ゼノブレイド2 五百年の約束   作:natsuki

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第七十九話 三つの光

 

 

 黄金の光が管理区画を優しく照らしていた。

 ニアの放つエーテルは、暴風のように荒れ狂うメツの力とは対照的に、傷付いた者たちの身体を静かに癒やしていく。

 レックスは拳を握った。

 さっきまで鉛のように重かった身体が、少しずつ軽くなっていく。

 

「ありがとな、ニア」

 

 振り返る。

 ニアは照れくさそうに笑った。

 

「あとで一発殴るからね」

「えぇ?」

「黙って無茶した分」

「勘弁してくれよ」

「嫌」

 

 短いやり取り。

 それだけで、張り詰めていた空気が少しだけ和らぐ。

 

「……まったく」

 

 シンは小さく息を吐いた。

 

「戦場とは思えんな」

 

 その呟きに、レックスは笑う。

 

「だから勝てるんだ」

「何?」

「笑える奴の方が強いって、俺は思う」

 

 シンは返事をしなかった。

 だが、どこかラウラを思い出すように、小さく目を細める。

 

「終わったか?」

 

 メツが大剣を肩へ担ぎ直す。

 その顔から笑みは消えていた。

 

「だったら来い」

 

 紫色のエーテルが再び噴き上がる。

 管理区画の床が軋み、巨大な亀裂が蜘蛛の巣のように広がっていく。

 レックスは聖杯の剣を構えた。

 その隣へニアが並ぶ。

 さらに。

 シンが静かに刀を抜く。

 黄金。

 蒼。

 白銀。

 三つの光が一直線に並んだ。

 

「面白ぇ」

 

 メツは獰猛に笑う。

 

「ようやく役者が揃ったか」

「レックス」

 

 シンが低く呟く。

 

「俺が正面を引き受ける」

「分かった」

「ニア」

「任せて」

 

 三人の返事は、それだけだった。

 だが。

 十分だった。

 シンが駆ける。

 凍気を纏った一閃がメツを襲う。

 メツは大剣で受け止める。

 

「甘ぇ!」

 

 轟音。

 火花が散る。

 そこへ。

 

「はぁっ!」

 

 レックスが横から飛び込む。

 聖杯の剣が蒼白い軌跡を描き、メツの脇腹を狙う。

 

「ちっ!」

 

 大剣を引き戻して受ける。

 だが、その一瞬。

 

「そこだよ!」

 

 ニアの光が弾けた。

 黄金色のエーテルがメツの動きを束の間だけ鈍らせる。

 

「今だ!」

 

 レックスとシンが同時に踏み込む。

 蒼い剣。

 白銀の刀。

 二つの刃が十字に閃く。

 鈍い音。

 メツの身体へ初めて深い傷が刻まれた。

 

「やるじゃねぇか……!」

 

 メツは傷口を押さえながら笑う。

 その笑みは怒りではない。

 歓喜だった。

 

「これだ!」

「こうでなくちゃ面白くねぇ!」

 

 紫色のエーテルが爆発する。

 衝撃波が三人を吹き飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

 レックスが膝をつく。

 シンも床を滑り、刀を突き立ててようやく勢いを殺した。

 ニアだけは立ったまま、黄金色の光を絶やさない。

 その姿を見たメツは、初めて僅かに眉をひそめた。

 

「その力……」

「ラウラの……」

 

 思わず漏れたその言葉に。

 シンの瞳が揺れる。

 メツもまた、ラウラの光を忘れてはいなかった。

 

「メツ」

 

 シンがゆっくり立ち上がる。

 

「お前は言ったな」

 

 刀を構える。

 

「人は変われないと」

「そうだ」

「なら」

 

 シンは静かに笑った。

 本当に、ほんの少しだけ。

 

「俺は変わった」

 

 メツの表情が固まる。

 

「お前……」

「五百年掛かった」

 

 レックスを見る。

 ファンを見る。

 ホムラを見る。

 そして。

 ニアを見る。

 

「だが」

「ようやく答えが見つかった」

 

 その言葉を聞いたファンは、静かに目を閉じた。

 長かった。

 本当に長かった。

 五百年。

 シンは、ようやくラウラへ胸を張れる場所まで歩いてきたのだ。

 その時だった。

 クラウスが静かに目を見開く。

 

「レックス!」

 

 声を上げる。

 

「気を付けなさい!」

「彼はまだ、本当の力を残している!」

 

 メツは笑った。

 

「さすが創造主」

 

 ゆっくりと両腕を広げる。

 紫黒のエーテルが天井へ向かって渦を巻き始める。

 

「なら見せてやる」

「俺達が選んだ」

「最後の答えを!」

 

 管理区画全体が紫色に染まる。

 その圧倒的な力を前に、レックスは聖杯の剣を握り締めた。

 アルストの運命を懸けた決着の時が、ついに訪れようとしていた。

 

 

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