ゼノブレイド2 the Novelize   作:natsuki

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第十九話 フォンス・マイム劇場①

「そういや、さっきの娘だがな、ありゃあイオンといって俺の知り合いのところの娘なんだよ。とは言っても、血は繋がっていなかったはずだがな」

 

 ヴァンダムさんはそんなことを言って、俺たちに知識を開け広げてきた。

 後方の列しか席が空いていなかったので、俺たちはそこに腰掛ける。

 物語は、英雄アデルを主軸として進められ、その生涯が語られる話だった。

 

「そのとき私は見たのだ! 暗黒にすべてが飲み込まれる様を!」

 

 アデルの弟子――演者が仰々しいポーズを取って、そう言った。

 

「人も、巨神獣も、暗黒の渦へと飲み込まれる様を!」

 

 結構仕掛けはしっかりとしていて、船に乗っている様子も、雲海の様子も白いベールを使って表現されていた。

 

「このままでは世界は終わる。終わってしまう!」

 

 そのとき、船に誰かが見えた。

 全身を鎧で包んだその姿は、異形にも思えた。

 しかし、その人間――実際には演者だけれど――こそが、英雄アデルだった。

 

「だが、そのとき、満身創痍の姿を起こし、我が師英雄アデルは決断したのだった!」

 

 アデルは言う。

 

「神よ、我に力を! 暗黒を焼き払い、世界を照らす『光』の力を!」

 

 剣を天に掲げ、そう叫んだ。

 すると――、空から翼の生えた天使のような人間――実際には人形が出てきた。

 

「おお! そなたは天の聖杯、神のしもべ!」

 

 アデルはオーバーなポーズを取りながら、話を続けた。

 

「どうか、我に力を。この世界を照らす『光』を――!」

 

 すると炎のベールが舞い上がり、闇が消えていった。

 あっという間の出来事だった。

 アデルの弟子は、語りを再開する。

 

「こうして、暗黒は払われた。……しかし、その代償は大きかった。多くの大陸が、雲海の底へと、沈んでいったのだ……」

「モルスの地のことじゃな」

 

 じっちゃんは俺のヘルメットの中から呟いた。

 

「モルスの地って……サルベージャーにとって『死の大地』と言われる、あの?」

「お前さん達がどう言っているかは知らんが、そうじゃな。雲海の底に沈んでいる大陸。かつてはそこに人間が住んでいたとも言われておる」

 

 俺たちは再び演劇に視線を向ける。

 アデルは、横たわる天の聖杯に近づいて、言った。

 

「神のしもべよ。そなたのおかげで、世界は救われた……! その命の代償、我が、償おう……」

 

 そして、客席に向けて手を伸ばし、

 

「我は語り継ぐ! そなたの伝説を、我の名前とともに……!」

 

 そして、横たわった天の聖杯を抱き上げると、そのままカーテンコールが下りていくのだった。

 それは、演劇の終わりを意味していた。

 

 


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