ゼノブレイド2 五百年の約束   作:natsuki

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第九十一話 旅の終わり

 

 世界が変わってから、一か月が過ぎた。

 雲海は姿を消し、巨神獣たちは静かに大地の一部となった。

 人々は戸惑いながらも、新しい世界での暮らしを始めている。

 これまで海によって隔てられていた国々は、一つの大地で繋がり、人々は新たな街道を築き始めていた。

 戦争のためではない。

 互いを知り、助け合うための道だった。

 

 

     ◇◇◇

 

 

 港では、トラが新しい船の整備に夢中になっていた。

 

「ここの推進機構を改良すれば、もっと遠くまで航海できるも!」

 

 工具を片手に目を輝かせる。

 その隣ではハナが静かに設計図を広げていた。

 

「航行性能は二十三パーセント向上します」

「いいも!」

 

 トラは嬉しそうに頷く。

 

「これからは戦うためじゃないも!」

「世界中の人を繋ぐ船をいっぱい作るも!」

 

 ハナは穏やかに微笑んだ。

 

「はい」

「きっと素敵な船になりますも」

 

 

     ◇◇◇

 

 

 ルクスリアでは、瓦礫の撤去が進んでいた。

 

「思ったより壊れちまったなあ」

 

 ジークが腕を組みながら苦笑する。

 その隣で、サイカも静かに街を見渡していた。

 

「でも」

「皆、前を向いているようやで」

「ああ」

 

 ジークは笑う。

 

「だったらワイらも前を向くしかねぇなあ」

「今度は」

「守るための王様になるんや」

 

 サイカは優しく微笑んだ。

 

「そのお手伝いはするで」

「もちろん」

「ずっと」

 

 

     ◇◇◇

 

 

 メレフは帝国の執務室で書類に目を通していた。

 机の上には各国との共同復興計画。

 交易路の整備。

 移住支援。

 新たな行政区画。

 以前なら考えられなかった書類ばかりだった。

 

「特務長」

 

 部下が声を掛ける。

 

「アヴァリティア商会より共同港湾建設の提案です」

 

 メレフは静かに頷く。

 

「承認しよう」

「これからは」

「国境を守るだけでは足りない」

「国同士を繋ぐ時代だ」

 

 

     ◇◇◇

 

 

 夕暮れ。

 レックスの船は、新しい港へ静かに停泊していた。

 潮風が吹く。

 船首ではニアが海を眺めている。

 

「静かだね」

「そうだな」

 

 レックスも隣へ立つ。

 

「旅が終わると」

「こんなに静かなんだ」

「終わっちゃったね」

 

 ニアは少し寂しそうに笑う。

 レックスは首を横へ振った。

 

「終わってない」

「俺達は」

「今から始まるんだ」

 

 その言葉に。

 ニアも自然と笑みを浮かべた。

 

「……そうだね」

 

 

     ◇◇◇

 

 

 少し離れた場所では。

 ホムラとヒカリが並んで夕焼けを眺めていた。

 

「こうして」

 

 ホムラが静かに言う。

 

「別々に景色を見る日が来るなんて思いませんでした」

 

 ヒカリは照れ臭そうに肩を竦める。

 

「私も」

「でも」

 

 レックスへ視線を向ける。

 

「悪くない」

「ええ」

 

 ホムラも微笑む。

 

「とても素敵な未来です」

 

 

     ◇◇◇

 

 

 そして。

 船首に立つファンは、新しい世界を静かに見つめていた。

 風が髪を揺らす。

 遠くには、どこまでも続く緑の大地。

 

「ラウラ様」

 

 小さく呟く。

 

「シンさん」

「世界は」

「ちゃんと未来へ進み始めました」

 

 その時。

 

「ファーン!」

 

 レックスが船尾から大きく手を振る。

 

「飯だぞー!」

 

 思わず笑みが零れる。

 

「はい!」

 

 元気よく返事をして駆け出す。

 その背中は軽かった。

 もう彼女は五百年前へ囚われたブレイドではない。

 新しい世界を生きる、一人の仲間だった。

 

 

 

 

 旅は終わった。

 だが。

 未来は、ここから始まる。

 それが、レックスたちが辿り着いた、本当の『楽園』だった。

 

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