ゼノブレイド2 the Novelize 作:natsuki
「え? 俺? うん、なあ、そうだけれど……」
「でしたら、リベラリタスでの案内をお願いできますか? 一度、レックス様の故郷に帰ることも問題御座いませんので」
「なら、ワイはパスや」
最初に言ったのは、ジークだった。
「何でや、王子。何か気になることでもあるんか?」
「何、ちょいと野暮用を思い出したんや。……ルクスリアへ向かう船は出ているかのう?」
「ルクスリアへ向かう船ならば、一日に一本は出ているよ。ただし貿易船の扱いだから、あまり乗り心地は良くないけれど」
「それでかまへん。……となると、少しボンとは別れることになるな」
「えっ?」
ジークの言葉に、俺はついていけなかった。
とどのつまり、ここで別行動をしようということなのだ。
「分かりました。それでは、アーケディアに向かうのは、ジーク様、サイカ様以外の方が行かれるということで」
「おう、それで頼むわ。というわけでボン、少しの間お別れや。ま、アーケディアには用事もあるし必ず戻ってくるがな」
「戻ってくる、って?」
「テンペランティアの『分割』についての話し合いが近日行われる予定なんや。テンペランティアについては聞いたことがあるやろ?」
テンペランティア。
かつて巨神獣兵器が存在していた、死の大地。
インヴィディアとスペルビアの間で政情緩衝地となっているはずだったが――どうしてルクスリアが関わることになっているのだろうか?
「ルクスリアはテンペランティアには関わっていないはず、でしたが」
アルヴィースの問いに、ジークは呟く。
「五月蠅い。こちとら、参加しないといけない理由を逆に作らなきゃいかんぐらいや。……言っていなかったがな、ボン。ワイはルクスリアの王子なんや」
「え……ええっ? そうなの?」
そういえば、ジークについてはあまり聞いてなかったことがあったような気がする。
しかし、まさかルクスリアの王子とは思いもしなかった。
「ルクスリアは、世界樹へ向かうために必要な『パーツ』を保管・管理している里や。かつて英雄アデルの末裔により作られたと言われとる」
「英雄アデルの……末裔が?」
「せや。そのためかははっきりとしとらんが……、ルクスリアに『楔』が保存されとる。それを使えば世界樹へ行くことやって可能やと思う」
「王子、でもそれって……」
「……わーっとる。凱旋出来るほどのことはしとらん。だから激突することは間違いないやろうなあ」
ジークは溜息を吐く。
「けれど、それもボンのためや。……しっかり話つけて戻ってくるから、安心せい」
「……分かった。ジークにはジークなりの考えがあるんだね。だったら、俺は止めないよ。また会おう」
そう言ってレックスは手を差し伸べる。
しばし、ジークは何も出来なかったが、やがてゆっくりと手を伸ばすと、二人はしっかりと握手を交わすのだった。