393に転生しました   作:ヨロシサン製薬

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その2 我が道を行く393

僕は道を切り開く、とか積極的に行動する、とかいった行為を苦手としている。

そのため、この世界の原作そのままに沿って流されたいと思っていた。

だから別に走るのが好きでもないのに小学校の頃から陸上を続け、中学校でも陸上部に所属したし、特に短距離走とやり投げに力を入れている。

 

しかし、ある日ふと気づいてしまった。

原作沿いに行くためには、中学2年生となってますます元気に可愛く成長した響を地獄に落とさなくてはならないということに。

 

14歳の響は、僕から2ヶ月後に迫ったツヴァイウイングのライブに誘われる。

しかし当日、僕は親戚の不幸かなにかでドタキャンする。

そのライブでノイズが発生し、響はギリギリで一命を取り留める。

そしてその事件が原因で、中学時代の響は陰湿なイジメにあうのである。

 

今の響はツヴァイウイングに興味がなかったはずなので、僕さえ響を誘わなければ簡単にその事件を回避出来る。

しかしその事件があるから響は体内にガングニールの破片を宿したわけで、つまりそれを回避してしまえば響はストーリーに関わらない一般人となる。

 

この世界では、本当にモブがあっさりと死ぬ。

おそらく響は物語の最序盤で子供を庇って、そのまま覚醒することなく死ぬことになるだろう。

 

では将来の響のために、今の響を地獄に落とすべきなのか。

それを成すには、もう僕は響と仲良くなりすぎてしまっていた。

 

「何か、別の手段を考えないと……」

「どうしたの、未来?」

「響を幸せにする方法を考えてたんだよ」

「エヘヘ、私は未来がそばにいてくれるだけで幸せだよー」

 

相変わらず「エヘヘ」が「ウェヒヒ」に聞こえるスペシャルボイスだった。

この笑顔が見られなくなるという時点で、ライブ回避は確定である。

ライブ回避が確定な以上、その先の問題は多岐に渡る。

前述の響死亡フラグも個人的には大問題だが、月の破壊が成功してしまえば人類全体の大問題である。

なにせ人類の8,9割が死亡するとかウェル博士が言っていたような気がする。

どうにか響という主戦力を抜きにして大団円を迎えられないだろうか。

 

「でも未来、最近ホントに悩んでない? 私じゃ頼りにならないかもだけど、相談して欲しいな」

「相談……」

「そうだよ、3人寄れば猫の手も借りたいって言うでしょ」

「文殊の知恵だよ、響」

「そうそう、それそれー」

 

相談か。

確かに発想力が貧困な僕一人で悩んでいても、何も浮かばない。

ならば僕の持っている原作知識を、OTONAに丸投げしてしまえばいいのではないだろうか。

確か風鳴司令は「突起物」と揶揄される組織のボスで、リディアン音楽院の地下に基地があったはずだ。

しかし僕にそんな偉い人と直接会えるコネなどあるわけない。

しかもそのすぐそばには、ラスボスである櫻井了子が存在している。

下手に接触すれば、現世から一発退場である。

 

「響、なんのコネもなく偉い人に会う方法ってないかな」

「えーっと、お手紙を出すとか?」

「手紙だと検閲みたいなので誰かに見られちゃうよ」

「誰かに見られたらまずいの?」

 

まずいのは櫻井了子に手紙が渡った場合だ。

櫻井理論を発表し、シンフォギアの権威である櫻井了子の組織内での権力は高い。

その彼女に手紙の存在が知られれば、そのまま握り潰すことは容易だろう。

 

原作から考えても、櫻井了子は色々なことに嘴を突っ込んでいたイメージがある。

手紙が風鳴司令まで届く前に、彼女にインターセプトされる可能性は高いように思える。

「しないフォギア」の暁切歌のように、一見暗号に見える謎ポエムで「てがみ」を作成すべきだろうか。

 

いや、そうじゃない。

逆に考えるんだ。

「見せちゃってもいいさ」と考えるんだ。

そうすれば、道は拓ける。

 

「ありがとう、響。いいアイデアを思いついたよ」

「そっかー、役に立てて良かったよー。何の話か全然わかんないけど」

「お礼に今日の放課後、クレープ奢ってあげる」

「あれー、部活はいいの?」

「うん、今日はずる休み」

「めっずらしー。でも未来と一緒に帰るの、久しぶりだね。嬉しい!」

「久しぶりに心がすっきりしたから、そのお礼だよ。本当にありがとう、響」

 

それにこの計画がうまくいけば、きっと僕のやり投げも必要なくなる。

 

 

 

 

 

 

響と放課後デートをした後、家についた僕は「小説家になっちゃいなよ」というサイトを開き、ユーザー登録を行った。

もちろん小説を投稿するためだ。

 

題名は「戦姫絶唱シンフォギア」である。

 

原作知識については、小学生の頃から何度も何度も思い出しては記録してきたため、物語の骨子は完璧だ。

後は多少の肉付けをすれば、小説として読めるような作品に仕立てられるだろう。

つまり櫻井了子だけに読まれるのがまずいのであれば、不特定多数に全公開してしまおうという作戦である。

 

この物語はフィクションですと前書きしつつ、登場人物は響や僕を含めてすべて実名である。

ここがこの計画の肝で、響が主人公から脱落しても完全なモブキャラとならないようにすることで、約束された死亡フラグを回避する狙いなのだ。

もちろんこの小説をアップロードすることにより新たな死亡フラグが設置される可能性はあるが、死亡率100%のフラグよりもマシだし、なにより響よりもこの小説を書いた僕の方が狙われる可能性が高いだろう。

 

確かに今世には執着しているが、響を守るためなら僕の命は使い切ってもいい。

それが確定していたはずの響の生存ルートを、ただのエゴで潰してしまう僕の責任の取り方だと思う。

 

僕の小説が未来予知の類であると判断されれば、その小説の主人公である響がガングニールの適合者になりうると思われるはずだ。

黒幕の櫻井了子さえどうにかなれば、2課はまともな組織だったと思う。

きっと響を保護してくれるだろう。

そして僕の小説の信憑性は、2ヶ月後に行われるツヴァイウイングのライブが証明してくれる。

 

最初はそれを証明するために、ライブ当日に1期分の小説を一気に投稿しようと思っていた。

しかしそれをすれば、必然ライブでは櫻井了子が呼び出したノイズによって多数の犠牲者が出ることになる。

さすがにそれは寝覚めが悪いし、知っていたならライブ当日よりも前に警告してくれ、と責められるのはごめんである。

なのでまずはライブの目的が完全聖遺物の起動実験であることなど、知らないはずのことを知っている少女、という立ち位置を確保するのが目的だ。

 

前世で投稿小説のROM専だった経験から言えば、アクセス数を稼ぐためには毎日投稿が必須である。

しかし不特定多数に見られるのが目的ではあるが、正確に言えば2課の櫻井了子以外の複数人に見られることが目的なので、PVやランキングは関係ない。

というわけでライブ1ヶ月前、今から1ヶ月後に1期分を一気に投下することにした。

 

2課の前身は公安だそうなので、「戦姫絶唱シンフォギア」というタイトルだけでも釣れるとは思うが、確実を期すために内容も彼らの興味を引くものとしたい。

発見者が一気に読破してくれればベストなので、読みやすい文体を意識しないといけないだろう。

そのためにも、この1ケ月で推敲を重ねなればならない。

 

「明日から小説、がんばろう……」

 

とりあえず明日は、参考のため「小説家になっちゃいなよ」のランク上位作品を読もうと思う。

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