ゼノブレイド2 the Novelize 作:natsuki
黄金の国イーラ カグツチ外伝 第一話
イーラ。
誰も居ない世界。
誰も居ない国。
そして、わたしだけが残る。
わたしは『わたし』の記憶として、未来のカグツチに記憶を残すためのものとして。
わたしが書いた日記というのは、ずっと、永遠に残され続けている。
――――これは、わたしの物語。
◇◇ ◇◇ ◇◇
「はっ!」
「カグツチ! ここはサポートに徹しろ!」
「しかし、ユーゴ様……」
「王の命令は、絶対!」
ガキン! 剣と剣のぶつかる音がこだまする。
言ったのは、ワダツミだった。
「敵が――多すぎる!」
「天の聖杯……、彼はいったいどのような存在だというのですか……!」
はるか彼方で笑みを浮かべる男。
その笑み一つだけで、恐怖すら感じさせる。
天の聖杯、メツ。
アーケディアの助祭、マルベーニが『世界樹』から持ち帰ってきたコアクリスタルから同調したと言われている――ブレイド。
しかし、わたしたちのようにドライバーである――彼の場合ならば、マルベーニだろう――の意思に逆らい、破壊と殺戮を繰り返している。
それが、わたしにとっては信じられなかった。
それが、わたしにとっては信じがたいものだった。
天の聖杯といっても、コアクリスタルから同調したのならば、ただのブレイドである。
しかし――これほどの力。
いったいどこから供給され続けているのだろうか?
「来るよ、カグツチ!」
ユーゴ様が攻撃を躱す。
わたしはそれを見て慌てて炎の攻撃を敵にぶつける。
敵――といっても、生きているのか死んでいるのかすら分からないその『獣』といってもいい存在は、我々スペルビア軍を数で圧倒した。
はじめ彼らはイーラがけしかけてきたのだと思った。イーラは科学力では新興国である我々スペルビアを圧倒している。
しかしながら、この『獣』はイーラにも攻撃を仕掛けているらしい。……ならば、これはいったい何だというのか?
天の聖杯を残した『神』は、我々にいったい何を試練たらしめようとしているのか?
「――カグツチ! 危ない!」
そんなことを考えていると、わたしの背後から獣が襲いかかってきた。
炎をチャージしても間に合わない……!
「シン、やるよ!」
「……やれやれ、ラウラはいつも首を突っ込みたがる」
「あら? シンもそういうのは嫌いじゃあないと思っていましたけれどっ!」
しかし、それを防いだのは、三人の人間だった。
いや――エーテルの流れからして、ラウラと呼ばれた少女は人間で、残りはブレイド――だろうか?
それにしてもドライバーとうり二つのブレイドなんて聞いた話がない。
それにもう一人――のブレイドは、冷たい目をしている。
「……行くぞ、ラウラ! チェインアタックだっ!!」
そして。
あっという間に獣を圧倒した彼らは、敵を倒していくのだった。