『BクラスはFクラスに対して宣戦布告を行う』
根本君がいきなりFクラスにやってきてそう告げる。
「いつやるんだ?確か午前中は試召戦争出来ない筈だが」
「ああ、そうだな。だから今日の放課後からだ」
根本君はニヤニヤしながら教室の中を見ている。
今日から一週間、僕たちFクラスが6人しか居ないのを確かめているのか。
そのうえで試召戦争を仕掛けて来るとは……
相変わらずやってくれるな、根本君。
「一応聞いてみるが、あの掲示板を見て宣戦布告しに来たのか?」
「当たり前だ。こんなチャンスは滅多に無いからな。お前らのモットーは『卑怯汚いは敗者の戯言』なんだろ?」
雄二の質問に、根本君は質問で返す。
明らかに人数の少ない僕たちを舐めきってる態度が見え見えだ。
すると雄二が負けじと言った一言で……根本君の顔がニヤつくのを止めた。
「なんだ、まだ小山に振られた事を俺たちのせいだと思っているのか?」
「ぐっ……別に俺がどう思っていようと、お前らには関係ないだろ」
明らかに動揺しているな……清涼祭の時に僕と雄二のペアとの対戦の時に彼女である小山さんに
自分の女装写真集を見られて、それで振られたみたいだからなぁ。自業自得だと思うけど。
その点、僕なんか女装しても美波は驚くどころか可愛いって言ってくれるし……
「アキ、どうしたの?いきなり泣き出して」
「なんでもないよ。美波が彼女になってくれて本当に良かったよ。ありがとう」
「アキったら……いきなりそんなこと言われると照れるじゃない」
美波は顔を赤くして頬に両手を添えて恥ずかしがっている。
「いきなりおぬしらはどうしたんじゃっ!?」
僕が泣いて美波が照れている……こんな状況を見たら秀吉じゃなくても驚くよね。
「お前の
「せいぜい一時間は持ってくれよ。たった6人の全員が早退とか、しないでな」
そう言うと教室の扉を閉めて根本君は帰っていった。
「何よ、坂本。あんな事言われて悔しくないのっ!?」
美波がかなりご立腹の様子。
まぁ、あんな態度で来られると、僕も腹が立ったくらいだし……
「そう怒るな、島田よ。きっと雄二のことじゃ。何か妙案を考えているのじゃろう」
秀吉は、この場の雰囲気を変えようとしてるのかな?
確かに怒っていても始まらないしね。
「そうだな。人数が少ないからと言って下手に篭城する訳にも行かないし……攻めないと勝てないしな」
雄二がライオンのたてがみの様な頭を
一時間目の先生がやってきたので仕方なく僕たちは席に着いた。
………………
…………
……
一時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響き
「では、今日の授業はここまでにします」
と言って、先生は教室を後にした。
いつもの騒がしいFクラスと違って人数がすごく少なくて
静かな生徒ばかりだったから、先生も普段と違ってやりにくかっただろうな。
「よし、明久。ちょっと隣の教室を見に行くぞ」
「うん」 「ウチも行くわ」 「私も見に行って良いですか」 「わしも行くぞい」 「…………(スッ)」
結局みんなで見に行った……と言っても、隣の教室だからそんなに時間が掛かる訳でも無いしね。
……ガラッ
換気のためか、窓は開けられていて教室の中は少し寒かった。
木とか何かが焼け焦げた匂いが、少しだけど、まだ漂っているみたいだ。
机とか椅子は端っこの方にまとめて置かれている。
教室の電気は今は点かないみたいで窓から差し込む光が教室の中を照らしている。
そして天井を見ると……教室の真ん中より、やや教壇側の部分を中心にした
すり鉢をひっくり返したみたいな形で真っ黒になって凹んでいる。
「うわぁ、真っ黒だ」
