「……さてと、腹拵えも済ませたとこやし、さっさと突入したるか。んで、ニアを救わんとな」
「ちょ、ちょっと待ってよ。一応、ジークはアーケディアの特使なんでしょ? だったらその力を使って……」
「どあほう。それをさっき使って失敗したやないか。それに、あのカグツチっちゅうブレイドが絡まないうちにさっさと突入して逃げるに越したことはないで」
「カグツチ? 知っているのか、あのブレイドを」
「あれはスペルビアの宝珠と呼ばれる特別なブレイドだも!」
気づけば一つの空席にノポンが一人座っている。
「ええと……どちら様?」
俺は思わず質問をすると、ノポンは胸を張って答える。
「トラはトラだも! アニキたちがいろいろとブレイドをつれているから気になってついてきたんだも」
「……あんなあ、トラと言ったか。だからって怪しい集団についていったらあかんで?」
「自分で怪しい集団と言うのか……」
ジークは冗談のつもりで言っているのだろうが、確かに男だけのドライバーに女性ブレイドが二人並んでいて、怪しまないほうがおかしい。さっきの騒動を見ている人が居ないとも限らないし、できることならこんな表通りでの会話すらも避けるべきだった。
トラの話は続く。
「アニキたちは、あの戦艦の中に入ろうとしているも?」
「何ぃ。会話を聞かれていたのか」
「別に聞くつもりは無かったも。ただブレイドがかっこよくてついてきただけだも!」
それはそれでどうかと思うが。
「トラならあの戦艦に入れる方法を知っているも。だから、トラと一緒に居れば簡単に、それに兵士に見つかること無く戦艦には入れるも!」
それを聞いて耳を疑った。
正直、ニアを救う上で一番大変だと思うのが、戦艦への侵入方法だった。戦艦はトリゴ基地内に保管されており、侵入するためには基地に入るしか無かった。しかし基地は堅牢な壁で覆われており、壁を上るか正門の兵士をなんとかするしか無い。いずれにせよ騒ぎになるのは間違いない――そんな消極的な判断をとっていたのだ。
しかし、トラというノポンの言葉の言うとおりならば、兵士に見つかるリスクを減らせるのは大変ありがたい。できることならこの意見に乗るべきかと思うが――。
「それは、間違いやないやろうな? 実はスペルビア軍のスパイで、ワイらを捕まえようとしているとか」
「そんなこと思っているも? それに、トリゴの人間はスペルビア軍にはあまり良い印象を抱いていないも。スパイなんてやってたらトリゴで肩身の狭い思いをするしか無いも」
「それも、そうか……」
ジークは頭をかいて、そして右手を差し出した。
「それは済まんかったな。騙すつもりは無いと思ってたんやけど、やっぱり確認しておく必要があったからな。で? 流石に何も無しでそれを教えるとは思わないが? あまあまういんな十本とかか?」
「もももっ! それも捨てがたいけれど……違うも! トラと一緒に、あるブレイドを完成させてほしいも」
「あるブレイド?」
「トラはドライバーじゃないも。だから戦力にははっきり言ってならないも。けれど、そのブレイドを無事に運用させることができれば、すごい力になること間違いなしだも。だから、ビヨンコネクタを三つ購入してほしいも!」
「どうする、ボン。決めるのはお前や。お前が正面突破でド派手な戦闘を望んでいるなら、ここでこのノポンとの会話を打ち切っても構わへんし。それは任せる」
「……うん、そうだね。でもやっぱり、楽に進める方が良いんじゃ無いかな」
答えはもう既に決まっていた。
「支払うよ、トラ。ビヨンコネクタの代金を。そして、そのブレイドの完成を俺たちで見届けよう」
「ありがとうだもー!」
そうして、俺たちはビヨンコネクタを買いに行くことになるのだが――雑貨店でそのビヨンコネクタの値段に目を丸くしたのは、また別の話。