ゼノブレイド2の小説的な何か   作:natsuki

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第五十話 予言の残響

 

 その遺跡は、地図に載っていなかった。

 テンペランティア北東部。

 世界樹へ続く古い街道から少し外れた場所。

 崖の中腹にぽっかりと口を開けた洞窟。

 最初に見つけたのはビャッコだった。

 

「妙な気配がしますね」

 

 珍しく警戒した声だった。

 だから俺たちは中へ入ることにした。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 

 洞窟は思ったより深かった。

 そして。

 不自然だった。

 

「またか……」

 

 俺は思わず呟く。

 壁面は石。

 だが所々に金属が埋め込まれている。

 しかも錆びていない。

 まるで誰かが今も整備しているみたいだった。

 

「この辺りの遺跡は全部こんな感じなのか?」

「いや、聞いたことはないな」

 

 メレフが首を振る。

 

「私も初めて見る」

 

 やがて。

 通路の先に大きな空間が現れた。

 円形の部屋。

 中央には台座。

 その周囲を無数の柱が囲んでいる。

 

「神殿……?」

 

 ニアが呟く。

 だが。

 何か違う。

 宗教施設というより。

 機械の内部に近かった。

 その時だった。

 俺の胸が熱くなる。

 

「っ!」

 

 思わず膝をついた。

 

「レックス!?」

 

 ホムラが駆け寄る。

 胸元。

 天の聖杯のコアクリスタルが淡く光っていた。

 

「何だこれ……」

 

 痛みではない。

 呼ばれている。

 そんな感覚だった。

 

「来なさい」

 

 突然。

 声が響いた。

 全員が周囲を見回す。

 しかし誰もいない。

 

「誰や!」

 

 ジークが叫ぶ。

 返事はない。

 だが。

 声は再び聞こえた。

 

「来なさい」

 

 今度はもっと近い。

 俺だけに聞こえているような気がした。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 気付くと。

 俺は台座の前に立っていた。

 いつ移動したのか分からない。

 仲間達の姿も見えない。

 真っ白な空間。

 音もない。

 光だけが広がっている。

 

「ここは……」

「久しぶりですね」

 

 声がした。

 振り返る。

 そこにいたのは。

 白い衣を纏った女性だった。

 長い髪。

 穏やかな表情。

 年齢はよく分からない。

 若くも見えるし。

 ずっと年上にも見える。

 

「誰だ?」

「その質問は二度目です」

 

 女性は微笑んだ。

 初めて会ったはずなのに。

 何故か懐かしい。

 

「会ったことあるのか?」

「あなたは覚えていません」

 

 女性は言う。

 

「まだ」

 

 その言葉に引っ掛かる。

 まだ?

 

「俺を知ってるのか?」

「知っています」

 

 即答だった。

 

「レックス」

 

 名前を呼ばれる。

 

「アデルの末裔」

 

 俺は息を呑んだ。

 メレフ達ならともかく。

 この女性が知っているはずがない。

 

「何者なんだ」

「私は観測者」

 

 女性は静かに言う。

 

「予言官」

 

 その名前を聞いた瞬間。

 脳裏にラゲルト女王の言葉が蘇った。

 未来を読む者。

 世界を見守る者。

 その存在。

 

 

     ◇◇◇

 

 

「あなたは夢を見ていますね」

 

 予言官が言う。

 

「……」

「五百年前の夢を」

 

 否定できなかった。

 誰にも話していないのに。

 

「ラウラの夢です」

 

 俺は目を見開く。

 

「やっぱり……」

 

 あれは。

 ただの夢じゃなかった。

 

「どうして俺が」

「今は答えられません」

「何でだよ!」

 

 思わず声が大きくなる。

 

「知るべき時が来ていないからです」

「そんなの――」

「ですが」

 

 予言官は続けた。

 

「一つだけ教えましょう」

 

 静かな声だった。

 

「あなたは選ばれています」

「選ばれた?」

「はい」

 

 そして。

 予言官は世界樹の方角を見る。

 

「五百年前に果たせなかった願いを」

 

 その瞳が少しだけ悲しそうに揺れた。

 

「もう一度、叶えるために」

 

 

     ◇◇◇

 

 

 その瞬間。

 景色が砕けた。

 光が消える。

 気付けば元の遺跡。

 仲間達が俺を囲んでいた。

 

「レックス!」

 

 ホムラの声。

 

「大丈夫ですか?」

「え?」

 

 どうやら一瞬だったらしい。

 だけど。

 俺の手には一枚の金属片が握られていた。

 見覚えはない。

 しかし。

 そこには古い文字が刻まれていた。

 そして。

 その中央には。

 見慣れた紋章が描かれていた。

 イーラ王家の紋章。

 

「何でこんなものが……」

 

 誰にも分からない。

 ただ一人。

 ホムラだけが表情を強張らせていた。

 まるで。

 その意味を知っているかのように。

 

 

 

 

 遠く。

 誰もいない断崖の上。

 一人の女性が空を見上げていた。

 白い花が風に揺れる。

 その視線の先には世界樹。

 そして。

 微かな微笑み。

 

「もうすぐですね」

 

 誰へ向けた言葉なのか。

 答える者はいなかった。

 

 

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