ゼノブレイド2 the Novelize 作:natsuki
「ここがトラの家だも。ちょっと散らかっているかもしれないけれど、そこは目をつぶってほしいも」
「ちょっと……?」
トラの家ははっきり言ってゴミ屋敷同然のような感じになっていた。足の踏み場も無ければ、虫も湧いていそうなゴミ袋がたくさん。ただし、ある箇所だけは綺麗に保たれている。
「……これは?」
そこに、一人の少女が屹立していた。
いや、少女と言って良いのだろうか。彼女には生気が見られなかった。
「アニキ、良いところに目をつけたも。これこそが、機械仕掛けのブレイド、人工ブレイドのハナだも!」
「じ、人工ブレイドやとぉ?」
トラの言葉に一番大きい反応を示したのはジークだった。
「そんなもん完成したらとんでもないことになるやろがい! アーケディアや、スペルビアや、ルクスリアだって人工ブレイドの研究を躍起になって進めているのに、お前さんみたいな個人研究者が、たった一人で? 人工ブレイドを形にした? そんなもんが発表されれば世界がひっくり返ってしまうわ!」
「トラ一人じゃないも。もともとはじいちゃんが開発を進めていたも。だから三代。もっともお父さんはどこかに居なくなってしまったけれども……」
「トラ……」
俺も親が居ない。だから少しトラに共感出来る部分があるのかもしれない。
そんなことを思いながら、人工ブレイド――ハナを眺めた。
少女型のメタリックボディをしたそれは、胸に花びらをつけている。おそらく名前の由来はそれだろう。
「……で? まだこの子眠っているようだけれど」
「それは、まだ工程が終わっていないからだも。ビヨンコネクタとこの前手に入れたかんぺき測距センサを使うことで完成するんだも。ええと、これをそこにつけて、これをあそこにつけて………………完成も!」
「早っ!」
「あとはスイッチを押せば完成だも! さあ、目覚めろ、はなああああ!」
トラがスイッチを思い切り押した。
そして、同時にトラの家の電灯が消えた。
…………あれ? ブレーカーが落ちたか?
「もしかして、失敗したんとちゃうんか?」
「い、いや、そんなはずはないも」
「電気が足りひんのやら、うちも手伝うで~」
サイカは手から電気をパチパチを出しながら、そう言った。
「い、いや、電気は足りているはずだも。だからこそブレーカーが落ちたんだも。あとは、ええと、何だろうも……」
「じゃじゃーんっ!」
「!」
「もっ!」
第三者の声が聞こえて、俺たちは目を丸くする。
しばらくして電灯が復活すると、そこにはハナの姿があった。
両手両足を広げた彼女は、俺たちが見えるようになるのを見計らって、
「人工ブレイドのハナですもっ♡ よろしくお願いします、お兄ちゃん♡」
「お、お兄ちゃん…………?」
「ももーっ! 妹モードがONになっていたもーっ! ちょっと待っても、直ぐにシャットダウンしてモードを削除するも!」
数分後、再びハナが起動すると丁寧語の彼女は先ほどの記憶を覚えておらず、まるでさっきのことは夢だったんじゃないか、と思わせてしまうほどの変わりようだった。