ゼノブレイド2 the Novelize 作:natsuki
高台から飛び降りた先、それはつまり巨神獣兵器だった。追いつくことばかり考えていたけれど、巨神獣兵器には平らな空間が設置されている。つまり――船でいうところの艦橋みたいな空間だ。
そして、そこには動力源。
そして、それを守るかのように――或いは、俺達が来るのを待ち構えていたかのように――シンは立っていた。
「来たか、少年。……いや、レックス」
「初めて名前で呼んでくれたようで良かったよ」
「感心している場合かよ?」
ニアは諦めているようなそんな感じで俺に言った。
ニアの気持ちも分かる。ニアからしてみれば――シンは、かつての仲間であり現在の敵だ。
複雑な心境であることは、分かっている。
分かっているけれど……、今はただ気になることがある。
「なあ、シン。一つだけ聞いても良いか?」
「……何だ?」
「あんたは、何を知っているんだ? 何故、イーラという組織を?」
「……何も考えずに進んでいるものとばかり考えていたが。今回の天の聖杯の持ち主は、少しは頭が回るようだな」
シンは笑みを浮かべて、呟くように言った。
今回の? ――ということは、俺より前にホムラと一緒に過ごした――ブレイドとして過ごした人間が居る、ということなのか?
「ブレイドは、死ぬたびに記憶を失う――悲しい生き物だよ。いや、そんな生き物は生き物と呼べるのかさえ怪しい。そんなブレイドを解放する――こんな仕組みを作っている創造主への反乱として」
創造主――。
「ブレイドは確かに、そういう存在だ。死んでしまえば記憶を失い、また新たに1から生きていく……。同調した人間が死んでしまったら、今までの関係は零になってしまう。ブレイドとは、そういう存在だ――」
「でもさ、ブレイドと人間は――」
「それは仮初めの関係に他ならない。それとも、レックス、お前は分かっていると断言出来るのか? ブレイドがどういう状況に置かれて、どうやっていけば良いのかという解決案を……持っていると、断言出来るのか?」
「それは……」
持っていない。
持っていると言える訳がない。
ブレイドの存在は、俺達が生まれる遙か昔から――それこそ創造主と言える存在が作り上げた、世界のシステムの根幹だ。
そんなものを、変えていこうだなんて――烏滸がましいとすら思える。
しかし、当事者からしてみれば、変えたいと思うのは当然なのかもしれない。
それでも。
そうだとしても。
「レックス。天の聖杯が何を齎すか、どれほどの力を持ち合わせているか……お前はまだ、それを理解していない。だからこそ、そうやって悩み藻掻く。違うか?」