僕とウチと恋路っ!   作:mam

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僕とウチとテスト勉強part06

 

 

「うう……なんで僕はいつもこんな目に……」

 

 姉さんと美波の二人掛かりで攻撃をされた……どちらか一人だけでも臨死体験が出来るのに。

 今回は三途の川の向こう側に居るおじいちゃんとハイタッチして帰ってきた。

 次はハグでもするかな……でも、そのまま離してくれないとすごく困る気がするのでやめておこう。

 おじいちゃんが別れ際に「またすぐ来いよ」と寂しそうに言っていたけど、勘弁して欲しい。

 

 そして現世に戻ってきた僕は、リビングのソファで横になっている。

 結局お風呂は姉さんが一番最初に入って、その間に美波に洗い物をしてもらって

 今は美波と葉月ちゃんが一緒にお風呂に入っている。

 姉さんが僕の横に居るのは僕の介抱をしてくれるためであって

 僕がお風呂を覗きに行かないように見張ってるんじゃないよね?

 

「アキくんがいつも変な事をするから、いけないんですよ」

 日本に戻ってくるなりバスローブで外を歩いたり

 実の弟に自分がお嫁にいけなくなるくらいのチュウを迫ってきたり

 僕の大事な秘密の参考書(エロ本)を雄二たちだけならまだしも美波や姫路さんに見せたり……

 そんな事をする人に言われる、変な事って何だろう?

 

 そんな事を考えていると……

 

「バカなお兄ちゃん。気が付きましたかっ」

 そう言って僕の頬を撫でてくれる葉月ちゃん。

 可愛い手から伝わる温かさが嬉しいなぁ。

 

「葉月ちゃん。その程度ではアキくんは起きませんよ」

 姉さんがおもむろに僕の顔を覗き込み

 

「アキくん。頭を食い縛りなさい」

 ちょっと待ってっ!普通食い縛るのって歯だけだよね……頭を食い縛るって、どうやれば良いの?

 それに僕を起こすのに一体何をするつもりなのっ!?

 

 姉さんが目を閉じて、だんだん僕に顔を近付けてきて……って、逃げないとマズいっ!!

 

「うわー、姉さんっ!ちょっとストップっ!!」

 僕はソファから転がり落ちた。

 なんて凶悪な起こし方をしてくるんだ。

 純真無垢な葉月ちゃんが真似をしたら大変な事に……

 

「なっ、なんて起こし方するのさっ!?」

「毒りんごを食べて死んだ弟を生き返らせるのは姉さんのキスじゃありませんでしたか?」

「そんな何処かの物語のような事言っても誤魔化されないよっ!?」

 そもそも僕が死に掛けたのは魔女のような姉さんのせいじゃないか。

 ……僕にとってはお姫様みたいな美波も一緒に攻撃してたのは忘れておこう。

 

「バカなお兄ちゃん、大丈夫ですか?」

 葉月ちゃんが心配そうに床に寝ている僕の顔を覗き込んでくる。

 風呂上りだからなのか、頬を少し染めてアーモンド状のちょっと吊り上った目が僕をジッと見ている。

 やっぱり姉妹だけあって似てるから、ちっちゃい美波に見つめられてるみたいで照れちゃうな。

 しばし僕が照れてる所を葉月ちゃんに見られていると……

 

 葉月ちゃんが目を閉じて……

 だんだん可愛い顔が僕に近付いてくる。

 …………って、姉さんの真似してるのっ!?

 

「わーっ!葉月ちゃんっ、ストップっ!!」

「お兄ちゃん。起きましたかっ」

 僕の目の前には葉月ちゃんのニコニコとした笑顔がすごく近い距離にある。

 

「おっきなお姉ちゃんの言うとおりですっ。バカなお兄ちゃんすぐ起きましたっ」

「ア~キ~~?」

 恐る恐る呼ばれた方を振り返ると……

 僕が今まで生きてきた中で一番の恐怖を感じるオーラを身に(まと)

 なにものにも形容し難い怖い顔をした美波が居た。

 

「アンタっ!葉月と何てことしてるのよーーっ!?」

 手加減の一切ない攻撃が僕に直撃した。

 

 ほら、みてごらん。

 葉月ちゃんが姉さんの真似をしたら僕が大変な事になったじゃないか。

 

 そして、また三途の川のそばでおじいちゃんに会って

 死んでるくせにニコニコと笑顔で「もう来たのか」と言われた。

 

