僕とウチと恋路っ!   作:mam

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僕とウチとテスト勉強part04

 

 

--放課後

 

「アキ。帰ろ?」

「うん」

 僕が立ち上がって帰ろうとすると下の方から声がして……

 

「ちょっと待て。俺を助けようと思わないのか」

 お昼休みからずっと鎖でぐるぐる巻きにされている雄二だった。

 

「助けたくてもウチらには何も出来ないわよ?」

「そうだね。トドメなら刺してあげられるけど?」

「そんなもんいらねぇから、これ何とか出来ないのか」

 忌々しそうに顔をしかめてガチャガチャと音を立てながら床を転がりまわる。

 

 鎖の端っこと思しき所に鍵が一個付いているんだけど

 ムッツリーニでさえ開けられなかった鍵だ。

 何故なら鍵穴が無いため、ピッキングが出来ない。

 

「…………たぶん指紋認証で開くタイプ」

「なるほどのぅ。霧島本人でないと開けられないと言う訳じゃな」

「…………(コクコク)」

「坂本君も大変ですね」

 

 その姿をずっと続けている雄二もすごいけど

 その姿に動じないで普通に授業をする先生もすごいと思う。

 とりあえず何も出来ない雄二に対して

 僕たちが出来る事といったらトドメを刺してあげるくらいしか出来ない。

 それが嫌なら霧島さんが来るまで放っておくのが一番良いと思うんだけど……

 一応確認してみるかな。

 

「誰か日本刀持ってない?包丁でも良いけど」

「ちょっと待て。お前は何をするつもりなんだ?」

「とりあえずトドメを刺すか、首を切って身体を鎖から抜き取るか、雄二はどっちが良い?」

「どっちも良い訳無いだろ」

 今、僕たちに出来る事は何も無くなった。

 

 ……ガラッ

 教室の扉が開いて霧島さんが現れた。

 

「……雄二。帰ろう」

「その前にこれを(ほど)けぇ」

「……うん」

 霧島さんの綺麗な指が雄二の方へ……

 

 ぷすっ

 

「うぎゃぁぁ。なっ、何で目潰しをするんだっ!?」

「……雄二が逃げないように」

 そう言うと鎖を留めていた鍵を外して

 雄二は晴れて自由の身になったはずなのに……

 霧島さんに腕を組まれ、連行されるように教室から出て行った。

 目潰しのせいなのか、はたまた違う理由なのか

 涙を流しながら去って行った雄二の未来を考えると

 僕も雄二のように涙が止まらない。

 

「さりげなく腕を組むには、そういう方法もあるのね……」

 そう呟く美波の方から何やら怪しい殺気が……

 ふっと美波の方を見るとチョキを構えている。

 

「美波?何をしようとしてるの?」

「なっ、なんでもないわよ」

 真っ赤になって手をバタバタさせる美波。

 

「美波ちゃん……」

「絶対狙っておったな」

「…………(コクコク)」

 

「さっ、ウチらも帰りましょ」

「そうだね」

 美波が僕の背中を押して教室の外へ……

 僕も雄二も明日を無事に迎える事が出来るのだろうか。

 

 

 美波と二人で校門を出て長い下り坂を歩いていく。

 

「そういえば何処に買い物に行くの?」

「うちの近くのスーパーで良いんじゃないかな」

 僕の家で料理を作るんだから、なるべく荷物を持ち運ぶ距離は短い方が楽だ。

 

「少しくらい遠くても良いわよ?」

「そう?でも荷物を持つ僕としては、なるべく近い方がいいなって」

「遠慮しなくて良いわよ。ウチも持ってあげる」

「美波は女の子なんだから力仕事は僕に任せてよ」

 これ以上パワーアップされたら僕の身が持たないし。

 

「アキ……ありがと」

 美波が頬を染めて僕を見ている。

 そして手を繋いでくると……

 

「ちょっと遠回りして行こ?」

「うん」

 僕も少しでも長く手を繋いで居たいしね。

 

 

--スーパー

 

「アキ、何を作るつもりなの?」

「やっぱりみんなが喜ぶ物を作りたいよね」

「結構難しいわね」

 美波が、あごに手を当てながら考えている。

 僕や雄二、ムッツリーニなら、お肉とかの方が良いけど

 姫路さんや秀吉みたいに女性陣だと結構カロリーを気にするかもしれない。

 僕も昔はカロリーを気にしていたけど……普段食事をしなかったから。

 

「ゴボウやニンジンを揚げた物に色々なディップを付けて食べてもらおうかな」

「美味しそうね。あとは……キッシュとかどうかな?」

「キッシュか……美味しそうだね」

 セロリやタマネギなど野菜を手に取りながら

 エプロンを着けた美波が作るキッシュを想像してみる。

 ……エプロン姿の美波も可愛いな。

 

「アキ?なんでタマネギを見てニヤニヤしてるのよ?」

「いや、エプロン姿の美波が可愛いなと思って」

「ありがと……って、ウチってタマネギに似てるのっ!?」

 美波にほっぺをつねられた。

 

「ひっ、ひふぁふよっ」

「じゃあ、何でタマネギを持ってウチを想像してたのよ?」

 とりあえずほっぺをつねっていた手は離してもらえたけど

 キッと僕を睨んでいる。

 

