ゼノブレイド2 the Novelize   作:natsuki

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第四十三話 シン

 高台から飛び降りた先、それはつまり巨神獣兵器だった。追いつくことばかり考えていたけれど、巨神獣兵器には平らな空間が設置されている。つまり――船でいうところの艦橋みたいな空間だ。

 そして、そこには動力源。

 そして、それを守るかのように――或いは、俺達が来るのを待ち構えていたかのように――シンは立っていた。

 

「来たか、少年。……いや、レックス」

「初めて名前で呼んでくれたようで良かったよ」

「感心している場合かよ?」

 

 ニアは諦めているようなそんな感じで俺に言った。

 ニアの気持ちも分かる。ニアからしてみれば――シンは、かつての仲間であり現在の敵だ。

 複雑な心境であることは、分かっている。

 分かっているけれど……、今はただ気になることがある。

 

「なあ、シン。一つだけ聞いても良いか?」

「……何だ?」

「あんたは、何を知っているんだ? 何故、イーラという組織を?」

「……何も考えずに進んでいるものとばかり考えていたが。今回の天の聖杯の持ち主は、少しは頭が回るようだな」

 

 シンは笑みを浮かべて、呟くように言った。

 今回の? ――ということは、俺より前にホムラと一緒に過ごした――ブレイドとして過ごした人間が居る、ということなのか?

 

「ブレイドは、死ぬたびに記憶を失う――悲しい生き物だよ。いや、そんな生き物は生き物と呼べるのかさえ怪しい。そんなブレイドを解放する――こんな仕組みを作っている創造主への反乱として」

 

 創造主――。

 

「ブレイドは確かに、そういう存在だ。死んでしまえば記憶を失い、また新たに1から生きていく……。同調した人間が死んでしまったら、今までの関係は零になってしまう。ブレイドとは、そういう存在だ――」

「でもさ、ブレイドと人間は――」

「それは仮初めの関係に他ならない。それとも、レックス、お前は分かっていると断言出来るのか? ブレイドがどういう状況に置かれて、どうやっていけば良いのかという解決案を……持っていると、断言出来るのか?」

「それは……」

 

 持っていない。

 持っていると言える訳がない。

 ブレイドの存在は、俺達が生まれる遙か昔から――それこそ創造主と言える存在が作り上げた、世界のシステムの根幹だ。

 そんなものを、変えていこうだなんて――烏滸がましいとすら思える。

 しかし、当事者からしてみれば、変えたいと思うのは当然なのかもしれない。

 それでも。

 そうだとしても。

 

「レックス。天の聖杯が何を齎すか、どれほどの力を持ち合わせているか……お前はまだ、それを理解していない。だからこそ、そうやって悩み藻掻く。違うか?」

 


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