ゼノブレイド2 the Novelize   作:natsuki

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第三十八話 謁見⑦

「……時間だ、サタヒコ、ベンケイ!」

 

 シンの言葉を聞いて、サタヒコとベンケイは穴から出て行く。

 

「待て! お前達には未だ聞き足りないことが山ほど」

 

「へえ? 山ほど、ねえ」

 

「ああ、そうだ。お前達は何故……何の為に、『世界樹』に登ろうとしているんだ!?」

 

「それはそこに居るもう一人の天の聖杯にも言える話じゃねえのか? なあ、ヒカリ」

 

「……あんたに言われたくないわよ、メツ!」

 

 ヒカリとメツは目線を逸らそうとはしない。

 

 二人にいったいどんな因縁があったのかなんて、今聞けるような時間じゃない気がする。

 

 そもそも、ヒカリが滅ぼしたというイーラにメツが関係があるのか?

 

 そもそも、そのイーラと今のイーラに関係性はあるというのか?

 

 俺は、頭の中がごちゃ混ぜになってしまうような感覚に陥る。

 

「……とにかく、俺達はおさらばするとしようぜ、シン!」

 

「…………ああ、そうだな」

 

 最後に、シンは俺に向かってこう言った。

 

「少年。二度目だ。……全てを知りたければ、テンペランティアに来い」

 

 

 

    ◇◇◇ 

  

 

 

 その直後。

 

 テンペランティアにあった、巨神獣兵器の一つが。

 

 ゆっくりと動き出していく。

 

 それにはヨシツネが乗り込んでいた。

 

「それにしても、こんな大きな巨神獣兵器を操れるなんて夢にも思いませんでしたよ……」

 

「えー? でもそこまで気にしていないように見えるけれどー?」

 

 言ったのはカムイだった。

 

 カムイの言葉を聞いて、ヨシツネはゆっくりと頷く。

 

「さあ、始めましょうか。シン達がやってくるまでの間に、一暴れ!!」

 

 

 

 

 そして。

 

 そして。

 

 そして、だ。

 

 

 

 

 巨神獣兵器は、ゆっくりと動き出す。

 

 スペルビアとインヴィディアの休戦地帯となっている、彼の地に。

 

 一体のイレギュラーが動き始める――!

 

 

 

 

      ◇◇◇

 

 

 

「追え! 追いかけるんだ!!」

 

 マルベーニさんの言葉は、何処か血気盛んのような感じがした。

 

 まるでメツかシンに、何か探られたくないことでもあるかのように――。

 

「聖下、大変です!」

 

「どうした。今度は何が起きたというのだ!」

 

 マルベーニさんの言葉に、敬礼をした兵士は、話を続ける。

 

「……テンペランティアにて、一体の巨神獣兵器が暴走を開始。インヴィディア側のキャンプ地に向かっているとの報告を受けています! スペルビア側は事態を把握しておらず、このままではインヴィディアとスペルビアの戦争が勃発する可能性があるかと……!」

 

「何だと……!?」

 

 マルベーニさんの表情が苦悶に満ちた表情へと変わっていく。

 

 メツが言っていたあの話。あれが本当だとすれば……!

 

「マルベーニ聖下!」

 

「今度は何だ!」

 

「その……。事件とはまったく関係ありませんが……。テンペランティアの統治会議で、スペルビア代表のメレフ特別執権官様と、インヴィディアのラゲルト女王陛下が到着なされました!」

 

「何だと、このタイミングで……。いや、寧ろこのタイミングが好機と言えるか。未だトップの耳には入っていないのだろうからな。分かった、私が出よう」

 

 マルベーニさんは一瞬で表情を冷静沈着なものにして、ゆっくりと動き始めた。

 

 俺達も、それを追いかけていく。

 

 それが国を揺るがす大きな事件へと発展していくことには、俺達は未だ分からなかった。

 

 




第四章 完

第五章「戦」に続く。

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