ゼノブレイド2の小説的な何か   作:natsuki

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第四十七話 五百年前の亡霊③

 

 その日の夕方。

 俺たちはテンペランティア北部にある遺跡地帯へ辿り着いていた。

 巨大な石柱。

 崩れた建造物。

 地面に半ば埋もれた金属の残骸。

 どこか異質な場所だった。

 まるで。

 ここだけが別の時代に取り残されたような。

 

「不思議な場所ですわね」

 

 カグツチが辺りを見回す。

 

「テンペランティアにも遺跡は多いですが、これほど保存状態の良いものは珍しいです」

「昔の戦争の跡か?」

 

 俺が尋ねると、メレフが頷いた。

 

「その可能性は高い」

 

 そう言いながら崩れた壁へ触れる。

 

「五百年前の聖杯大戦では、この辺りも激戦区だったと伝えられている」

 

 五百年前。

 またその言葉だ。

 最近になって、やたらと耳にする。

 ホムラは何も言わない。

 ただ静かに遺跡を見つめていた。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 遺跡の内部は薄暗かった。

 ところどころ壁が崩れ、天井から光が差し込んでいる。

 その中を慎重に進む。

 

「何か変だも」

 

 トラが足を止めた。

 

「変?」

「ここ、巨神獣の中なのに変な感じするも」

 

 確かに。

 言われてみれば妙だった。

 自然に出来た空洞というより、誰かが造った施設に近い。

 石造りなのに。

 どこか機械みたいな印象がある。

 

「……」

 

 ホムラが足を止める。

 その視線の先。

 崩れた壁面に大きな石碑があった。

 

「ホムラ?」

 

 呼びかける。

 しかし返事はない。

 ホムラはゆっくり近付き、

 石碑の表面を指先でなぞった。

 

「読めるのか?」

「少しだけ」

 

 静かな声。

 

「古いイーラ文字です」

 

 そして。

 しばらく文字を追った後、小さく目を伏せた。

 

「追悼碑……」

「追悼碑?」

「聖杯大戦で亡くなった人々の名前が刻まれています」

 

 空気が静まる。

 誰も口を開かない。

 ホムラだけが石碑を見つめていた。

 まるで。

 遠い昔を見ているようだった。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 その夜。

 遺跡の一角で野営をしていた時だった。

 俺は目を覚ました。

 理由は分からない。

 ただ何となく眠れなかった。

 焚火の方を見る。

 そこにはホムラがいた。

 一人で火を見つめている。

 皆を起こさないよう、そっと近付こうとして――。

 やめた。

 ホムラの横顔が。

 あまりにも寂しそうだったから。

 

「ラウラ……」

 

 小さな声が聞こえた。

 俺は思わず足を止める。

 ラウラ。

 シンのドライバー。

 ホムラ達の仲間だった人。

 

「ごめんなさい……」

 

 ホムラが呟く。

 風が吹く。

 炎が揺れる。

 そして。

 もう一つ。

 別の名前を口にしかけて。

 やめた。

 そのままホムラは目を閉じる。

 まるで。

 今もどこかで生きている誰かの無事を祈るように。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 一方その頃。

 テンペランティア北西部。

 誰も近付かない断崖地帯。

 そこに一つの小屋があった。

 粗末な造りだ。

 けれど丁寧に手入れされている。

 小屋の前には花壇。

 色とりどりの花が咲いていた。

 夜風に揺れている。

 その中の一輪へ、誰かの手がそっと触れた。

 白く細い指。

 だが姿は見えない。

 月明かりも届かない場所だった。

 

「……」

 

 微かな吐息。

 それだけ。

 そして静寂が戻る。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 翌朝。

 出発の準備をしていた時だった。

 

「レックス」

 

 ホムラが声を掛けてきた。

 

「ん?」

「昨日、変な夢を見ませんでしたか?」

 

 思わず固まる。

 燃える空。

 白い光。

 世界の終わりみたいな景色。

 

「何で知ってるんだ?」

 

 ホムラの表情が僅かに曇った。

 

「やはり……」

「ホムラ?」

「いえ」

 

 首を振る。

 だが。

 その顔はどこか不安そうだった。

 

「急ぎましょう」

 

 そして世界樹の方角を見る。

 

「私達には、確かめなければならないことがあります」

 

 その言葉の意味を。

 この時の俺はまだ知らなかった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 五百年前。

 聖杯大戦の最後に起きたこと。

 ラウラが遺した願い。

 そして。

 誰も知らないもう一つの再会が、少しずつ近付いていることを。

 

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