 

 

 

 僕は本日二度の臨死体験を経て、お風呂へ入った。

 今日は後一回臨死体験をすると、僕の人生は残機ゼロになってゲームオーバーになるんじゃないだろうか。

 コンティニューのやり方なんて知らないし。

 そんな心配をしながら風呂から上がって、みんなが待っているリビングへ……

 

「バカなお兄ちゃんっ。葉月と一緒にデザートを食べるですっ」

 僕の袖を引っ張りながら話しかけてきた。

「待たせてゴメンね。今すぐに用意してくるからちょっと待っててね」

 葉月ちゃんの頭を撫でながら

「姉さんと美波も食べるよね?」

「ええ、頂きます」

「アキ一人じゃ大変だろうからウチも手伝うわよ」

 キッチンへ向かう僕の後に美波もついてきてくれた。

 

 さっき美波と一緒に買ってきた、明日のデザートを作るのに使おうと思っていたアイスクリームだけど

 たくさんあるから少しくらい食べても問題ないだろう。

 

 みんなの分を用意して美波と手分けして二人でリビングへ持っていく。

 

「お待たせ。はい、葉月ちゃん」

「ありがとうですっ」

「玲さん、お待たせしました」

「ありがとうございます」

 

「「「「いただきます」」」」

 

「お兄ちゃん。あーん」

 葉月ちゃんがアイスを乗せたスプーンを僕の口の方へ……

 さっきは出来なかったから、今度はちゃんと葉月ちゃんにあーんをさせてあげよう。

 

「ありがとう」

 僕は笑顔で葉月ちゃんが差し出してくれたスプーンからアイスを食べさせてもらう。

 うん。寒い時に暖かい部屋で食べるアイスクリームは美味しいな。

 

「アキくん。あーん」

 今度は姉さんが僕の口元にスプーンを差し出してきた。

 さすがに葉月ちゃんのだけって訳にもいかないだろうし……姉さんのも頂いた。

 

「アキ。あーん」

 次は美波の番。

 さすが僕への、あーんの回数が一番多いだけあって

 差し出してきたスプーンの角度、食べ終えた後のスプーンを引き抜くスピード

 そして食べ終わった僕を見る顔の表情、どれを取っても美波が一番落ち着くな。

 

 美波が終わると次はまた葉月ちゃんが……って、みんな食べないのっ!?

 

「あの……葉月ちゃんと姉さんは食べないの?」

「食べてますよ。アキくんに出してる分と交互に」

「葉月も食べてますっ」

「僕、自分の分もあるから、もう大丈夫だよ」

 いくら美味しくても一人でそんなに食べるとお腹壊しちゃうかも。

 

「じゃあ、アキくんの分をください」

「葉月にもくださいですっ」

「ウチにも頂戴」

 僕の分は三人に分けられた……最初から僕の分、要らなかったかな。

 

 

 アイスクリームを食べ終えて時計を見ると午後10時過ぎ。

 そう言えば、二回ほど死に掛けたからなぁ……

 葉月ちゃんも眠そうに目をこすっている。

 

「葉月ちゃん、そろそろお休みする?」

「んにゅ、するです……」

「じゃあ、お布団敷いてくるから少し待っててね」

「はいです……」

「僕、ちょっと布団敷いてくるよ」

「じゃあ、ウチがお皿とスプーンを洗っておくわね」

「悪いけどお願いするよ」

 美波は、みんなの分のお皿とスプーンを持ってキッチンへ

 僕は布団を敷きに客間へ……

 そして布団を敷き終えてリビングへ戻り

 

「葉月ちゃん。お布団敷いたから、もう寝ても大丈夫だよ」

「ありがとうです。葉月、歯を磨いてくるです」

 そう言って洗面所の方へ行ってしまった。

 そして入れ替わりに美波がキッチンから戻ってきて

 

「さて、デザートも食べたし、そろそろ勉強しましょうか」

「えっ!これから勉強するの?」

「もちろんよ。来週からテスト始まるんだし……後一時間くらい出来るわよ?」

「そうですね。アキくんも歯を磨いて顔を洗えば少しは目が覚めるんじゃないですか」

「うぅ……判ったよ」

「じゃあ、ウチ、勉強道具持ってくるわね」

 美波が客間の方へ行くのを見ながら、僕も洗面所の方へ移動する。

 葉月ちゃんもちょうど歯磨きが終わったらしくて、僕を見ると

 

「お兄ちゃん。おやすみなさいです」

 眠くてもちゃんと挨拶をしてくれるなんて本当に礼儀正しいな。

「おやすみ、葉月ちゃん」

 葉月ちゃん、ちょっとふらふらしてるみたいだけど大丈夫なのかな?

