ゼノブレイド2の小説的な何か   作:natsuki

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第六十二話 もう隠せない

 

 

 轟音が世界樹の内部を揺らした。

 崩れた壁の向こうから姿を現した機械兵器は、ゆっくりと赤い単眼を光らせながらレックス達を見据えている。

 人の倍はあろうかという巨体。

 分厚い装甲。

 そして、両腕には巨大な砲身が備え付けられていた。

 

「何だよ……あれ」

 

 レックスが思わず息を呑む。

 

「昨日の奴らとは比べ物にならんぞ」

 

 メレフが剣を抜く。

 カグツチも炎を纏い、いつでも飛び出せる姿勢を取る。

 

「全員、散開!」

 

 その声と同時に。

 怪物が腕を持ち上げた。

 

「来るも!」

 

 トラが叫ぶ。

 次の瞬間。

 眩い閃光が通路を貫いた。

 轟音。

 衝撃。

 床が砕け、金属片が飛び散る。

 

「くっ!」

 

 レックスは身を翻して直撃を避ける。

 しかし。

 敵は止まらない。

 砲撃。

 突進。

 鋼鉄の拳が床を砕きながら迫る。

 

「ホムラ!」

「はい!」

 

 炎が奔る。

 爆炎が敵を包む。

 だが。

 煙が晴れると、その装甲にはほとんど傷が付いていなかった。

 

「硬いなぁ!」

 

 ジークが舌打ちする。

 

「これじゃ埒が明かんわ!」

 

 怪物が再び赤い瞳を輝かせる。

 その視線が止まった先。

 そこにいたのは。

 

「ニア!」

 

 レックスが叫ぶ。

 怪物は一直線にニアへ向かっていた。

 

「しまっ――」

 

 ニアが構える。

 だが。

 身体が動かない。

 昨日から続く違和感。

 世界樹へ入ってから激しくなる胸の痛み。

 力が上手く巡らない。

 

「くっ……!」

 

 ビャッコが飛び出す。

 しかし。

 間に合わない。

 巨大な腕が振り下ろされる。

 

「ニア!」

 

 ガキィンッ!

 金属音が響く。

 レックスだった。

 聖杯の剣で怪物の一撃を受け止めている。

 

「ぐっ……!」

 

 重い。

 今まで戦ってきたどの敵よりも重い。

 足元の床が軋み、靴が滑る。

 

「レックス!」

 

 ホムラが駆け寄ろうとする。

 だが。

 その瞬間。

 怪物の胸部が開いた。

 

「何だ?」

 

 内部から光が集まる。

 

「しまった!」

 

 ホムラの表情が変わる。

 

「レックス! 離れてください!」

 

 間に合わない。

 光が——一直線にレックスへと放たれる。

 避けられない。

 そう思った、その瞬間。

 

「レックス!」

 

 誰かが背中を押した。

 身体が弾き飛ばされる。

 光が通り過ぎる。

 代わりに。

 その直撃を受けたのは。

 

「ニア!」

 

 レックスの叫びが響いた。

 ニアの身体が吹き飛ぶ。

 壁へ叩き付けられる。

 

「ニア様!」

 

 ビャッコが駆け寄る。

 レックスも立ち上がる。

 

「何やってんだよ!」

 

 ニアは苦しそうに笑った。

 

「だって……」

 

 息が乱れる。

 

「放っとけ……ないだろ」

 

 その笑顔は痛々しかった。

 

「ニア!」

 

 レックスが抱き起こす。

 服が破れ、肩口が露わになる。

 そして。

 その拍子だった。

 胸元まで裂けた服の奥から。

 淡い黄金色の光が漏れた。

 

「……え?」

 

 レックスの視線が止まる。

 胸の中央。

 そこには。

 見慣れた結晶が埋め込まれていた。

 コアクリスタル。

 

「ニア……」

 

 誰も動かなかった。

 ホムラも。

 メレフも。

 ジークも。

 ビャッコでさえ。

 静まり返る。

 

「見ちゃったね」

 

 ニアは力なく笑った。

 もう隠せない。

 そう諦めたような笑顔だった。

 

「……ごめん」

 

 小さく呟く。

 

「ずっと黙ってて」

 

 レックスは何も言えない。

 頭が追い付かない。

 

「ニア……お前」

「そうだよ」

 

 ニアは静かに頷く。

 

「……あたしは」

 

 そこで言葉が途切れる。

 胸のコアクリスタルが激しく明滅を始めた。

 

「なっ……!」

 

 ニア自身が驚く。

 身体中を光が駆け巡る。

 苦しそうに胸を押さえる。

 

「うっ……!」

「ニア!」

 

 ファンが駆け寄る。

 その表情は険しかった。

 

「抑え込めなくなっています」

「何だって?」

「世界樹の力に共鳴しています」

 

 ホムラが息を呑む。

 

「まさか……」

 

 怪物が再び動く。

 赤い瞳が光る。

 今度こそ。

 ニアへ照準を合わせる。

 

「対象確認」

 

 無機質な声が響く。

 

「高エネルギー反応」

「排除開始」

 

 巨大な砲身が展開される。

 レックスが剣を構える。

 だが。

 間に合わない。

 その時だった。

 ニアのコアクリスタルが眩く輝く。

 金色の光。

 部屋中を満たすほどの、温かな光だった。

 ファンはその光を見つめ、小さく微笑む。

 

「ようやく……」

 

 誰にも聞こえないほど小さな声。

 

「その時が来たのですね」

 

 次の瞬間。

 光は世界樹の内部すら飲み込むほどに膨れ上がった。

 

 

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