「アイツら、ここで何やってたのよ」
「これはすごいですね……」
「…………火災現場」
「これはまたひどいのぅ」
僕たちが思い思いの感想を言っている間も雄二はずっと天井を見ていた。
「ふむ……午前中は召喚出来ないんだったよな」
雄二がポツリと呟いた。
「そうですね。午後からは出来るみたいですが……お昼休みには出来るんでしょうか」
姫路さんの答えを聞いて、雄二が僕たちを見回す。
そして……八重歯を見せながら、にぃっと笑った。
何かを考えついた時に見せる顔だ。
「根本の野郎のニヤけた顔を泣きっ面に変えてやるぜ」
そして二時間目が終わって休み時間に僕たちは雄二の周りに集まって
「ちょっとまだ確実ってワケではないんだが」
雄二が前置きを言ってから
「放課後になったらすぐに作戦開始だ。まず、この教室をすぐ出て四階の空き教室に全員で立て篭もる」
「四階の空き教室ですか?」
「ああ。さっきお前らも見たと思うが天井が焼けて凹んでいただろ」
「すごかったわね」
「あれだとおそらくだが召喚獣は動けない……と言うか、呼び出しても動かせないな」
「そうなの?」
「召喚獣は物に触れないだろ?だから細工のしてない建物だと立っている事が出来なくて下に落ちてしまう」
「そうじゃな」
「…………(コクコク)」
「下の階から思いっきり熱せられて凹むほど焼かれているから四階の空き教室の床は全面じゃないが召喚獣が下に落ちるだろ」
「じゃあ、今だけの非武装地帯になるんですね」
「そうだ。一応教室の出入り口を片方塞いで一箇所だけにしてそこでしばらく粘ってもらう。Bクラスの奴等に悟られないためにな」
「それは誰がするのじゃ?」
「島田と姫路にお願いしたいんだが……二人とも良いか?」
「はい、わかりました」「おっけー」
「で、俺たち四人は教室の奥の方に立て篭もるんだが」
「でも非武装地帯って戦闘放棄って見なされるんじゃないの?」
美波があごに手を当てて考え込むように発言する。
「ああ、そこで明久の出番だ」
「そっか、僕の召喚獣だと物理干渉能力があるから床があれば普通に動けるのか」
「そういうことだ。こっちは召喚獣を出して戦闘をする気はあるって事を見せつければ教師も納得するだろ」
「本人同士で殴り合う訳にもいかないしのぅ」
「だから俺が合図したら二人はすぐに俺たちの後ろの方に移動してくれ。その時に教科を切り替える」
「わかったわ」「はい」
「雄二がさっき言ってた確実じゃないのって何?」
「ああ、それは床の召喚できないエリアがどれくらいなのかと、この後に話す秀吉に別行動をとってもらう事だ」
「んむ?さっき雄二は全員で立て篭もると言ってなかったかの?」
少し寂しそうに秀吉が言ってきた。仲間外れはきっと寂しいのだろう。
「秀吉にしか出来ない事で頼みたい事があるんだ。それでさっき言った全員と言うのは……」
………………
…………
……
「……と言う訳だ。これが今回のBクラス戦での戦い方になるんだが」
「あきれた……アンタたち本当にそんな事するつもりなの?」
「そんな事をして、その……明久君たちは大丈夫なのでしょうか?」
「ははっ……無理でも何でもやらないと勝てないんじゃするしかないよね」
「そう言えば、俺たち四人は昼休みが始まったらすぐに行動を開始するから次の授業で早弁しておけよ」
そっか、作戦の準備であちこち行ってやる事があるからなぁ。
「ちょっと、坂本。そんなのダメに決まってるじゃないっ」
美波の言う通りだよね。普通は早弁なんて良くないよね。
「今日はアキとおかずの取りかえっこするのを楽しみにして気合入れてお弁当作ってきたんだからねっ!」
えっ!ダメな理由って、それなのっ!?
