「……ここは?」
俺が目を覚ますと、そこは草原だった。
俺は、確かシンに体を貫かれて……。
「ってことは、ここは…………天国?」
参ったな。天国ってこんなに広い場所なのか。しかも誰も居る気配がしないし。
強いて言えば、さっきからたまに鳴り響く鐘の音……。
「……ん?」
見ると、高台の上に大きな木が生えている。
そしてよく見ると……人? 人が立っているように見えた。
「あれは、いったい……?」
誰なんだろう。
なぜそこに居るのだろう。
俺はそう思って、そこへ走って行く。
その答えを知りたくて。
その言葉を知りたくて。
高台の上、その木の傍には、『彼女』が立っていた。
彼女は、あの棺で眠っていた、あの彼女だった。
「君は……」
「私の名前は、ホムラ」
「あ、えーと、俺の名前は……」
「知っています。……レックス、でしょう?」
俺が答えるよりも先に、ホムラは言った。
「え、なんで知っているの?」
「あなたがあの剣に触れたとき、あなたの情報が入ってきたから」
ああ、そうなんだ。
「ところで、ここはいったいどこなの?」
「ここは……楽園」
「楽園…………楽園! この場所が……!」
緑豊かな大地。
遠くには教会だろうか。何か建物が見える。そしてその周囲に広がるのは、見たこともないくらい高層の建造物だ。
ここが楽園……。楽園は、ほんとうにあったんだ……。
「でも、ここは私の記憶の中の楽園。だから、あなたの世界の楽園じゃない」
「そっかあ……。でも、少しだけ、希望が持てたよ。楽園はやっぱり素晴らしいところなんだな、って」
……あれ? 何か忘れているような……。
「ああっ! まずい、シンのことをすっかり忘れてた! あいつら絶対ウズシオのみんなを殺すつもりだ。そうに違いない! 急いで知らせないと…………ああっ、でも俺死んでるんだったああああ!! どうすれば……!」
「レックス、方法なら、あります」
ホムラの言葉を聞いて、俺は思わずホムラの両肩を触りながら、
「ええっ。どうやって?」
「私の命を、半分あなたにあげます」
ホムラは、自分の胸にある十字架にも似たクリスタルを指さした。
たぶん……だけど、それは、コアクリスタル。ブレイドの核とも言われるもので、仮にドライバーが死んでしまったとしてもブレイドはコアクリスタルに戻り、実質永遠にその命を生き長らえさせることができる、と聞いたことがある。
ということは、彼女もまた、ブレイドということだ。
でも、今その姿を現出させているということは、同調したドライバーが居るはずだけど……。
「だから、私のドライバーになってください。天の聖杯の、ドライバーに」
天の聖杯――ホムラが入った棺を抱えて外に出るメツ。
それをウズシオ乗組員は興味のまなざしで眺めるものも居れば、なぜレックスが居ないのか疑問を浮かべるものも居る。
それが、メツは気にくわなかった。
「おい、ニア」
ニアはレックスが死んでからずっと俯いていた。
そしてそれはメツの言葉を聞いてもなお、続いていた。
「ニア。……こいつらを殺せ」
顔を上げ、抗議するニア。
「何でだよ、こいつらを殺す必要なんて、無いじゃんか」
「俺たちにはあるんだよ。……既にこいつらの命に相当する金額はアヴァリティアのノポンに支払っている。だから、こいつらを殺すことで計画が成功するわけだ。その役目をおまえにやってもらおうというわけだよ。分かるか?」
「でも、こいつら……何もしてないじゃんか。何で殺さなきゃ……」
「ああ、もう面倒くせえっ!」
メツは天の聖杯が入った棺を置く。
「俺がやるわ。……ニア、おまえはビャッコと一緒にこの棺をモノケロスに運べ」
そして、メツがウズシオ乗組員達の居る場所へ向かおうとした――そのときだった。
天の聖杯が入った棺が、炎上した。
「なにぃ!」
メツは驚き、棺を見る。
しかし棺は完全に焼失し、そこには誰も居ない。
そして炎だけその場に残り、その炎は古代船の屋根へ移動する。
炎はゆっくりと消え、その姿が露わになる。
「……ようやくお目覚めかよ、ホムラぁ!」
メツは咆哮する。
その声に呼応するように、古代船の甲板から――天の聖杯の剣を構えたレックスが姿を現した。
そして、レックスは言った。
「後ろから狙うなんて卑怯じゃないか」