ゼノブレイド2 the Novelize   作:natsuki

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第二十一話 フォンス・マイム劇場③

「英雄アデルの血を……引く者?」

「イヤサキ村は、かつて英雄アデルが暮らしていた場所じゃからのう。……大方、天の聖杯のロックも、イヤサキ村出身の人間しか開けないシステムだったのだろうよ」

「じっちゃん。なんでそんなことが……?」

「メツもシンも、かつての五百年前の『聖杯大戦』で戦った人間じゃよ。いや、そこまで来たら人間かどうかも危ういがのう……」

「メツは、私と同じ天の聖杯です」

 

 ホムラは、俺たちに事実を告げた。

 さらに、話は続く。

 

「シンとメツは、きっと天の聖杯を一つにすることで、世界樹へと向かおうとしたのでしょう。理由は分かりきっています。……世界樹の守護神であるサーペントを管理する為です。今の管理システムは私が所持していますが、メツはそれを持ち合わせていません。きっと、それを手に入れたかった」

「ちょ、ちょっと待ってくれ……。話についていけな……」

「おやおや、何だか勢揃いですねえ」

「だなあ?」

 

 俺の言葉を切るように、二人の声が聞こえる。

 そして、その声は聞き覚えのあるものだった。

 

「メツ! それに……」

「ヨシツネですよ! 少しは覚えてくれると良かったのですがね……!」

 

 刹那、劇場から爆発音が上がった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 フォンス・マイム城にて。

 

「何があった!」

「ご報告致します! フォンス・マイム劇場にて爆発が発生! 死者はでていませんが、負傷者が多数とのことです!」

「恐らく、イーラによるものでしょう」

 

 アルヴィースの言葉に、ラゲルトは睨み付けるようにして応える。

 

「おぬし、それも分からなかったのか。予言官のくせに!」

「予言官でも守らないといけないことと、守った方が良いことがあるんですよ。それに……もう、あの王子が彼らとともに居る時点で世界線は変わっている。それがどういう被害を受けるのか、どういう利益を齎すのか。見てみたくはありませんか?」

「……我が国に影響はないのか?」

「恐らく、ですが。しかし僕の知っていた世界線では、彼らは被害を受けながらもなんとか世界を平穏へと導いた。……そして、ラゲルト女王陛下、あなたはそれを望んでいる。だから、僕をこの世界に招き入れたのでしょう? ……それによって、元々僕がいた世界がどうなってしまったのかは、まあ、あまり考えたくないですけれど」

 

 アルヴィースは歩きながら、微笑む。

 

「どこへ向かうというのですか?」

「少し、話をしたいんですよ。天の聖杯と」

「あなたはこの国の予言官としての役目を担っている、というのに?」

「元は同じ『神』から生まれた存在です。少しは話をしたいと思っているのですよ。……勿論、だめだというのであれば、僕は何も言いませんが」

 

 ラゲルトはそれを聞くと、深い溜息を吐いた。

 

「……分かりました。向かいなさい、あなたが『どうなるかは』それも神の導きと言えるのでしょう」

「神はもう、とっくにこの世界を諦めていますよ。今は、自分自身の消失に苦しむばかりです」

 

 そうして。

 謁見の間の扉は、ゆっくりと閉じられた。

 

 


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