ゼノブレイド2の小説的な何か   作:natsuki

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第四十四話 シン②

 

 分かっている。

 ニアの気持ちも。

 ホムラの気持ちも。

 そして、シンの気持ちも。

 少なくとも、分かったつもりではいる。

 だからこそ。

 

「なあ、シン。一つだけ聞かせてくれ」

 

 俺は剣を下ろした。

 すると、

 

「レックスっ!?」

 

 ニアが慌てたような声を上げる。

 

「何やってるんだよ!」

「戦う前に聞きたいことがあるんだ」

 

 そう言って俺はシンを見る。

 シンは少しだけ目を細めた。

 

「……何だ?」

「あんたは、何を知っているんだ?」

 

 その瞬間だった。

 シンの表情が僅かに変わった。

 怒りでもない。

 敵意でもない。

 どちらかと言えば――呆れ。

 そんな感情だった。

 

「知ってどうする」

「知りたいんだ」

「何故だ」

「だって、おかしいじゃないか」

 

 俺は言った。

 

「俺たちは楽園を目指してる」

「……」

「でも、あんた達も世界樹を目指してる」

「……」

「だったら目的は同じなんじゃないのか?」

 

 沈黙。

 しばらくして。

 シンは小さく息を吐いた。

 

「同じではない」

「どうして?」

「俺たちは楽園など信じていない」

「え?」

 

 思わず間の抜けた声が出た。

 楽園を信じていない?

 じゃあ何で世界樹に向かうんだ。

 

「……レックス」

 

 シンは静かに言う。

 

「お前は楽園を見たことがあるか?」

「いや」

「なら何故信じる」

「それは……」

 

 答えようとして。

 言葉が止まる。

 何故だろう。

 考えたこともなかった。

 楽園がある。

 だから行く。

 ずっとそう思っていた。

 

「ホムラが言ったからか?」

「それは……」

 

 違う。

 いや、違わない。

 確かにホムラが言った。

 楽園へ行きたいと。

 だから俺は。

 

「俺は――」

「それで十分だ」

 

 シンが言った。

 まるで会話を打ち切るように。

 

「誰かを信じること自体は間違いじゃない」

「……だったら!」

「だが」

 

 その声は冷たかった。

 

「信じることと、何も知らないことは違う」

 

 空気が張り詰める。

 その言葉に。

 俺だけじゃない。

 ホムラも反応した。

 

「シン……」

「お前はまだ話していないのか」

「……」

「五百年前のことを」

 

 ホムラは答えない。

 いや。

 答えられないのかもしれない。

 シンはそんなホムラを見て、

 

「変わらないな」

 

 そう呟いた。

 

「何の話だよ」

「お前には関係ない」

「関係ある!」

 

 思わず叫んでいた。

 シンが少しだけ目を見開く。

 

「ホムラのことなら関係ある!」

「……」

「俺はホムラのドライバーなんだ!」

 

 静寂。

 風が吹く。

 遠くで巨神獣兵器の駆動音だけが響いている。

 やがて。

 シンは俺を見た。

 真っ直ぐに。

 どこか試すような目で。

 

「なら聞こう」

「え?」

「お前は何のために楽園へ行く」

「何のためって……」

 

 決まっている。

 ホムラのためだ。

 そう答えようとして。

 何故か言葉が止まった。

 その瞬間。

 シンが僅かに笑った。

 初めて見た。

 シンが笑うところなんて。

 

「答えられないか」

「違う!」

「なら答えろ」

「俺は――」

 

 そのときだった。

 

「そこまでだ、シン」

 

 聞き覚えのある声。

 次の瞬間。

 紫色の光が空を裂いた。

 轟音。

 衝撃。

 俺たちは反射的に距離を取る。

 そして。

 巨神獣兵器の中央。

 そこに立っていたのは。

 

「メツ!」

 

 黒いコアクリスタル。

 余裕の笑み。

 そして。

 圧倒的な存在感。

 

「せっかく面白くなってきたのによ」

 

 メツは肩を竦めた。

 

「その辺にしとけ」

「……」

 

 シンは黙る。

 

「レックスだったか?」

 

 メツは笑う。

 

「お前、本当に何も知らねえんだな」

 

 その言葉に。

 俺は拳を握り締めた。

 

「だったら教えろよ!」

「ははっ」

 

 メツは笑った。

 

「教えてほしいのか?」

「……」

「なら自分で確かめな」

 

 そして。

 メツは世界樹の方角を見た。

 遥か彼方。

 雲海の向こう。

 天を貫く光の柱。

 

「答えは全部、あそこにある」

 

 その瞬間。

 メツの表情から笑みが消える。

 

「もっとも」

 

 そして。

 静かに。

 まるで世界そのものを憎むような声で。

 

「知ったところで、絶望するだけだがな」

 

 その言葉だけが。

 妙に胸に引っ掛かった。

 

 

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