ゼノブレイド2 the Novelize   作:natsuki

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第七話 カグツチ

「そういや、ニアはイーラの人間なんか?」

「イーラ?」

「シンやメツたちの所属する団体の名前だよ。国境を気にすること無く、自由に動くことのできる組織。その目的は……公には謎だって言われている。コアクリスタルを大量に奪ったりしているけれど、正直シンの目的は私にも分からない」

「……せやったか。いや、アーケディアは永世中立を誓っているが、イーラに関しては敵対していてな。本当なら、イーラの情報を少しでも貰うことができれば、少しはニアがイーラの人間じゃなくなると思ったからな」

「でも……あそこは私の居場所だったよ」

「やりたくないことを、無理矢理やらされようとしても……か?」

 

 ジークの問いに、ニアは何も答えられなかった。

 

「ま。別にええんや。兎に角アーケディアに向かってもし何か言われたらワイが証言したるから安心しとき。取敢えずは一度グーラで休憩してからアーケディアへ向かおうやないか。ちょうど巨神獣も居る訳やしな」

「待て、そこの獣耳の女」

 

 背後から声が聞こえる。俺たちは振り返った。

 そこに居たのは兵士だった。兵士達は俺たちを一瞥して、やがてニアの顔を見つめる。

 

「……指名手配中のイーラのメンバー、まさかトリゴに来ているとはな。それにしても指名手配されているにもかかわらず、堂々と入ってくるとは」

「ちょっと待てって! こいつはイーラやったかもしれんが、今はイーラの人間やない! 心を入れ替えたんや」

「お前は誰だ」

「ワイはジークや。アーケディアの特使をしとる」

「そんな変な言葉遣いのアーケディア人が居るか! お前も虚偽罪で逮捕する!」

「なんでこんなことになるんや……!」

 

 背中の大剣を構えながら、ジークはつぶやく。

 

「ジークに悪霊でも取り憑いているんちゃうん? ……ま、そんなこと気にしてる場合やあらへんね!」

 

 そうして、俺たちは攻撃を開始しようとした――ちょうどそのときだった。

 

「五月蠅いわねえ、日記を読むのに、興がそがれるじゃない」

 

 冷たい、声が聞こえた。

 その声を聞いた途端、慌てだしたのは相手――つまりスペルビアの兵士だった。

 スペルビアの兵士は、慌ててその方向に身体を向けると、大きくわざとらしく敬礼する。

 そのカフェテラスには、一人の女性が座っていた。

 青いドレスを着た女性は、ハードカバーの本(確か日記と言っていた)をテーブルに置くと、その兵士たちを見つめる。

 

「いったい何か起きたのかしら。説明して貰える?」

「ははっ。実は、あちらに居る少女が指名手配中のイーラのメンバーで御座いまして、声をかけたところ反乱の意思が見えたためこちらも攻撃をしようと……」

「ふうん」

「そ、それにしてもカグツチ様……、いったいどうしてグーラのような辺境に……」

「休暇よ。グーラは本国と違っていつも蒸気が出ているような場所でもないし。それに、メレフ様と会う約束もしていますからね」

「め、メレフ様が!」

「おい、ボン。何だか面倒なことになっているうちに逃げるで」

 

 ジークがスペルビア兵士とカグツチと名乗った女性の会話を見ながら、俺たちに言った。

 確かに、逃げるなら今しかない。

 そう思って俺たちは武器をしまうと、ゆっくりと歩き始め――。

 

「あら。逃げていいなんて一言も言っていないけれど」

 

 

 ――どこからともなく、俺たちの目の前に青い炎の楯が姿を見せた。

 

 

「あ、あちちっ!」

「くそうっ。そう簡単にはいかんもんやなあ!」

 

 ジークは再び武器を構えようと、そして俺も剣を出そうとした――そのときだった。

 

「待って、みんな」

「ニア!」

 

 ニアが一歩、前に踏み出した。

 

「お嬢様、いったい何を」

「あんたたちの狙いは私だけだろ? だったら、私だけを連れて行けばいい。こいつらは関係無い」

 

 ニアの言葉に俺は反論しようとした。

 だが、それよりも早くカグツチは何か――おそらく俺の態度を――読み取ったのか、

 

「分かったわ。それじゃ、連れて行ってちょうだい。そして明日、メレフ様がやってくるから戦艦に乗せておきましょう」

 

 そうしてニアは兵士に連れ去られていく。

 

「ニア!」

 

 ニアは兵士に連れて行かれるところで、一歩足を止めた。

 

「いいんだよ、これで。もともと私は日陰者だ。これでいい。イーラのことが悪い行為をしている集団だということは知っていたし、それを止めなかった私も悪い。だから、これは私が受けるべき罰なんだよ」

「ほら! 早く歩け!」

 

 そうして、ニアは兵士達に連れ去られていく。

 周囲も人々が見ていたが、兵士達が消えていくと同時にゆっくりとちりぢりになっていった。

 

 


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