ゼノブレイド2 the Novelize 作:natsuki
会議室は広々としていて、俺たちが全員座っても未だ有り余る椅子が並べられていた。
「……さて、先ずは何から話そうか」
「どうして、俺たちを呼んだんですか?」
「……確かに、その話からするべきか。答えは簡単だよ。『天の聖杯』のドライバーである君に一度会いたかったんだよ。何せ、私も同じ『天の聖杯』のドライバーだからね」
「同じ天の聖杯の……」
ふっと、一瞬。
マルベーニさんの顔にメツの顔がちらついた。
顔をぶんぶんさせると、その顔は直ぐにマルベーニさんに戻った。
「? どうかしたのかね、少年?」
「レックスで良いです。……いや、何でもありません」
言ったところで信じてくれないと思う。俺はそう思った。
「……天の聖杯って、メツのことですか?」
「ああ、そうだ。私は世界樹からコアクリスタルを回収し、同調した。そして、彼は自らをメツと名乗った。そしてそのコアクリスタルを手に入れたとき、目の前に『彼』が姿を見せた」
「それが、アルヴィース……?」
こくり、とマルベーニさんは頷く。
「アルヴィースは二つの世界を常に観測者の立場として観測していた。二つの世界はそれぞれ出逢うこともなければ、一緒になることもない。しかし、アルヴィースだけは、『調和』をモチーフにした存在だからか、往来することが出来るのだという。彼のブレイドであるKos-Mos:Reも同じらしい。どういう原理なのかはさっぱり分からないがね」
「確かに不思議な存在だとは思っていたし、彼自身もそんなことを言ってた気がするけど……」
「だから、彼のことはあまり気にしなくて良い。彼自身も言っていることなんだが、彼はあくまでも世界に『干渉』はしない。観測者に過ぎないのだと言っているんだ」
「干渉はしない……」
それじゃ、まるで何もしないような言い回しに聞こえるけれど、だったらどうしてこの世界にわざわざやってきたんだ?
「ところで……君たちは『楽園』に行きたいようだね。世界樹の中にあると言う、あの場所へ」
「マルベーニ聖下は行ったことが?」
「いいや、生憎私は行ったことはないよ。そんなものがあるとは夢にも思ったことがないからね」
「そうだったんですね……」
「そうだ。君たちに見せたい人間が居る」
マルベーニさんは立ち上がると、会議室の出口へと向かった。
「ついてきたまえ、君たちに会わせたい人物が居る」
その言葉に、俺たちは従うことしか出来ないのであった。
◇◇◇
「聖杯大戦という言葉をご存知かな?」
こつこつ、と階段を降りる音が響き渡る。
「ええと……五百年前に起きたと言われているものですよね。詳しくは知らないですけど」
「そうだ。そこで彼は三つの国を滅ぼした。そのうちの一つに、イーラという国があった。イーラは『黄金の国』と言われる国家だった。紋章は黄金で彩られ、首都にも黄金が散りばめられていたという」