ゼノブレイド2 the Novelize   作:natsuki

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第三十三話 謁見②

 会議室は広々としていて、俺たちが全員座っても未だ有り余る椅子が並べられていた。

 

「……さて、先ずは何から話そうか」

 

「どうして、俺たちを呼んだんですか?」

 

「……確かに、その話からするべきか。答えは簡単だよ。『天の聖杯』のドライバーである君に一度会いたかったんだよ。何せ、私も同じ『天の聖杯』のドライバーだからね」

 

「同じ天の聖杯の……」

 

 ふっと、一瞬。

 

 マルベーニさんの顔にメツの顔がちらついた。

 

 顔をぶんぶんさせると、その顔は直ぐにマルベーニさんに戻った。

 

「? どうかしたのかね、少年?」

 

「レックスで良いです。……いや、何でもありません」

 

 言ったところで信じてくれないと思う。俺はそう思った。

 

「……天の聖杯って、メツのことですか?」

 

「ああ、そうだ。私は世界樹からコアクリスタルを回収し、同調した。そして、彼は自らをメツと名乗った。そしてそのコアクリスタルを手に入れたとき、目の前に『彼』が姿を見せた」

 

「それが、アルヴィース……?」

 

 こくり、とマルベーニさんは頷く。

 

「アルヴィースは二つの世界を常に観測者の立場として観測していた。二つの世界はそれぞれ出逢うこともなければ、一緒になることもない。しかし、アルヴィースだけは、『調和』をモチーフにした存在だからか、往来することが出来るのだという。彼のブレイドであるKos-Mos:Reも同じらしい。どういう原理なのかはさっぱり分からないがね」

 

「確かに不思議な存在だとは思っていたし、彼自身もそんなことを言ってた気がするけど……」

 

「だから、彼のことはあまり気にしなくて良い。彼自身も言っていることなんだが、彼はあくまでも世界に『干渉』はしない。観測者に過ぎないのだと言っているんだ」

 

「干渉はしない……」

 

 それじゃ、まるで何もしないような言い回しに聞こえるけれど、だったらどうしてこの世界にわざわざやってきたんだ?

 

「ところで……君たちは『楽園』に行きたいようだね。世界樹の中にあると言う、あの場所へ」

 

「マルベーニ聖下は行ったことが?」

 

「いいや、生憎私は行ったことはないよ。そんなものがあるとは夢にも思ったことがないからね」

 

「そうだったんですね……」

 

「そうだ。君たちに見せたい人間が居る」

 

 マルベーニさんは立ち上がると、会議室の出口へと向かった。

 

「ついてきたまえ、君たちに会わせたい人物が居る」

 

 その言葉に、俺たちは従うことしか出来ないのであった。

 

 

   ◇◇◇

 

 

「聖杯大戦という言葉をご存知かな?」

 

 こつこつ、と階段を降りる音が響き渡る。

 

「ええと……五百年前に起きたと言われているものですよね。詳しくは知らないですけど」

 

「そうだ。そこで彼は三つの国を滅ぼした。そのうちの一つに、イーラという国があった。イーラは『黄金の国』と言われる国家だった。紋章は黄金で彩られ、首都にも黄金が散りばめられていたという」

 

 


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