僕とウチと恋路っ!   作:mam

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僕とウチと映画鑑賞

 

 

 手を繋ぎながら美波と歩いていく。

 

「アキは玲さんとどんな映画を観たの?」

「んー、小さい頃だからちょっと覚えてないな……アニメじゃなかったのは確かだけど」

「そっか……ウチは日本に来てからは葉月と一回行ったくらいかな」

「葉月ちゃんと何の映画を観たの?」

 すると……美波は顔を真っ赤にして

 

「……その時観たのは、その………(ゴニョゴニョ)

「えっ?良く聞こえなかったんだけど……」

 美波が僕の顔をジッと見て……

 

「もぅっ!だからアキと一緒に観ようと思ってた恋愛映画だったのっ!」

 僕と繋いでる手をぶんぶん振りながら説明してくれた。

 

「わわっ、みっ、美波っ!落ち着いてっ!?」

「アキったら、ずぅっとウチの気持ちに気付いてくれなくて……」

 なんか涙目で睨まれているんだけど……美波の『う~』って言う叫び声が聞こえてきそうだ。

 あれ?美波と繋いでいる手の骨から変な音が……

 

「アキっ!」

「はっ、はいっ!」

「今日は思いっきり甘えさせてもらうからねっ!」

 その前に僕の手が思いっきり潰されそうなんですがっ!?

 

「あっ、あの……美波さん?僕の手の骨がミシミシ言ってる気がするのですが」

「大丈夫よ。アキの手が潰れてもウチがあーんして食べさせてあげるから」

 ひぃぃぃ!全然大丈夫じゃないよっ!?

 

「あのね?僕の手が潰れたら、僕が美波にあーんしてあげられなくなるんだけど……」

「それも困るわね」

 パッと手を離してくれた。

 ホッと胸を撫で下ろしていると……

 

「じゃあ、腕を組む事にするね」

 僕の腕に自分の腕を絡めて(もた)れ掛かる美波。

 美波の温かさと重さが心地好い。

 

「アキ……さっきはごめんね」

 さっき握っていた僕の手の甲をさすりながら謝ってくれた。

「僕の方こそ、心の底からごめんなさい。美波の気持ちに全然気が付いてあげられなくて……」

「ううん……ウチの方こそ、アキがすごく優しいって知ってるはずなのに……」

 頬を染めながら僕の顔をジッと見上げて……

 

「ウチを好きって言ってくれたアキは……きっとウチの事を誰よりも大切にしてくれるって信じてる」

「うん。僕に出来る事なら何でもするよ」

「ありがとう……じゃあ、今日はアキにずっとくっ付いているね」

 僕の腕に耳を付けるように身体を寄せてきた。

 そろそろ駅も近くなってきたから人通りが増えてきたみたいだ。

 恥ずかしいけど美波が喜んでくれるなら……

 後はクラスの(バカ)どもに見つからない事を祈るだけだ。

 

 

 複数の映画館が入っているビルに着いた。

 とりあえず上映時間の確認を……

 

「あと20分くらいで次の上映かな」

「少し待ってましょうか」

「うん。チケットもらえるかな?席をとって来るよ」

「はい。よろしくね」

「じゃあ、ちょっと行ってくる」

 カウンターでチケットを見せて席を予約してもらう。

 やはり日曜の昼間だけあって割りと埋まっていたけれど何とか次の上映の席を取れた。

 

「次の上映の席取れたよ」

「ありがと。もう、そろそろね」

 映画の観客らしき人達が出口の方に向かって歩いている。

 口々に映画の感想を言っているみたいだ。

 さすがに話題の恋愛映画だけあって男同士の観客は全く見ないな。

 女性同士というのは居るけど……男同士はかなり特殊な趣味だろうしなぁ。

 秀吉みたいに可愛ければともかく……

 

『久保には気をつけろ』

 ああっ、僕の中の悪魔。ずいぶん久しぶりだね。何で今頃?

『男同士って言うのでちょっと注意をだな』

 久保君なら大丈夫だよ。いつも僕の手伝いをしてくれるし。

『本能的に何か感じる事があるんじゃないか?』

 本能的?そう言えば久保君に背中を見せたりすると時々寒気がするけど……

『自己防衛機能が働いてるんだろ』

 なんでそんなものが……

 

『ちょっと待ってよ。それなら明久がアキちゃんになれば……』

 

 うおりゃぁっ!   -ダンッ-

 

『うぉっ!?出て来るなり天使が踏み潰されて何かはみ出てお茶の間にお見せできない姿にっ!?』

 僕の中の天使。君には二度と出てくるなと警告したのに出てくるからだ。

 

『まぁとにかく、久保には気をつけろ』

 美波も久保君には気をつけろって言ってたな……久保君には何か秘密があるのだろうか。

 

 

「アキ?アキ?ちょっと大丈夫?」

 ゆさゆさと美波に揺すられて我に返る。

 

「ああ、ごめん、美波。ちょっと考え事してて……」

「本当に大丈夫?何処か痛い所でもあるの?」

 すごく心配そうに僕の顔を覗き込んでくる。

 

「大丈夫だよ。そろそろ入場できるみたいだから行こう?」

 そう言って美波の手を取って入場口の方へ移動を開始する。

 

「あ、アキ……」

 美波は嬉しそうに僕の手を握り返してくれた。

 

 

 予約してあった座席へ案内され、美波と座る。さすがに予約が遅かったからか

 真ん中の方のベストポジションと言う訳にはいかなかったけど

 真ん中から少し左側で、ちょっと後方の席が取れた。

 

(楽しみね)

(そうだね)

 そう言えば美波は暗い所は大丈夫だよね?

