魔法科高校の劣等生 殺人特化魔法師の暴走 (凍結) 作:tsrg
同級生−西城レオンハルトをどうやら知り合いらしい二人の警察官に引き渡した黒河は、一度合流地点に戻った後帰宅した。そして直ぐに真夜と通話を行う事にした。
「作戦は失敗だ。邪魔が入った」
『先程聞きました。アンジーシリウスが出て来たようですね』
「アレがアンジーシリウスだと⁉︎件の留学生と容姿が全く違ったぞ!」
『九島家の秘術、仮装行列よ。姿形だけでなく、照準の対象すらも偽れる究極の偽装魔法』
「...あぁ、成る程アンジェリーナ・
『10日程待って頂戴。完成を急がせるわ』
「頼む。完成次第届けてくれ」
そう言って黒河は通話を切った。
その直後、四葉家では
「黒河殿がアンジーシリウスと交戦するのを許可なさるのですか?」
「面白そうだから放置してみようと思って。それにまだフリズスキャルヴは使ってないのだから、欲しい情報を持って来てくれるのならその方が有難いわ」
依頼した装備が黒河の自宅に届いた。魔法の併用を前提とした気密マスクや埋め込み式情報端末やCADを搭載した特殊合金製の漆黒の全身鎧「アイギス」、そしてエストック型の武装一体型CAD「天沼矛」。
アイギスに搭載されたCADによって発動出来る魔法は、気密マスクを機能させる魔法、飛行魔法、自己加速魔法、鎧に対して掛けられる硬化魔法、各種障壁魔法。そして急遽追加された金属鎧の表層を極低温に冷却し、それより内側を常温に保つ振動系魔法。これはアンジーシリウスが放出系魔法を得意とする事から、その対策用の魔法だ。金属の温度差は電気抵抗の差に繋がる。防御を大雑把に行い、攻撃に集中する為の装備であり、普段CADを余り使わない黒河が、防御用魔法構築の半自動化の為にCADの組み込みを決断したのだ。
そして対アンジーシリウス戦では役に立たないかも知れないが、もう一つの装備の天沼矛。発動できる魔法はたった1種類。刀身、刃先に沿って展開されるベクトル反転障壁のみ。変数は無い。突き刺した物の奥深くまで押し開き、抉りこませる。
十分な装備が整った。そして今日はスターズも活発に動いていることが真夜からの情報で分かっている。黒河は早速装備一式を身につけて意気揚々と自宅を飛び出した。
幸いな事に目的の人物は直ぐに見つかった。が、
「同級生の報復のつもりか?」
「アンタ、四葉の...」
丁度同じ学校の生徒とも遭遇した。黒河の記憶が正しければ達也のクラスメイトだったはずだ。更に、アンジーシリウスはフードを被った人型との戦闘中だ。
「まぁいい、報復という意味では俺も同じようなもんだ」
そう言って黒河は仮面の魔法師アンジーシリウスに向かって天沼矛の切っ先を向けて自己加速魔法と障壁魔法、ベクトル反転術式をマルチキャストして突進する。
「死ね!」
「...!」
無言で避けるシリウス。しかし黒河も、飛行魔法と自己加速を使い分けて喰らい付く。後ろで、雷鳴が轟いた。どうやら彼
瞬間、シリウスがナイフを放った。真っ直ぐ向かってくると思いきや、途中で曲がり側面から襲いかかってくる。移動魔法によるものだ。黒河は既に硬化魔法を掛けてある腕部の装甲でそれを受けた。ナイフが弾かれ、シリウスから動揺の気配が伝わる。恐らく、ナイフが装甲を貫くと思っていたのだろう。元々高い黒河の魔法力は四葉に入り、魔法力強化の演習プログラムや後天的強化措置の実験を経て、現時点でかなり底上げされている。定期試験では、入試の時点で大きく離されていた深雪の魔法力にかなり近づいていた事が分かった。
シリウスが新たな魔法の発動態勢に入った。黒河は直感的に件の振動系魔法を発動する。予想通り、電撃が襲いかかってきた。そして、電子は所々に結晶が出来ている鎧の表層で留まり、黒河の放出系魔法で空中に放出された。これにもシリウスは動揺したようだ。黒河は振動系魔法を発動したままシリウスに殴りかかった。咄嗟に発動された障壁魔法を天沼矛の側面を叩きつけて、干渉力勝負で無効化する。顔を狙った一撃は腕でガードされたが、その衣服の下は霜焼け、運が悪ければ凍傷になっているだろう。シリウスの表情が苦痛で歪む。そして、その背後に突然斬りかかる者がいた。千葉の娘だ。シリウスは移動魔法を自分に掛けて辛うじて脱出したが、黒河は当然追撃を行う、と同時に介入してきた同級生に声を掛ける。
「フードとやりあってたんじゃねぇのか?」
「アタシは最初からこっちを狙ってたわよ。アンタが先に始めちゃったからタイミングを逃したってだけで」
「そりゃ悪かった。だが、恐らくお前の報復対象はあっちだ。こっちは俺の獲物だ。任せて貰おう。その代わり、そっちはそっちで確実に獲物を仕留めてお互いの戦闘に影響が出ないようにしよう。それでいいか?」
「...分かった。それでいきましょう」
千葉の娘が向こうの加勢に向かったと同時に、黒河の打撃がシリウスの身体を透過した。仮装行列で虚像を掴まされたのだ。
「ってワケだ。とっとと死ね!」
「...っ!」
黒河は直ぐにその場を離れて領域魔法ニザヴェッリルと多種類の障壁魔法を発動した。暗黒の中から少しダメージを受けた様子のシリウスが拳銃を握って脱出してきた。その銃口の先は...
達也だ
黒河は咄嗟に叫ぶ
「奴の情報体は空だ!直接照準はするな!」
銃弾が飛んでくる前に部分分解を発動しようとしていた達也の手が止まる。シリウスは苦々しい表情を見せ、それでも銃弾を放つ。達也は情報強化されたそれを難なく分解するが、その隙にフードが逃走を図った。一瞬、その場のほぼ全員の目がそっちへ向けられた。その隙にシリウスは閃光弾を放ち、その場から逃走した。
「二人とも無事か?」
達也がヘルメットを脱ぎ、バイクから降りて二人の様子を確かめる。
「俺は無視か」
「その装備で無事も何も無いだろう」
黒河は肩を竦めた。幸い二人ともに負傷した様子は無い。
「じゃ、俺は行く。気ぃつけて帰れよ」
「あぁ」
黒河は走ってその場を離れた。師族会議の捜索チームが集まってくるのが分かっていたからだ。