ゼノブレイド2 the Novelize   作:natsuki

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第二十四話 フォンス・マイム劇場⑥

「人格って――」

「余所見しない!」

「!」

「君が余所見をすると、私があなたへ力を送ることが出来ないっ!」

 

 ヒカリが武器に力を与える。

 今までよりも強力なその力は――俺に自信を与えてくれた。

 これなら、戦える!

 そうして俺はメツに向かって攻撃を開始する――そのときだった。

 

「はい、そこまで」

 

 ぱんぱん、と手を叩いた音が聞こえた。

 そこで俺たちの思考は中断され、その音がするほうに目線を向ける。

 そこに居たのはアルヴィース――そして彼のブレイドだった。

 

「アルヴィース……。まさかお前、『この世界』に来ていやがったのか」

 

 メツの言葉に、アルヴィースは微笑むだけだった。

 

「ここは僕の顔に免じて、終わりにしてくれないかな? どうせ君たちは全員本気ではないのだろう? 天の聖杯、その力も目覚めたばかりだし……後はこれ以上この場所で戦われちゃあ、インヴィディアにとっても良いことではないのだよね」

「マスター、攻撃しますか?」

「いや、大丈夫だよ、コスモス。今は攻撃をしなくていい。そう、今はね」

 

 ちっ、と舌打ちをする音が聞こえた。

 メツは武器を仕舞い、アルヴィースへ近づき、

 

「てめえ、何を考えていやがる? 親父のお気に入りだったからって、この世界で何でもやっていいって理由にはならねえだろうが。それにお前の役目は……」

「人々を良い方向へと導く。ただ、それだけの話だよ。天の聖杯はそれぞれ異なった役割を持っていた。君が破壊、ヒカリが再生、そして僕が……『安寧』。だからこれ以上安寧を崩すわけにはいかないし、そうなったら僕の力をもって制するしかない。まあ、そんなことをしたらあちらの世界にも影響を及ぼすし、『ゲート』の力が早く尽きてしまう。それは君にとっても良いことだらけではないだろう?」

「アルヴィース、貴様どこまで知っていやがる?」

 

 メツの言葉に、首を傾げるアルヴィース。

 

「どこまで? まあ、すべてを知っているよ。だって君と僕、それにヒカリは同じ器から生まれた存在じゃあないか」

「へっ。お前と同じなんて死んでも認めたくないね。……分かった、ここはお前の顔に免じて逃げることにしようか。助かったな、小僧」

「へん。次は俺たちが絶対に勝ってやるからな!」

 

 はっきり言って、強がりだった。

 俺はメツの力を知って――あれじゃあ、勝てないってことを思い知らされた。

 もっと、もっと力がないと……。

 

「さて、けが人は軍の皆さんに任せるとして……」

 

 アルヴィースは俺たちをぐるりと一瞥したあと、ヒカリを見る。

 ヒカリはどこか不機嫌そうな表情を浮かべていた。

 

「あの様子、まるで『出るタイミングを窺っていた』ように見えたのだけれど?」

「そうかなあ。別に僕はそう思ってはいないよ。君たちだけに有利な情報を与えてはフェアではないからね」

 

 アルヴィースは振り返り、歩き始める。

 おっと。何か忘れ物をしたのか数歩歩いただけで立ち止まると、

 

「一度、また城に来てくれないか。一度話したいこともある。天の聖杯として覚醒した今、そしてドライバーとしてレックス、君が何をしなくてはならないか、ということについて」

 

 そう言って、アルヴィースは歩き始める。

 俺たちは、それに従うしかなかった。

 ヴァンダムさんの無事を、俺たちはただただ願うことしか出来なかった。

 

 




第三章 終わり

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