 怖いのはお化けだけだろうし……葉月ちゃんと一回見に来てるくらいだから大丈夫だろう。

 

 そうしていると館内のライトが消え、正面のスクリーンに

 『携帯のマナーモード』やら『騒ぐな』やら『盗撮禁止』などの注意事項が流れ……

 そのうち封切されるであろう映画の予告編が始まった。

 

 さすがにうちのTVで観るのとは違い

 音があちこちから聞こえてきたり画面の迫力も違うなぁ、と思いながら観ていると

 

 いきなり、おどろおどろしいBGMが聞こえてきたかと思うと……

 

(……っ!?)

 何事っ!?

 いきなり、コキュッと言う、首から聞こえちゃいけない音と共に

 首が真横に持っていかれ、シャンプーの良い匂いが……

 画面を見ると大量のゾンビが動いていた。

 

 美波が必死に大声を上げないように我慢しているのが痛いほど判る。

 何故なら僕の首が美波に抱き締められて今にも、へし折られそうになっているから。

 

(み、美波?落ち着いて、もぅ画面には何も無いよ?)

(……っ!?)

 ブンブンと目を瞑ったまま首を振る美波……怖くて目を開けていられないようだ。

 とりあえず映画を見る前に僕が気を失ったら、後で美波と話をする時に困るな。

 

(ねぇ、美波?出来れば映画を観ている間、手を繋いでいて欲しいんだけど……ダメかな?)

(えっ?ずっと手を繋いでてくれるの?)

 どうやら僕の話を聞いてくれたようだ。

 

(うん。せっかく美波と観ているんだから一緒に観てるって感じていたいんだけど……)

(アキ……うん、ありがとっ)

 うっすらとしたスクリーンからの明かりでもわかる美波の笑顔。

 何とか美波の笑顔と僕の命を取り戻したようだ。

 そして……美波と、そっと手を重ねた。

 

 やがて映画本編が始まり……

 

 内容は……

 とある会社に勤める、すごくさえない主人公と

 主人公には勿体無いくらいのスレンダーな美人とグラマーで可愛らしい女性の

 三角関係をえがいたものだった。

 

 しかし、とある事件で主人公がスレンダー美人とキスをしちゃって

 急速に仲が深まっていくという内容だった。

 

 キスシーンのところにくると……

 美波が繋いでいる僕の手をしっかりと握ってきた。

 僕は演技だと判っていてもキスシーンだと、ちょっと照れるので

 目をそむけて美波の顔を見ると……

 すごく真剣にスクリーンを食い入るように見ている。

 

 ふと美波の口元に目が行き……美波との……その……思い出しちゃった。

 

(アキ?どうしたの?顔が真っ赤よ)

(わわわ、なっ、なななんでもないよっ)

(なんでもない割にはずいぶん慌ててるように見えるんだけど?)

(その……ごめん)

(何で謝るのよ?)

(さっきのキスしてるシーンで美波と……思い出しちゃって)

 すると美波も顔を赤くして……

 

(アキのバカ……ちゃんと映画を見てなさい)

(う、うん)

 そう言って前を向いてスクリーンを見ていると

 急に腕をグイッと引っ張られて…………頬に柔らかくて温かい感触が……

 

(みっ、美波?)

(その……つっ、次のキスシーンの時はアキの方から、してよねっ)

 スクリーンを見ながら無茶な事を言ってきた。

 でも、僕が無茶と思う事を……美波はやってくれたんだ。

 

 

 そして主人公とスレンダー美人が付き合い始めた事を

 もう一人のヒロインのグラマーな女性に告白するシーンに差し掛かると……

 美波の僕の手を握る力が強くなってきた。

 さすがにさっきみたいに握り潰すほどの強さは無いけど、しっかりと握っている。

 

 スクリーンの中では二人を祝福して涙を流しながら走り去っていく、もう一人のヒロイン。

 あれ?なんでだろう……心が締め付けられる気がする。

 何か忘れちゃいけない事を…………思い出せない。

 

(……アキって本当に優しいのね)

 僕の涙を拭いてくれる美波。

 いつの間にか泣いていたのか、僕は……

 

(ありがとう)

(アキとウチで幸せにならなきゃいけないのよ)

 僕の顔を見て……優しく微笑んでくれる。

 

 

 映画も終盤に差し掛かり、いよいよ結婚式のシーンへ……

 

 えっ?結婚式っ!?

 ひょっとすると誓いのキスとかあるんじゃ……

 

 そう思っていたら、みんなに祝福されるシーンでエンドロールが……

 良かった。結婚式が始まるところで、この映画は終わるのか。

 ちょっと中途半端な気がするけど、こんな人がたくさん居る所でキスするよりは……

 

(アキ?)

(なに?)

(その……さっきの次の約束なんだけど……)

(映画終わっちゃったね)

(なによ。アキ、ずいぶん嬉しそうじゃない?)

(そっ、そんなこと無いよ)

 僕たちが話している間もエンドロールが流れながら結婚式は進み

 一際BGMが大きくなったかと思うと……

 スクリーンに二人のキスシーンが映し出されて映画は本当に終わった。

 館内にライトがついて周りの観客も出口に向かって歩き出す。

 

「アキ?」

「なっ、なにかな?」

 満面の笑みの美波と、多分引きつった顔をしている僕。

 

「ウチの大好きなアキは約束は守ってくれるわよね?」

「そっ、そうだね……僕に出来る事なら」

「今すぐじゃなくて良いわよ?」

「ありがとう……そのうちにね」

「うんっ。今日なら何時でも良いからね」

 

 僕の腕にぶら下がる様に腕を組んでくる美波の笑顔が眩しかった。

 

 

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