ゼノブレイド2の小説的な何か   作:natsuki

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第六十話 世界樹への第一歩

 

 

 翌朝。

 世界樹の根元には薄い霧が立ち込めていた。

 朝日を受けた巨木は黄金色に輝いている。

 まるで。

 世界そのものが彼らを見下ろしているようだった。

 

「よし」

 

 レックスが立ち上がる。

 

「行こう」

 

 仲間達が頷く。

 いよいよだ。

 楽園へ続く道。

 誰も辿り着けなかった場所。

 世界樹内部への探索が始まる。

 巨大な門を潜る。

 その瞬間。

 レックスは思わず息を呑んだ。

 

「何だこれ……」

 

 想像していた景色と違う。

 もっと木の中を進むものだと思っていた。

 だが。

 目の前に広がっていたのは。

 巨大な金属の通路だった。

 天井まで続く鉄骨。

 崩れた配管。

 無数の光。

 まるで古代文明の遺跡。

 

「木の中じゃないんか?」

 

 ジークも呆然としている。

 

「これは……」

 

 メレフが周囲を見渡す。

 

「建造物?」

「おそらく」

 

 ホムラが静かに答えた。

 

「世界樹の内部には、かつて人が築いた施設があります」

「人?」

「はい」

 

 その声は少し重かった。

 

「遥か昔の人々です」

 

 

     ◇◇◇

 

 

 進む。

 進むほど。

 違和感は強くなった。

 壁に刻まれた文字。

 見たこともない機械。

 巨大な昇降設備。

 レックス達の知るアルストとは全く異なる文明。

 

「何なんだよこれ」

 

 ニアも眉をひそめる。

 

「世界樹って、こんな場所だったのかい」

「私も詳しくは知りません」

 

 ホムラが答える。

 その表情は複雑だった。

 知っている。

 だが全ては知らない。

 そんな顔だ。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 昼頃。

 一行は広大な空間へ辿り着いた。

 吹き抜けになった巨大な施設。

 崩れた足場。

 遥か上方へ伸びる光の道。

 

「すげえな……」

 

 レックスが見上げる。

 その時だった。

 微かな眩暈。

 景色が揺れる。

 

「レックス?」

 

 ホムラが振り返る。

 

「大丈夫ですか?」

「いや」

 

 頭を振る。

 一瞬だけだった。

 だが。

 見えた気がした。

 白い部屋。

 無数の光。

 そして。

 誰かの声。

 

『――実験を開始します』

「……?」

 

 気付けば幻は消えていた。

 

「どうしたも?」

 

 トラが聞く。

 

「何でもない」

 

 そう答えるしかなかった。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 その頃。

 少し後方を歩いていたニアは胸元を押さえていた。

 苦しい。

 昨日から続いている違和感。

 身体の奥で何かが疼いている。

 

「……最悪だね」

 

 小さく呟く。

 抑え込めていたはずだった。

 ずっと。

 ずっと。

 隠してきたのに。

 世界樹へ入ってから妙だった。

 何かに呼ばれているような。

 力そのものが反応しているような。

 

「ニアさん」

 

 隣から声。

 ファンだった。

 

「……何だい」

「辛そうですね」

「別に」

 

 反射的に否定する。

 ファンは追及しない。

 ただ。

 静かに歩き続ける。

 

「大丈夫ですよ」

 

 やがて言った。

 

「無理に一人で抱えなくても」

 

 ニアは答えなかった。

 答えられなかった。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 夕方。

 一行は中継施設らしき場所へ到着した。

 今日はここで休むことになる。

 古びた金属の部屋。

 外敵も少ない。

 野営にはちょうど良かった。

 

「助かったなあ」

 

 ジークが腰を下ろす。

 

「流石に疲れた」

「同感だな」

 

 メレフも珍しく肩の力を抜いていた。

 そんな中。

 レックスだけは妙な違和感を覚えていた。

 誰かに見られている。

 そんな感覚。

 

「……?」

 

 振り返る。

 誰もいない。

 気のせいか。

 そう思った時、遠くの通路で何かが動いた。

 人影だった。

 一瞬だけ。

 本当に一瞬だけ。

 

「誰だ!」

 

 レックスが立ち上がる。

 全員が警戒する。

 だが。

 既に姿は消えていた。

 

「見間違いじゃないんか?」

 

 ジークが言う。

 

「いや」

 

 レックスは首を振る。

 確かに見た。

 誰かいた。

 こちらを見ていた。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 その夜。

 誰も知らない場所。

 世界樹のさらに上層。

 一人の男が静かに目を開いた。

 

「レックス」

 

 低い声。

 シンだった。

 目の前には監視装置。

 そこに映っている。

 世界樹へ踏み込んだレックス達の姿が。

 

「来たか」

 

 その声に感情はない。

 だが。

 胸の奥のざわめきだけは消えなかった。

 まるで。

 何かが変わろうとしているような。

 そんな予感だった。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 一方。

 眠りについたレックスは再び夢を見る。

 夕暮れの草原。

 ラウラ。

 ファン。

 いつもの二人。

 だが今日は違った。

 二人の表情が少しだけ緊張している。

 

「レックス」

 

 ラウラが言う。

 

「これから先」

「うん」

「あなたは選ばなきゃいけない」

「選ぶ?」

 

 意味が分からない。

 だが。

 ファンは静かに頷いた。

 

「大切な人のために」

「……」

「戦うのか」

 

 ラウラが言う。

 

「救うのか」

 

 ファンが続ける。

 その言葉だけを残して。

 夢は白く溶けていった。

 

 

 

 

 

 世界樹の奥で待つもの。

 それは真実か。

 あるいは運命か。

 そして。

 隠された秘密もまた。

 静かに限界へ近付いていた。

 

 

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