魔法科高校の劣等生 殺人特化魔法師の暴走 (凍結) 作:tsrg
師族会議の組織した捜索チームと警察組織の二重の包囲網を隙間を縫う様に潜り抜けて脱出した黒河は、行きと同様の人通りの少ないルートを通り帰路についていた。
ふと目の前を黒猫が横切る。
気付けば猫だったものは絶命していた。
腑を天沼矛で抉り出されて...
「便利になったなぁ。一年前はあんなに苦労したってのに」
黒河は立ち止まり、丁度一年前の日の事を振り返る。
それは東京では珍しい吹雪の日の事だった。
「ふざけんじゃねぇ!何で邪魔した?!あぁっ?!殺し損ねただろうが!」
そこには血糊のついたエストックを握り、その切っ先を実の父親に向ける今よりも少し背丈の小さい黒河、そして腹を浅く抉られ辛うじて生きている状態の猫。
黒河が近所でも有名な放し飼いの野良猫を拾ってきて、殺そうとしたのだ。それを止めた父親に対して黒河はブチ切れた。何故邪魔をするのだ、自分の楽しみを奪うな、と。
その日の夜、酒に弱い両親の飲み物を全て酒類に入れ替えて千鳥足状態にさせた黒河は、二人を車通りの多い通りに放り出して轢き殺させた。
警察は黒河を疑う事は無かった。結局碌な処置もされずに死んだ猫の死体も昼のうちに上手く処理されていたのだ。彼の狂気は誰にも気付かれる事は無かった。
黒河は職を探した。Aランクの魔法師だった親の遺産はまだたっぷりとある。しかし、収入が途絶えた状態を放置したくはなかったのだ。都内を探し回った末に、黒河は自分にとっての天職を見つける。両親が良く利用していた情報通の喫茶店のマスターより紹介されたのは、破壊と殺人が中心の裏工作の仕事。第一高校入学までの数ヶ月間、黒河は人生で初めての仕事に明け暮れた。
自分が底無しの沼に嵌ったとも気付かずに。
黒河が紹介された職場は、いくつものダミー会社を通じて四葉家に掌握されていたのだ。この時、四葉真夜は既に黒河の高い魔法力に目をつけていた。本来外国の工作員用の収監施設である巳焼島に黒河が収監されたのは決して偶然では無かった。全て最初から、四葉の掌の上だったのだ。
現在の黒河の立ち位置は、実は一年前と殆ど変わっていない。四葉の外側にいるか、内側にいるかの違いでしかない。命令を下す相手が、荒事を管理する使用人から直接真夜になっただけに過ぎないのだ。
黒河本人はそのような事を知る由もないが...
「俺は、自由を得た」
彼は知らずして自由を捨てた
「この俺を縛れるものはもう何もない」
純粋な力だけで全てを振り切れるほど、世界は甘くはない
偽りの自由を手にした少年は、上機嫌に歩き始める。猫の死体を後ろ蹴りで吹き飛ばして...
彼の末路は恐らく、