ゼノブレイド2 the Novelize 作:natsuki
「人格って――」
「余所見しない!」
「!」
「君が余所見をすると、私があなたへ力を送ることが出来ないっ!」
ヒカリが武器に力を与える。
今までよりも強力なその力は――俺に自信を与えてくれた。
これなら、戦える!
そうして俺はメツに向かって攻撃を開始する――そのときだった。
「はい、そこまで」
ぱんぱん、と手を叩いた音が聞こえた。
そこで俺たちの思考は中断され、その音がするほうに目線を向ける。
そこに居たのはアルヴィース――そして彼のブレイドだった。
「アルヴィース……。まさかお前、『この世界』に来ていやがったのか」
メツの言葉に、アルヴィースは微笑むだけだった。
「ここは僕の顔に免じて、終わりにしてくれないかな? どうせ君たちは全員本気ではないのだろう? 天の聖杯、その力も目覚めたばかりだし……後はこれ以上この場所で戦われちゃあ、インヴィディアにとっても良いことではないのだよね」
「マスター、攻撃しますか?」
「いや、大丈夫だよ、コスモス。今は攻撃をしなくていい。そう、今はね」
ちっ、と舌打ちをする音が聞こえた。
メツは武器を仕舞い、アルヴィースへ近づき、
「てめえ、何を考えていやがる? 親父のお気に入りだったからって、この世界で何でもやっていいって理由にはならねえだろうが。それにお前の役目は……」
「人々を良い方向へと導く。ただ、それだけの話だよ。天の聖杯はそれぞれ異なった役割を持っていた。君が破壊、ヒカリが再生、そして僕が……『安寧』。だからこれ以上安寧を崩すわけにはいかないし、そうなったら僕の力をもって制するしかない。まあ、そんなことをしたらあちらの世界にも影響を及ぼすし、『ゲート』の力が早く尽きてしまう。それは君にとっても良いことだらけではないだろう?」
「アルヴィース、貴様どこまで知っていやがる?」
メツの言葉に、首を傾げるアルヴィース。
「どこまで? まあ、すべてを知っているよ。だって君と僕、それにヒカリは同じ器から生まれた存在じゃあないか」
「へっ。お前と同じなんて死んでも認めたくないね。……分かった、ここはお前の顔に免じて逃げることにしようか。助かったな、小僧」
「へん。次は俺たちが絶対に勝ってやるからな!」
はっきり言って、強がりだった。
俺はメツの力を知って――あれじゃあ、勝てないってことを思い知らされた。
もっと、もっと力がないと……。
「さて、けが人は軍の皆さんに任せるとして……」
アルヴィースは俺たちをぐるりと一瞥したあと、ヒカリを見る。
ヒカリはどこか不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「あの様子、まるで『出るタイミングを窺っていた』ように見えたのだけれど?」
「そうかなあ。別に僕はそう思ってはいないよ。君たちだけに有利な情報を与えてはフェアではないからね」
アルヴィースは振り返り、歩き始める。
おっと。何か忘れ物をしたのか数歩歩いただけで立ち止まると、
「一度、また城に来てくれないか。一度話したいこともある。天の聖杯として覚醒した今、そしてドライバーとしてレックス、君が何をしなくてはならないか、ということについて」
そう言って、アルヴィースは歩き始める。
俺たちは、それに従うしかなかった。
ヴァンダムさんの無事を、俺たちはただただ願うことしか出来なかった。
第三章 終わり