ゼノブレイド2 the Novelize 作:natsuki
「英雄アデルの血を……引く者?」
「イヤサキ村は、かつて英雄アデルが暮らしていた場所じゃからのう。……大方、天の聖杯のロックも、イヤサキ村出身の人間しか開けないシステムだったのだろうよ」
「じっちゃん。なんでそんなことが……?」
「メツもシンも、かつての五百年前の『聖杯大戦』で戦った人間じゃよ。いや、そこまで来たら人間かどうかも危ういがのう……」
「メツは、私と同じ天の聖杯です」
ホムラは、俺たちに事実を告げた。
さらに、話は続く。
「シンとメツは、きっと天の聖杯を一つにすることで、世界樹へと向かおうとしたのでしょう。理由は分かりきっています。……世界樹の守護神であるサーペントを管理する為です。今の管理システムは私が所持していますが、メツはそれを持ち合わせていません。きっと、それを手に入れたかった」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……。話についていけな……」
「おやおや、何だか勢揃いですねえ」
「だなあ?」
俺の言葉を切るように、二人の声が聞こえる。
そして、その声は聞き覚えのあるものだった。
「メツ! それに……」
「ヨシツネですよ! 少しは覚えてくれると良かったのですがね……!」
刹那、劇場から爆発音が上がった。
◇◇◇
フォンス・マイム城にて。
「何があった!」
「ご報告致します! フォンス・マイム劇場にて爆発が発生! 死者はでていませんが、負傷者が多数とのことです!」
「恐らく、イーラによるものでしょう」
アルヴィースの言葉に、ラゲルトは睨み付けるようにして応える。
「おぬし、それも分からなかったのか。予言官のくせに!」
「予言官でも守らないといけないことと、守った方が良いことがあるんですよ。それに……もう、あの王子が彼らとともに居る時点で世界線は変わっている。それがどういう被害を受けるのか、どういう利益を齎すのか。見てみたくはありませんか?」
「……我が国に影響はないのか?」
「恐らく、ですが。しかし僕の知っていた世界線では、彼らは被害を受けながらもなんとか世界を平穏へと導いた。……そして、ラゲルト女王陛下、あなたはそれを望んでいる。だから、僕をこの世界に招き入れたのでしょう? ……それによって、元々僕がいた世界がどうなってしまったのかは、まあ、あまり考えたくないですけれど」
アルヴィースは歩きながら、微笑む。
「どこへ向かうというのですか?」
「少し、話をしたいんですよ。天の聖杯と」
「あなたはこの国の予言官としての役目を担っている、というのに?」
「元は同じ『神』から生まれた存在です。少しは話をしたいと思っているのですよ。……勿論、だめだというのであれば、僕は何も言いませんが」
ラゲルトはそれを聞くと、深い溜息を吐いた。
「……分かりました。向かいなさい、あなたが『どうなるかは』それも神の導きと言えるのでしょう」
「神はもう、とっくにこの世界を諦めていますよ。今は、自分自身の消失に苦しむばかりです」
そうして。
謁見の間の扉は、ゆっくりと閉じられた。