1.スライムの衝撃~友の声~   作:清水一二

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「あっ!」

突然、キングスライムの頬が破れ、ダニエルが地面に放り出された。ぷるんっとしたゼリー状の小さな体が草地を跳ねて、そのたびにダニエルの額や頬に傷がつく。

本来なら、八匹のスライムが合体し、キングスライムに変身できるのだが、なぜかダニエルが抜けても合体は解けなかった。

キングスライムは驚愕のあまり、いまいち状況が呑み込めていないようだった。呆然と一点を見つめ、硬直している。

そんなキングスライムにはかまわず、ダニエルは破れた頬に頭から突っ込んでいった。しかし、何度挑戦しても巨体と融合せず、頬から弾かれてしまう。ダニエルの涙が、泣きボクロを伝い、頬を流れ落ちた。

ダニエルはスライムではとても珍しく、ホクロをもっていた。左目の下にある泣きボクロを、彼は愛し、自慢に思っていた。これまで、ホクロをもつスライムには出会ったことがなかった。

キングスライムの顔面にも、変化は起きていた。

ダニエルが、キングスライムから飛び出たことで、巨体からホクロが消滅したのだ。自らの存在を強く放っていたものがなくなると、顔面が平凡なまでにのっぺりとして見えた。

しかし、キングスライムの頭にはピンク色のリボンが飾られていた。仲間のスライムに、リボンを愛用するレベッカがいるからだ。

破れた頬からレベッカが、心配そうに頭を出した。

「大丈夫?」

ダニエルは途方に暮れた。何を言えばよいのかわからず、ましてやレベッカを安心させる言葉など、持ち合わせていなかった。

レベッカがしずしずと頭を引っ込める。と、キングスライムの瞳に光が戻った。巨体の口をかりて仲間のひとりが声を出した。

「飲み込むから、飛び込んでみろよ」

キングスライムの口が大きく開く。

「そこに? 噛み砕かないか心配だよ」

「ボクたちを信じろって」

恐怖で震える体に力を込め、ダニエルは勇気を奮い起こした。そうして、ぽっかりと開いた口の中に飛び込んだ。長い舌の上に載ると、次の瞬間には飲み込まれていた。たちまち巨体の左目の下に、泣きボクロが浮き出てくる。

しかしすぐに、破れた頬からレベッカが放り出され、あとを追うようにして、次々と仲間が飛び出していった。キングスライムからリボンが消え、最後には泣きボクロも無くなった。

合体が解かれ、バラバラに分解された八匹のスライムはひどく困惑した。

「なんだろ、これ」

「こんなの初めてだ」

「なんか変じゃない? 合体の調子が悪いのかな」

「ごめん、僕のせいだ」

ダニエルは哀しげにうつむいた。

「もう一度合体しましょ!」

レベッカの提案に賛同した仲間が、一匹ずつ跳び上がり、小さな空色が段状に積み重なっていく。下の段に四匹、上の段に三匹、頂点に一匹の形だ。

普段はレベッカが頂点を務めるのだが、今回はダニエルに譲ってくれるらしい。二段目から、彼女はダニエルに熱い視線を送っていた。

ダニエルも彼女を見上げ、二匹は静かに向き合った。レベッカが頬を橙色に染め、誘うような眼差しでダニエルを窺う。

濃厚な恋の熱風が、二匹の間に漂った。ダニエルが照れたように微笑むと、頬ばかりかレベッカの全身が橙色に変わった。

「わたし、どうして」

「僕もだ」

ダニエルは、橙色に変化した自らの体を驚愕の眼差しで見下ろした。

「こんなの初めてだわ。いままで聞いたこともない」

「つまり、これは……僕たち、想いはひとつということ?」

「ええ……理由はわからないけど、わたしたち、恋をして橙色になったんだわ」

「スライムベスとは違う、恋の色だ。だけど……」

ダニエルは不安そうに仲間を見回した。変色しても、仲間だと思ってくれるのか自信がなかった。

 

 

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