ゼノブレイド2 the Novelize   作:natsuki

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第三十一話 里帰り④

「……つまり、貴公は、『世界樹』に行きたいと言っているのか?」

 

「ええ。そうですよ。その辺りの情報は、そこの王族崩れから聞いているかと思いますが?」

 

「王族崩れやと! ワイは立派な王族やで!」

 

「まあまあ、それは言い過ぎましたか。……ともかく、話をこれ以上先延ばしにしたくない。我々としても、早くあの場所へ向かいたいのですよ」

 

「楽園に、か」

 

 ぽつり、とルクスリア王は呟く。

 

「楽園? 世界樹にはそのようなものがあるのですか」

 

「……メツから何も聞いていないと見える。世界樹にはかつて神が残した世界『箱庭』が広がっており、マルベーニ猊下はそこから二つのコアクリスタルを手に入れたと聞いている」

 

「そしてそのコアクリスタルが、『天の聖杯』ですか」

 

 ヨシツネは眼鏡の位置をすらしながら、呟いた。

 

「そうだ。そうして天の聖杯は存在し、一人はマルベーニ猊下が、そしてもう一人が……」

 

「小僧、いや、レックスが持っているというこっちゃな」

 

「ほう、ご存知なのですね、そこの王族崩れは」

 

「だからワイは立派な王族やとあれほど言っておろうが!」

 

 今度は、ヨシツネは否定しなかった。

 

「……サンクトスチェインを、私たちに渡して貰えますか? ルクスリア王」

 

「断る! イーラが何をしているのか、私たちの耳にも届いている。そんな状態の団体に、サーペントを操ることの出来るアイテム、サンクトスチェインを渡すことが出来る訳があるまい! それをしたら何が起きるか……考えただけで恐ろしい」

 

「イーラ。五百年前、かつて存在していた王国の名前。僕たちはそれを、間借りしているだけに過ぎません」

 

「そうだろうな。そうだろうよ! イーラの名前を正しく知っているのは、最早古い人間ばかりになってしまったからな」

 

 ルクスリア王は告げる。

 

 ヨシツネは徐々に自分の話のペースに乗せてきていることを実感し、僅かに笑みを浮かべる。

 

「交渉は決裂ですね。でもまあ、細工だけはしておきましたよ」

 

 うぉおおおおおおお!! とうなりを上げる、ルクスリアの巨神獣、ゲンブ。

 

「ゲンブが悲鳴を上げとる……。サイカ! いったいどうなっとるんや!」

 

「分からん……わからへん……。けれど、ゲンブが苦しんでいることだけは分かる……」

 

「毒を打ち込ませていただきました。巨神獣に効く、とびっきりの毒をね。噂に寄れば、あなたたちの巨神獣、ゲンブでしたっけ? は、もう寿命を迎えそうなところまで来ているらしいですねえ……?」

 

「貴様……謀ったな!!」

 

「謀った? それは、どちらの台詞ですか」

 

 ヨシツネは一歩前に出る。

 

「条件ですよ。条件。こちらは毒を回復する薬をゲンブに打つ。その代わりに、ルクスリアに眠るサーペントを操る楔……サンクトスチェインを渡して貰う。どうです? 悪い契約じゃないでしょう?」

 

「悪魔か……貴様らは!」

 

「なんと言って貰って構わない。全ては、世界樹に行くために」

 

 ルクスリア王は立ち上がる。

 

 そしてゆっくりとヨシツネの方へと向かっていく。

 

「おい!」

 

 ジークの言葉に、ルクスリア王は立ち止まる。

 

「……済まん、ジーク。全てはルクスリアに住む、全ての人間の為だ……」

 

 その言葉に、ジークは何も答えられなかった。

 

 


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