魔法科高校の劣等生 殺人特化魔法師の暴走 (凍結) 作:tsrg
1月上旬の某日
四葉家本邸の書斎には葉山と四葉真夜の姿のみがあった。
「宜しかったのですか」
「あら、何がかしら...」
「黒河殿は、はなから狙われてなどいませんが...自衛を命じるのではなく、無差別に妨害させるのが最善かと」
「えぇ、ただ妨害する勢力は慎重に選ばなければいけないのよ。彼にはいざという時の為に待機していて貰うわ」
「...パラサイト、でしたかな」
「えぇ、必ず狙う勢力が他に現れる」
この時点で、四葉は既に日本国内に侵入したパラサイト感染者の存在を把握していた。
三学期が始まった。黒河は早速自分のクラスに入ってきた異物を観察していた。といっても、黒河には見ただけで相手の実力が分かるなどという特技は無い。ただ、その振る舞いを観察しているだけだ。クラスメイトが次々と彼女に群がっている所為で見辛いことこの上ないが、それが逆に相手に観察されていることを気付かせていない。最も、この程度で視線のカモフラージュが出来ている時点で、相手の諜報能力が低いという事が確定してしまっているのだが。黒河はすぐに彼女が陽動に過ぎないという事に気が付き、それと同時に戦略級魔法師を陽動に使うUSNAに呆れていた。恐らく達也と深雪も既に真夜から同様の情報を提供された上で、この事に気が付いているのだろうと推測する。黒河は面倒な事を兄妹に丸投げして、逃げに徹する事を決心した。
結局、留学生が黒河に対してコンタクトを取ろうとする事は無かった。
それから数日後、黒河の元に真夜から先日日本に入国したUSNAの工作員、スターダストの一人の身柄を生きたまま捉えろという命令が書かれた文書が届いた。そこには、任務にあたって精神干渉魔法の使い手であるサポート要員を送るという旨も書かれていた。
作戦決行当日、黒河は真夜から指定された場所–渋谷内部の公園に来ていた。そこで派遣されたサポート要員を名乗る男性と合流し、その男性の指示通りに移動を開始する。暫くすると、目の前に二対一で戦闘を行っている三人が見えた。
「アレか?」
「えぇ、そうです」
「どれを狙う?」
「二人組の内の片方、手前にいる彼女にしましょう」
「分かった、俺が奴らの目を潰す。お前はその隙にターゲットを昏倒させろ。回収は俺がやる」
「了解です」
黒河はすぐに魔法を構築した。発動するのはスヴァルトアルヴヘイム。エリア内の光波の振幅を小さくし、暗闇を作り出す魔法。そこにすかさず男が意識を奪う精神干渉魔法を放つ。直ぐ様人が倒れる音がした。黒河は他の二人がいたであろう位置にニザヴェッリルを放ち、倒れたスターダストの隊員の所まで走った。
そこに、四本の短剣が飛来する。
黒河は飛行魔法を発動し、短剣を無茶な軌道で交わした。しかし短剣は宙を舞い続け、再び黒河を狙う。倒れたスターダストの隊員から引き離されてしまった。
「クソッ、何処のどいつだ邪魔して来やがったのは」
「撤退しましょう」
男性がそう進言する。
「お前は先に行け。俺はもう少し戦う」
「...分かりました。合流地点でお待ちしています」
黒河は短剣を操る赤髪金瞳仮面の魔法師を見据える。既にロングコートは居なくなり、折角昏倒させたターゲットは、もう一人の女に抱えられて撤退を開始している。
「よくもやってくれたなぁstranger...殺す!」
「.......」
仮面の魔法師は無言で路地の奥へと駆け出す。
「待てっ!」
黒河も後を追う。
暫く鬼ごっこを続けた後、仮面の魔法師が急に立ち止まった。黒河は一瞬何事かと思ったが、すぐに状況を理解する。目の前には地に伏している見覚えのある同級生と、先程とは別のロングコート。しかし、黒河が少し立ち止まった隙に、今度は仮面の魔法師とロングコートが鬼ごっこを始めてしまった。黒河は少し迷った後、目の前で倒れている同級生を助ける事にした。
一方その頃四葉家では
「失敗したとの事です。アンジーシリウスの邪魔が入ったと」
「そう、まぁいいわ。コレがあればその程度の情報は簡単に得られるもの」
「...お言葉ですが、あまりその端末に頼らない方がよろしいのでは?」
「個人の想子波パターンを解析し追跡する技術とキャストジャマー、コレは是非とも欲しいものよ」