ゼノブレイド2 五百年の約束   作:natsuki

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第七十六話 繋がる意志

 

 

 轟音が響く。

 聖杯の剣とメツの大剣が正面からぶつかり合い、白と紫の光が管理区画いっぱいに弾け飛んだ。

 衝撃だけで床が砕ける。

 吹き荒れるエーテルの奔流が、周囲の機器を次々と破壊していく。

 

「まだだぁぁぁっ!」

 

 レックスは雄叫びを上げながら剣を押し込む。

 しかし。

 

「甘ぇ」

 

 メツは鼻で笑った。

 片腕だけで剣を受け止め、そのまま力任せに振り払う。

 凄まじい衝撃。

 レックスの身体は宙を舞い、何度も床を跳ねながら壁へ叩きつけられた。

 

「レックス!」

 

 ホムラが叫ぶ。

 拘束されたまま必死にもがくが、紫色の鎖はびくともしない。

 

「お願い……!」

「もう、やめてください……!」

「こんなもんか」

 

 メツはゆっくり歩き出す。

 倒れたレックスの前へ立つと、肩へ担いでいた大剣を静かに下ろした。

 

「期待してたんだけどな」

 

 冷たい声だった。

 

「結局、お前もそこらの人間と変わらねぇ」

 

 レックスは返事をしない。

 いや。

 出来なかった。

 全身が悲鳴を上げている。

 腕も。

 脚も。

 もう思うように動かない。

 

「ほら」

 

 メツは剣先を向ける。

 

「立てよ」

「……」

「それとも終わりか?」

 

 レックスはゆっくりと顔を上げた。

 視界が滲む。

 血が流れ込んでいるのか、片目はほとんど見えない。

 それでも。

 遠くにホムラの姿が見えた。

 泣いている。

 五百年間、自分を責め続けてきた少女が。

 今も。

 自分のせいだと思って泣いている。

 

「……違う」

 

 小さく呟く。

 これは。

 ホムラのせいじゃない。

 誰のせいでもない。

 だから。

 立たなければならない。

 

「レックス!」

 

 ニアが叫ぶ。

 その声に、レックスは僅かに顔を向ける。

 ニアは拳を握り締めていた。

 瞳には涙が滲んでいる。

 

「立ちな!」

 

 その声は震えていた。

 

「そんな所で終わる奴じゃないだろ!」

 

 レックスは苦笑する。

 

「ニア……」

「約束したじゃん!」

 

 涙を拭いながら叫ぶ。

 

「みんなで帰るって!」

「ホムラも!」

「あたしも!」

「みんな!」

「置いていかないって!」

「そうだも!」

 

 今度はトラだった。

 

「レックスなら勝てるも!」

「トラ信じてるも!」

「レックス!」

 

 ジークが豪快に笑う。

 

「こんな所で寝てる暇があるかい!」

「立て!」

 

 メレフも静かに剣を掲げる。

 

「君なら出来る」

「私は信じている」

 

 レックスはゆっくりと笑った。

 

「みんな……」

 

 不思議だった。

 痛みは消えていない。

 身体も重い。

 なのに。

 立てる気がした。

 いや。

 立たなければと思えた。

 

「一人じゃねぇんだよな」

 

 小さく呟く。

 剣を支えに身体を起こす。

 膝が震える。

 それでも。

 立ち上がる。

 

「へぇ」

 

 メツは笑った。

 

「やっぱ面白ぇな」

 

 レックスは剣を構える。

 その瞳から迷いは消えていた。

 

「俺は」

 

 静かに言う。

 

「お前みたいに強くはない」

「知ってる」

「シンみたいに速くもない」

「それも知ってる」

「でも」

 

 聖杯の剣が蒼く輝き始める。

 

「一人じゃない」

 

 その瞬間。

 ホムラのコアクリスタルが共鳴した。

 続いて。

 ニアの胸元から黄金色の光が漏れ始める。

 誰もまだ気付いていない。

 だが。

 その光は先ほどよりも遥かに強く輝いていた。

 シンは静かに目を細める。

 

「メツ」

 

 低く呟く。

 

「……何だ」

「もう終わりだ」

 

 メツが振り返る。

 

「何?」

「俺達の旅は」

 

 その言葉に。

 メツの表情から笑みが消えた。

 

「シン。お前……」

 

 長い沈黙。

 そして。

 シンはゆっくり刀を抜く。

 その切っ先は。

 レックスではなく。

 メツへ向けられていた。

 

「これ以上、未来を歩こうとする者の邪魔はさせない」

 

 ファンは静かに目を閉じる。

 五百年。

 ようやく。

 本当にようやく。

 シンは、自分自身の意志で未来を選んだ。

 

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