アーケディア。
法王庁の管轄になっている巨神獣となっていて、どの領土にも属さない立場を取っている。
俺も噂で聞いたことがある限りだったけれど、まさか実際にやってくることになるなんて思いもしなかった。
「ここが、アーケディア……」
「はい。そうです。ここがアーケディアです」
ファン・レ・ノルンさん――長いのでファンさんと略すことにした――は、アーケディアの階段の向こうにある高い壁を指さしてそう言った。
「ええっ、まさかあれを登るのか……」
「何よ、男の子でしょ。それぐらい簡単に出来なきゃ」
ちなみに今はホムラはヒカリになっている。ホムラ曰く、『ヒカリちゃんにも慣れておかないといけないですよね』とのことだった。うーん、別に俺はどっちでも良かったんだけど。
「……うーん、なんというか、ヒカリの方が押しが強いよなあ」
「何を言い出すかと思いきや。何、そんなに『あの子』の方が良いの?」
「そ、そういうわけじゃないけど!」
「はいはーい、皆さん! 急いで向かいますよー! 法王がお待ちしておりますからね!」
「法王って……マルベーニ猊下のこと?」
「はい! だって、そのためにマルベーニ様はあなたたちを呼び寄せたんですから」
ファンさんの言葉に、俺たちはただ頷くことしか出来なかった。
それにしても。
どうして俺たちを呼んだのだろうか?
天の聖杯のドライバーだから? それだけで呼んだとは到底思えない。
きっと何か裏がある。そんな気がしてならないのだ。
「……レックス? どうかしたんか?」
じっちゃんの言葉を聞いて、俺は我に返る。
「な、何でもないよっ。さっ、急いで上に登ろうぜ。じゃないと日が暮れちまう」
そうして。
俺たちはアーケディアの中枢にある法王庁へと足を運ぶことになるのだった。
◇◇◇
「ようこそ、アーケディアへ。私が法王のマルベーニである。……レックスは誰のことかな?」
「お、俺、いや、私です」
「そんなに構えることはない。普通に話して貰って構わないよ。それに、そうでなければ、本音を話すことも出来ないだろう?」
「それはそうかもしれませんけれど……。でも、そう言って貰えて嬉しいです。俺、こういうの苦手で」
「ははは。そう言って貰えると嬉しいよ。……さて、立ち話も何だ。会議室を開けてある。そこで話をしようじゃないか、天の聖杯である君とも話をしたいと思っているからね」
「……私はあなたと話をしようなんてこれっぽっちも思っちゃいないんだけど」
「ははは。手痛い言葉だね」
マルベーニさんの言葉に従って、俺たちは法王庁の奥にある会議室へと向かうのだった。