ゼノブレイド2の小説的な何か   作:natsuki

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第四十九話 五百年前の亡霊⑤

 翌朝。

 目が覚めても、夢の内容は消えなかった。

 普通なら忘れているはずなのに。

 ラウラの顔。

 シンの顔。

 あの草原。

 あの夕日。

 全部が妙にはっきりしている。

 

「レックス?」

 

 ホムラが不思議そうな顔をした。

 

「大丈夫ですか?」

「え?」

「少し顔色が悪いです」

 

 そう言われて初めて気付く。

 昨夜はほとんど眠れなかった。

 

「大丈夫だよ」

 

 そう答えたものの。

 本当は大丈夫じゃなかった。

 夢の最後。

 確かに誰かが言った。

 

 

 ――助けて。

 

 

 あれは誰だったんだろう。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 遺跡群を抜けた頃。

 トラが突然立ち止まった。

 

「どうした?」

「何かあるも」

 

 耳をぴくぴく動かしている。

 その先を見る。

 崖の下。

 半ば土砂に埋もれた巨大な構造物があった。

 

「船……か?」

 

 違う。

 船に似ている。

 だがどこか違う。

 巨神獣文明のものとも思えない。

 

「こんな技術体系は見たことがありません」

 

 カグツチが呟く。

 メレフも珍しく眉をひそめていた。

 

「アーケディアにも記録は無い」

 

 全員で近付く。

 金属だ。

 しかも。

 何百年も放置されていたとは思えないほど頑丈だった。

 

「不思議だな」

 

 俺が触れた瞬間だった。

 

 

 ――ピッ。

 

 

 小さな音。

 全員が固まる。

 

「今の何だ?」

「レックス!」

 

 ホムラが叫んだ。

 次の瞬間。

 壁面が青白く光る。

 見たことのない文字。

 見たことのない映像。

 そして。

 知らない都市。

 空を飛ぶ乗り物。

 巨大な建造物。

 人、人、人。

 見たこともない世界。

 

「何だよ……これ」

 

 誰も答えられない。

 映像は数秒で消えた。

 静寂だけが残る。

 

「今の……」

 

 ニアが呟く。

 

「巨神獣の上じゃなかったよね?」

 

 俺もそう思った。

 あれは。

 アルストじゃない。

 少なくとも今の世界ではない。

 まるで。

 全く別の世界だった。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 その日の夜。

 ホムラは一人で眠れずにいた。

 焚火の火が小さく揺れている。

 視線は世界樹の方向。

 その瞳には不安があった。

 

「やはり始まっていますか……」

 

 誰にも聞こえない声。

 昨夜。

 レックスが見た夢。

 そして今日。

 遺跡で起きた現象。

 偶然ではない。

 そんな気がしていた。

 

「レックス」

 

 小さく名前を呼ぶ。

 今眠っている少年を。

 

「あなたは一体……」

 

 言葉は続かない。

 アデルの面影はない。

 性格も違う。

 生き方も違う。

 なのに。

 時々。

 どうしようもなく重なって見える。

 

「困りましたね」

 

 ホムラは苦笑した。

 

「本当に」

 

 その時だった。

 風が吹く。

 焚火が揺れる。

 そして。

 一瞬だけ。

 ホムラの隣に誰かが座っているように見えた。

 金色の髪。

 金色の瞳。

 もう一人の自分。

 だが。

 次の瞬間には消えていた。

 

「まだですよ」

 

 ホムラは静かに言う。

 

「もう少しだけ待ってください」

 

 返事はない。

 当然だ。

 けれど。

 ホムラには分かっていた。

 眠っているわけではない。

 ずっと見ている。

 ずっと待っている。

 もう一人の天の聖杯が。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 一方。

 世界樹へ続く別ルート。

 シン達もまた進んでいた。

 珍しく。

 シンの足が止まる。

 

「どうした?」

 

 メツが振り返る。

 シンは答えない。

 ただ。

 遠くを見る。

 そこには何もない。

 荒野しかない。

 しかし。

 シンの表情が僅かに変わった。

 

「……」

 

 驚き。

 戸惑い。

 そして。

 安堵。

 一瞬だけ。

 本当に一瞬だけ。

 そんな感情が浮かんだ。

 

「気のせいか」

 

 そう呟く。

 だが。

 その声には迷いがあった。

 五百年。

 そんなはずはない。

 あるはずがない。

 なのに。

 今。

 確かに懐かしい気配を感じた。

 

「シン?」

「何でもない」

 

 歩き出す。

 だが。

 無意識に胸元へ手が伸びていた。

 そこには。

 古い花飾りがしまわれていた。

 

 

 

 

 そして。

 誰も知らない場所で。

 一輪の白い花が風に揺れる。

 まるで。

 遠い再会の日を待つように。

 

 

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