「えっと、その……料理を作っている美波を想像してただけで……」

「そうなの?」

「うん。タマネギを持っていたのは、たまたまだよ」

 両手に一個ずつタマネギを持って僕のほっぺの両脇に上げてみる。

 

「はぁ……アキ?そのダジャレは0点ね」

 残念そうに下を向いて溜息をつく美波。

 でもすぐ僕の方を向いて笑顔になって

 

「でも……ウチの事をいつも想ってくれてるアキは100点よ」

 そう言って僕の持っていたタマネギを両手で優しく受け取って買い物カゴに入れる。

 

 美波と何を作るか話しながら歩いていて

 調味料のコーナーでタバスコを3本くらい買い物カゴに入れると……

 

「アキって、そんなにタバスコが好きなの?」

「そっ、そんな事無いけど……」

 むしろ美波のおかげでちょっと苦手に……

 これは雄二専用に買おうかと思っていた分で

 家に帰ったら、ビンに雄二の名前を書いておきたいくらいだ。

 

「じゃあ、ウチの特製タバスコ料理、また作ってあげるね」

 にこにこと微笑んでいる美波の笑顔を見てると、嫌だと言えなかった……僕のバカッ!

 

 

 そして買い物が終わってちょっと荷物が多くなってしまったので

 少しだけ美波に持ってもらって僕の家に……

 

 ……ガチャッ

 

「ただいまー」

「お邪魔します」

 

「おかえりなさい。美波さんもご一緒でしたか」

「はい、お邪魔します」

 ぺこりと頭を下げている美波と、にっこり微笑んでいる姉さん。

 美波が来たのが嬉しいのかな?

 

「じゃあ、美波。荷物をこっちに持って来てもらえるかな」

「うん」

「ずいぶんたくさん買って来たんですね」

 姉さんが珍しく驚いている。

 僕もこんなに買うのは今までに無いくらい……

 この前の福引で海の幸詰め合わせセットが大当たりして以来かな。

 その荷物をキッチンで下ろしていると

 

 Prrr! Prrr!

 この音は美波の携帯かな?

 

「あ、ウチの携帯ね。ちょっとゴメン」

 美波が携帯を取り出して耳に当てる。

 

「もしもし、お母さん。どうしたの?」

 お母さんからの電話か……なんだろう?

 

「……うん。……うん。そう。わかったわ」

 通話が終わったみたいだ。美波が携帯をしまった。

 

「美波、どうしたの?」

「うん……あのね。お母さんの仕事が忙しくなって今日から明日まで帰れそうに無いって」

「え?それだと今日、美波と葉月ちゃんの二人っきりって事なの?」

「そうなるわね。悪いけど、ウチすぐ帰るわ」

 美波が玄関に向かおうとした時、姉さんが……

 

「美波さん、ちょっと待ってもらっても大丈夫ですか?」

「はい」

「もしよろしければ、今夜は我が家に泊まりに来ませんか?」

「ええっ!?良いんですか?」

「はい、もちろんです」

「あの、妹も居るんですが……良いんですか?」

「ええ。女の子二人っきりと言うのは何かあったら怖いですし」

「じゃあ、お母さんに聞いてみますっ」

 美波がすごく嬉しそうに携帯を取り出している。

 美波がお母さんと話している時……

 

「姉さん。ありがとう」

「どういたしまして。アキくんもその方が勉強に身が入るでしょう?」

「そうだね……って、今日も勉強するのっ!?」

「当たり前です。せっかくやる気を出したのですから。いつも言ってるように毎日の積み重ねが大事なのですよ」

「そうなんだろうけど……」

 今日は明日の準備をしようと思ってたのに……

 でも姉さんの言うとおり少しでも勉強はしておいた方が良いかな。

 

「じゃあ、ウチ一旦、家に戻って妹を連れてきます」

「あ、そろそろ暗くなるから僕も一緒に行こうか?」

「大丈夫よ。葉月と来る時は荷物もあるし、タクシーを使うから」

「そっか。じゃあ、僕は夕飯の準備でもしてるかな」

「行ってくるわね」

 そう言って美波は出ていった。

 

「じゃあ、僕は着替えて夕飯でも作るかな」

 僕が部屋へ行こうとすると姉さんが

 

「アキくん?判ってはいると思いますが……」

 僕の顔をジッと見ている。

 

「うん。不純異性交遊の禁止でしょ?」

「ええ。いくら美波さんと付き合ってると言っても、まだ高校生なのですから」

「大丈夫だよ。今日は美波と二人っきりって訳じゃないんだし」

 葉月ちゃんが一緒なのは良いけど、むしろ問題は姉さんの方だ。

 美波と葉月ちゃんの前で、僕に変な事をしてこなければ良いけど……

 

「今日の事だけではないのですが……アキくんを信じていますよ」

 そう言うとエプロンを手渡しながら姉さんは

 僕と一緒に部屋に入ってこようとしている。

 

「あの……僕、着替えようと思うんだけど?」

「ええ。アキくんがちゃんと裸でエプロンを着るか確認しようかと」

 色々とおかしい。

 僕の着替えを見ようとするのも、僕に裸エプロンを強要してくるのも……

 

「裸でエプロンなんか着ないし、僕着替えるんだから出てってよ」

 姉さんの背中を押しながら部屋の外へ出てもらう。

 

 今から、こんな調子じゃ本当に大丈夫なんだろうか。

 あの姉さんを葉月ちゃんに会わせるのが、ちょっとだけ心配になった。

 

 

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