天の聖杯を目覚めさせて、何がしたい?」
その言葉に、少し躊躇するも、俺はゆっくりと答えた。
「……決まってる。俺は、楽園を目指す」
「楽園、か。……あれば、人間への希望となるのだろうが。……まあ、良い」
踵を返し、歩き始めるメレフ。
「良いのですか、メレフ様?」
カグツチの問いに、失笑で答えるメレフ。
そうして、カグツチもまたメレフの後を追いかけるように歩いて行った。
こうして、呆気なくニア救出作戦は幕を閉じるのだった。