ゼノブレイド2 the Novelize 作:natsuki
「そこで、私がお願いしたのです。もし未来を見ることが出来るというのなら、あなたにお願いがある、と」
正確に言えば。
俺たちとアルヴィース、KOS-MOS:Re意外にもう一人居た。
ファン・レ・ノルン。
又の名を、アーケディアの女神。
「天の聖杯と、そしてそのドライバーとお会いしたいと、そう言っていました。聖下は」
「聖下?」
「……流石にそれは知っていてもおかしくないと思ったけれど」
「いや、知らないわけがないだろ。この世界で聖下と言ったら一人。アーケディア法王庁のトップ、マルベーニさんだろ」
マルベーニ聖下と言いたかったところかもしれないけれど、俺は言わなかった。
何故だろうか。今思えば、それは、俺の中で、『不信』があったのかもしれない。
「一度お会いしたい、か。結局、何を狙っているんや? そもそも、『確認』だけならワイが確認しているだけで十分やないか」
「ジーク様の言うとおりです。ですが、ジーク様の調査報告は遅れている一方ですから……」
「うっ」
「やっぱり。最近送るのが遅いから『業務放棄』と思われてもしゃーないよーって言ったのに」
「うるさいなあ、あほぅ」
ジークとサイカの漫才はほっとくとして。
「俺は別に構わないけれど……ホムラは?」
ホムラは俺の言葉にゆっくりと頷く。
きっと、彼女もある種の葛藤があった後の回答だったのだろう。
さらに、ファン・レ・ノルンは話を続ける。
「アルヴィース様は、『自らのブレイドを隠しておく』ことを条件に、我々への協力を認めてくれました。何故だかは分かりませんが、アルヴィース様曰く、『世界のバランスが破綻する可能性がある』とのことで……」
「ま、そういうことなんだ。既に天の聖杯が三体居るこの世界の時点でバランスが崩壊しかかっているんだけれど。まったく、『創造主』は何を考えているんだか」
創造主。
とどのつまり、天の聖杯を作り上げた『父』であり『神』である存在。
一度会えることなら会ってみたいけれど、しかし、『楽園』に行けば会えるのか? という話になると、またそれは別の話になるのだと思う。
楽園には、いったい何があるのだろうか。
楽園は、そもそも存在しているのだろうか。
考えつつも、疑問に答えることが出来ない。
ホムラが、私を楽園に連れてって、とそう言ったから――信じているだけに過ぎない。
「レックス様? どうなさいましたか?」
ファン・レ・ノルンの言葉に、俺は我に返った。
「あ、ああ。大丈夫だよ。それで? ここからアーケディアに直接向かうって事?」
「残念ながら、アーケディアに直接向かうことは敵いません。問題は、雲の壁。あなたも知っていることでしょう」
「もしかして……」
「ええ」
ファン・レ・ノルンは言った。
「一度私たちはリベラリタスを経由して、アーケディアに向かうことになります。……確か、レックス様はリベラリタスの生まれでしたよね?」