 

 

 

 そして美波と一緒に姉さんに勉強を見てもらって

 日付が変わったので、お開きということになった。

 

「玲さん、夜遅くまでありがとうございました」

「姉さん、いつもありがとう」

「どういたしまして。私で出来る事ならいつでも協力しますよ」

 にっこりと微笑む姉さん。性格や行動にちょっと問題があるけど

 やっぱり姉さんは僕や美波の事を大切に思ってくれているんだな。

 

「じゃあ、ウチもそろそろ寝るわね」

「うん、明日もよろしくね。おやすみ、美波」

「美波さん、おやすみなさい」

「おやすみなさい、玲さん、アキ」

 美波は挨拶をして勉強道具を持ってリビングを後にする。

 

「さて、僕も寝ようかな。おやすみ、姉さん」

「おやすみなさい、アキくん」

 僕も勉強道具を持って自分の部屋へ戻る。

 明かりを点けたり消したりするのも面倒だから、勉強道具はそのまま机の上へ置いて明日片付けよう。

 今日はゆっくり眠れそうだな。学校に居る時より家に居る時の方が疲れたし……精神的にも肉体的にも。

 

 そんな事を思いながら布団へ……

 ん?…………なんか暖かいな?

 そして布団の中で何か当たる物が……

 

「んにゅ~。お兄ちゃん、勉強終わったんですか」

「うん。それでそろそろ寝ようかと……って、葉月ちゃんっ!?」

 何で葉月ちゃんがここに居るのっ!?

 僕は布団から飛び出て葉月ちゃんを見ていると……

 

「葉月、今日はお兄ちゃんと一緒に寝るんです……」

 いかにも眠そうに話してくるけど……こんな所を誰かに見つかったら僕は即死だ。

 姉さんと美波のどっちに処刑されるのか考えていると、勢い良く僕の部屋のドアが開いて……

 

「アキっ!葉月知らないっ!?居なくなっちゃったのよ」

 美波が血相を変えて僕の部屋に飛び込んできた。

 

「んにゅ。お姉ちゃん、葉月を呼びましたか?」

 僕の布団からひょっこり顔を出す葉月ちゃん。

 

「葉月っ、アンタそこに居たの……お姉ちゃん、すごく心配したのよ」

「ごめんなさいです……」

「でも、無事で本当に良…………くないっ!なんで葉月がアンタの布団で寝てるのよっ!?」

 美波がいきなり僕に詰め寄ってきた。

 居なくなったと思っていた妹が僕の布団から出てくれば……

 

「僕も布団に入ろうと思ったら葉月ちゃんが寝てたんだよ」

「アンタ、まさか葉月に手を出そうとしてたんじゃ……」

 美波が睨み殺さんばかりの形相で僕を見ている。

 

「葉月、今日は一緒に寝ようと思ってお兄ちゃんがすぐ寝れるように布団を暖めてたんです……」

 葉月ちゃんの気持ちは嬉しいけど、そんなどこかの戦国武将みたいな事を言われても……

 

「ダメよ。今日は玲さんも居るんだし、三人一緒に寝る訳にいかないじゃない」

 いや、姉さんが居なくても三人一緒に寝るのはマズいんですが……

 三人って美波も一緒に寝るつもりなのっ!?

 そんな事を考えていると僕の部屋のドアの方から声がして

 

「じゃあ、全員で一緒に寝ますか、アキくん?」

「そんな事したら僕、姉さんにお仕置きされちゃうし……って、姉さんっ!?」

「もう夜も遅いですし、葉月ちゃんもそうでも言わないと動かないのでは?」

 確かに葉月ちゃんは僕の布団をしっかりと握っていて離しそうに無い。

 

「でも僕の意見は……」

「では民主主義らしく多数決で決めますか。アキくんと一緒に寝たい人は?」

 

 僕以外の三人が手を上げていた。

 仕方なく客間に布団を二つ並べて敷いて四人で寝ることに……

 結局、美波・葉月ちゃん・僕・姉さんと並んで寝ることになった。

 美波はすごく悲しそうな顔をしていたけど……僕にはどうする事も出来なかった。

 

