ゼノブレイド2 the Novelize 作:natsuki
だが、その前に俺には一つやらなければならないことがあった。
それは『じっちゃん』に数日間アヴァリティアに滞在してもらうことを説明しなければならない、ということ。
じっちゃん……簡単に言えば俺の住居であり家族であり、そしてじっちゃんは巨神獣だった。巨神獣の中でも小さく、国を構成するほどではないが、物心ついたときから、そしてサルべージャーとして生計を立てるようになってからは家代わりとしてじっちゃんとともにこのアルストを旅している、というわけだ。
んで、そのじっちゃんに声をかけるわけだけれど……。
「……何でそんな訳も分からない胡散臭い任務に二つ返事で了承したんじゃ、レックス」
「何でって……。別に数日だけだし、場所もアヴァリティアからそんな遠くないし、問題ないだろ。一応座標も教えておくけれど」
「……成程。まあ、確かにそう遠くないわい。けれど、わしは少し心配じゃぞ。レックスが危険な目にあうんじゃないかと」
「そんなの、ずっと昔からそうじゃないか。取敢えず後は何とかしといてよ! じゃあ、俺、準備しないといけないから! 後はよろしくー!」
これ以上じっちゃんの話に付き合っていると冗談抜きで夜が明けかねない。まだ準備の一つも終わっていないのだ。スーツの新調と仕送り、武器の手入れ……。
「今日はレムレイムで寝ることにしようか……」
レムレイムはアヴァリティア商会にある宿屋だ。俺もたまに利用するけれど、普段はじっちゃん(つまり、俺の家)で寝ている。だってそっちの方が節約出来るし。けれど今は十万ゴールドという大金がある。無駄遣いは良くないけれど、レムレイムの代金は確か百五十ゴールドぐらいだったはず。少しぐらい、贅沢をしても罰は当たらないだろう。
そんな期待に胸を膨らませながら、俺はアヴァリティア・バザールを歩いて行くのだった。
「……あんさんも分かってるんやろうなあ」
会長室では、レックスたちが出て行って直ぐ、別の客人が訪れていた。
客人はアーケディア法王庁からやってきた特使だったが、その風貌はアーケディアのそれとは少し違っているように見える。
「何のことだも。アヴァリティアは金になることはするけれど、金にならないことは一切しない主義だも」
「まー、アヴァリティアの考えはどーでもええねん。うちらアーケディアも独自に追ってはいるけれど、アヴァリティアに情報が入ったら即刻教えて欲しいねん」
「教える……って何をだも?」
「決まっとるやないか」
その男の目が、少しだけ輝いたような気がした。
「天の聖杯。神によって生み出された特別なブレイド。それが今……目覚めようとしている、ということや」
次の日。
諸々の準備を済ませた俺はいつものサルべージャースーツに身を包み、ゴルドムント門出の港へとやってきていた。
既に俺以外の乗組員はやってきていて、準備を済ませているようだった。
「遅かったね、あんた。逃げたかと思ったけれど」
背後から声が聞こえたので振り返る。立っていたのは、ニアだった。
「何だよ。……俺が怖気付くとでも思ったのか」
「べっつにー。ま、お金はしっかり払っているんだから、それくらいは働いてくれよ」
「任せておけ」
「おーい、レックス! 何をしているんだ、もう出発するぞ!」
「やべっ! ニア、お前のせいだぞ」
「はあっ!? なんで私のせいなのさ!」
そうして俺とニアは急いで雲海探査船――ウズシオへと向かうのだった。