「……そろそろ帰ろうか。コルレルおばさんも心配しているだろうし」
「そうですね、レックス」
俺はそう言って立ち上がると、墓石に向かって頭を下げる。
「じゃっ、父さん、母さん。また出かけてくるよ。近くに寄ったらまた行くからさ!」
そうして、俺とホムラはコルレルおばさんの家へと戻っていくのだった。
◇◇◇
「ただいまー。……おっ、良い香り」
家に入ると、メレフが配膳をしていた。正確に言えば、皿をテーブルに置くだけの作業だった訳だけれど、実際、客人なのだからそんなことしなくて良かったのに。
「本当は、座って貰いたかったのだけれど、どうにも落ち着かなそうだったから」
見ると、ファン・レ・ノルンも手伝っていた。
「別に手伝わないで、皆、座って貰って良かったのに。手伝うよ、コルレルおばさん」
「レックス、それよりも先に、手、洗わないと」
「ああ。そうだったね!」
俺は手洗い場で手を洗って、配膳を手伝った。
ジークやトラはというと、動きがおぼつかないからか危なっかしいからか分からないけれど、椅子にこじんまりと座っていた。礼儀が正しい、といえばそれまでなのだけれど。でも、女性に動いて貰っておいて男性が動かないのもどうか、という話だ。実際、俺がコルレルおばさんの家に居た頃は進んで配膳を手伝っていた訳だし。
「今日は特製シチューだよ」
「わあ、ほんとう? 俺、好きだよ。それ」
「何か、今日はこれを作りたい気分になってねえ。……もしかしたら、レックスが返ってくることを暗示していたのかもしれないわね」
コルレルおばさんは笑みを浮かべながら、空いている皿にシチューを注いでいく。
それを見た皆は美味しそうな香りに笑みを浮かべるばかりだった。
◇◇◇
「……というわけで、これからアーケディアに向かうんだ」
「へえ。アーケディアにねえ」
食後、片付けはホムラがやりますと言い出したため、俺たちは有難くその言葉に従い、コルレルおばさんはファン・レ・ノルンとメレフから俺が今どこへ向かっていて、何のために向かっているのかの説明を受けていた。
「アーケディアと言えば、神学校だよねえ。この村からも何人か、行く予定があるんだよ。この村には学校という施設がないだろう? だから、一番近いアーケディアに通うしかないんだよねえ」
「そうですね……。確かに、リベラリタスには村がありませんから」
ファン・レ・ノルンとコルレルおばさんの会話は、盛り上がっているようだった。
「……少年は、緊張しないのだな」
不意にメレフからそんなことを言われて、首を傾げる。
「なんで?」
「普通、自分より上の人間に会いに行くときは、緊張するものだ。わたしだって、王に会うときは緊張する。誰だってそうだ。だが、君は見た感じ、そうではないようだ」
「そうかなあ? 俺も結構緊張しているほうだと思うけれど」
「レックスは能天気じゃからのう」
どこからか出てきたじっちゃんが突っ込みを入れる。
そんなこと言わなくて良いのに! と言うと、じっちゃんとメレフが吹き出した。