「お兄ちゃん、あったかいですか?」

「うん」

「こうやって一緒に寝るのはすごく久しぶりですね。アキくんが望むなら毎日でも良いですよ」

「ううん、全然望まない」

「…………」

 姉さんに腕を(つね)られた。

 

「………………」

 葉月ちゃんの向こう側で寝ている美波はすごく静かだった。

 

 

 

 

 しばらくすると葉月ちゃんから、すーすーと規則正しい寝息が聞こえてきた。

 美波と姉さんは良く判らないけど多分寝ているだろう。

 ちょっとトイレへ行こうと布団から出ようとしたら……

 

(アキくん。何処へ行くんですか)

(ちょっとトイレへ行こうかと……)

(そう…ですか)

 どうやら姉さんはそのまま寝たみたいだ。

 

 そして僕は用を足して……

 このまま戻ることは無いよね。また姉さんを起こしたら可哀想だし。

 僕が居ない事に気が付いたら葉月ちゃんとか美波は僕の部屋に来るかもしれない。

 でも姉さんの部屋で寝る訳にもいかないし……仕方ない。またリビングで寝ることにしよう。

 

 自分の部屋から毛布を持ってきて、と……

 みんなが起きるより早く起きれば何も言われないだろう。

 

 しばらく、うとうとしていると……

 

 ……つんつん

 

 ん?

 

 ……つんつん

 

 誰かに突付かれてる気がする。

 

(……アキ?)

(美波?)

(起こしてゴメンね)

(気にしなくて良いよ。どうしたの?)

(ありがと。あのね……少し隣に居ても良い?)

(うん…ちょっと待っててね)

 僕はソファに座り直して美波が座れる場所を作る。

 

(お待たせ)

(ありがと)

 美波が僕の隣にちょこんと座り、僕が掛けていた毛布を自分と僕の肩から掛け直した。

 

(美波、今日はゴメンね)

(どうしたの?いきなり謝ってきて……)

(その……姉さんが色々とやってたから)

(ううん、ちょっとビックリしたけど……玲さんっていつもあんな感じなの?)

(うん、普段からあんな感じだよ)

 僕に対してはね。

 

(アキも大変ね)

(あはは……もう慣れたけどね)

 慣れても、きつい時はきついけど。

 

(でもね、姉さんは僕が美波と付き合うことになって嬉しいんだと思うよ)

(そうなの?それならウチも嬉しいんだけど……)

(うん。姉さんが不純異性交遊を禁止していたのも僕が悪い人に騙されない様にって)

(アキってすぐ騙されそうだものね)

(うーん、否定できないけど……今でも禁止はされているけど、だいぶ緩和されているよ)

 その緩和されているのに美波だけじゃなく、何故か姉さんも含まれているのが不思議だ。

 

(玲さんなりにアキを大切にしているのね)

(うん)

(でも、ちょっと心配になっちゃうわね)

(え、なにが?)

(いつも、その……き、キスしようとしたり……)

 美波が顔を赤くして俯いてしまった。

 たしかに僕もそれから逃げるのに大変だけど……

 

(姉さんは昔からやると言ったらやるからなぁ)

 たぶんチュウと言ってるのは本気だろう。

 実の弟としては、すごく迷惑なんだけど。

 

(ちょっと、アキっ!?浮気したら許さないからねっ!)

 両手で僕の頬を挟み、顔を美波の方へ向けられる。

 その時に、コキュッと言う音がしたのは聞かなかったことにしよう。

 

(しっ、しないよっ)

(本当に本当でしょうね?)

(うん)

(そう……じゃあ、信じてあげるけど……)

(ありがとう)

(そのかわり、ウチもここで寝ても良い?)

(ええっ!?)

(なっ、なによっ!玲さんや葉月は良くてウチはダメだって言うのっ!?)

 美波が涙目で訴えてくる……そうか。さっき四人で寝る時

 僕の隣に来れなかったから寂しかったのかな?

 

(ダメって事は無いけど……)

(ありがと、アキ)

 そう言うと笑顔になって僕の肩に頭を持たれかけてくる。

 

(寒くない?)

(うん。アキがそばに居てくれるから……)

 

 僕も美波が隣に居てくれると心まで温かくなる。

 でも一応念のためエアコンもつけておくかな。

 

 

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