ゼノブレイド2 the Novelize 作:natsuki
第六話 トリゴ
「……ようし、取敢えず着いたで。ここがグーラや」
ジークの言葉を聞いて、俺たちは港に降り立った。
「いやあ、まさかそれにしてもあの船があった場所がグーラの近くとは……」
「そうですね、お嬢様。これはやはり惹かれているというか……」
「そっか。二人はグーラの出身なんだね。確かに耳がグーラ人の耳をしているし」
獣耳――それはグーラ人の特徴だ。
「問題は、ここからどうするかっちゅう話やけど……、取敢えず飯食いながら話したほうがええやろ。お互いに腹も減っているだろうしな」
「それもそうだね」
と、いうわけで。
俺たち三人とブレイドのみんなは、トリゴ商店街へと向かうのだった。
「ビヨンコネクタ……六百ゴールドも……」
店先で一人のノポンが財布と何かの部品の間で目線を移動させていた。
「でも手持ちは……一千ゴールド、あるにはあるけど、これは生活費……」
「お客さん。買うの、買わないの?」
「買えないも……。ごめんなさいも……」
とぼとぼと、ノポンは帰っていった。
「次は商品を買ってくださいよー!」
「……というわけで、天の聖杯というのはとても扱いが難しいものなんや。ボンが生き返ったっちゅうのも、その天の聖杯だからこそできる、イレギュラーなんやな」
エストラルステーキを頬張りながら、ジークは言った。
俺たちとジークはお互いに持っている情報を出し合った。情報交換、というわけだ。
ジークは法王庁――アーケディアに所属しているらしい。何でも天の聖杯が目覚める可能性があるから調査に行くよう、天啓があったらしい。
アーケディアの人間だから堅苦しいかと思っていたけれど……ジークの言葉遣いはどこか変で、それ以外もどこか変わっていた。覇王の心眼とか言っていたけれど、実はコンタクトを買うお金が無かったり、英雄アデルに憧れて英雄アデル焼きばかり食べているとか。まあ、全部ジークのブレイドであるサイカから聞いた話なんだけど。
「ボン。これからどうするつもりや? あの感じからして、もうアヴァリティアには近づかんほうがええで」
「そう……だよな」
アヴァリティアが依頼を受けた場所で、全員を殺すように命令があった。
つまりバーン会長は全員が死ぬことも、おそらくウズシオが沈むことも織り込み済みで今回の依頼を受けたに違いない。
「まあ、そういうわけでな。ワイが居るっちゅうわけやけど」
「どういうこと?」
「ボン。これからワイと一緒にアーケディアに行くで」
「あ、アーケディアに?」
「せや。マルベーニ猊下、名前だけなら聞いたことあるやろ? そのマルベーニ猊下がお前に会いたがってる。理由は……ああ、確かそこまで聞いてなかったな」
「聞いてなかったんやなくて、そこまで聞かなくて飛び出したんとちゃうん?」
「んなっ。言うなっ、サイカ」
ジークとサイカの漫才めいたやりとりはさておき。
「でもさ……俺、まだ解決していない問題があるからさ。それをなんとかしたいんだよ」
「ボン……。せやな……」
「「どうやって、ニアを救い出すかだよなあ……」」
二人の言葉は準備もしていないのに、シンクロするのだった。
時は、約三十分前に遡る――。