「俺はどっちでも構わんが……明久が昼飯食えなくなるぞ?」
「ちょっとアキも何か言いなさいよ」
「えっと……」
僕が言いよどんでいると、ガラッと教室の扉が開いて……次の授業の先生が入ってきた。
「お前ら、席に着け」
「「げっ、鉄人っ!?」」
たしか次は英語だったから遠藤先生のはずじゃあ……
「馬鹿者。鉄人ではない、西村先生と呼べと何度も言ってるだろう。いいから早く席に着け」
しぶしぶ僕と雄二が席につくと
「遠藤先生は所用があって来れなくなったので、この時間は自習とする。俺も用事があるのですぐ行かなきゃならん」
鉄人がいきなり来たからビックリしたじゃないか。
「てっ……西村先生、昼休みには召喚できるようになるのか?」
最初の『て』の部分に反応して雄二を睨んでいた鉄人が
「一応午前中で目処がつくそうだ。そのために俺を含めて他の先生方も頑張っている」
そして僕と雄二を交互に睨んだ後
「吉井と坂本。自習だからって教室から出るんじゃないぞ。もし見つけたら今年一杯大晦日まで補習漬けにするからな」
そう言い残すと自習の範囲を黒板に書いて鉄人はガラッと扉を開けて出て行った。
冗談じゃない。大晦日まで鉄人と一緒なんて……
「じゃあ、少し早いけど昼飯にするか」
雄二は、そう言うと卓袱台の上にお弁当を広げ始めた。
秀吉とムッツリーニもお弁当を広げる準備をしている。
うーん、僕はどうしよう?
「アキは……どうするの?」
美波に聞かれたけど……さすがに真面目な姫路さんと美波はお昼休みまで待つみたいだ。
僕は……やっぱり美波が気合を入れて作ってくれたおかずなら、美波と一緒に食べたいよね。
「美波、悪いんだけど……」
「わかったわ。食べないで待ってるから早く戻ってきてね」
「ありがとう……って、なんで待ってて欲しいってわかったの!?」
「だって今食べるつもりならウチに聞く前に準備するでしょ」
「美波ちゃんって本当に明久君のこと良く見てるんですね」
「ふふっ。それにアキがウチを置いて一人で先に食べるなんて絶対しないわよ……ね?」
美波が僕の方を向いて片目を瞑ってみせる。
なんか照れちゃうな。
あれ?雄二たちがお弁当を食べないで仕舞っちゃったよ?
「雄二、お弁当食べないの?」
「お前ら見てたら食欲もなくなるだろうが」
「おぬしら仲睦まじいのは良いのじゃが、あてられるこっちの身にもなってほしいのぅ」
「…………羨ましい」
「では、みんなで一緒に自習をしましょう」
姫路さんの提案でFクラス全員……と言っても今は6人しか居ないけど……
雄二や姫路さんに教えてもらいながら自習をする。
テスト前の勉強会みたいで、こっちの方が楽しくてやる気が起きるから不思議だ。
そしてお昼休みを告げるチャイムが鳴った。
「じゃあ、まずは四階の空き教室に行って扉が開けられない様にバリケードを作るぞ」
「ウチらも手伝うわよ」
「そうか、悪いな」
僕たち6人で四階の空き教室へ……
美波と姫路さんに机とか椅子を扉の近くまで持ってきてもらって、僕とムッツリーニで積み上げる。
「
「
反対側の扉の方では雄二がフィールドを張って、秀吉の召喚獣で何処まで動かせるか試している。
「明久。お前の召喚獣がちゃんと立てるか試すぞ」
「ん。わかった。
幾何学模様の魔方陣から現れる僕の召喚獣。
「明久。こっちの方へ動かしてくれ」
教室のほぼ中央に居る雄二が手招きをしている。
「オーケー」
僕の召喚獣が、とことこ歩いて雄二のそばへ。
しかし、何時になったら僕と雄二の召喚獣は改造学ランと木刀と言う装備から卒業できるのだろうか?
「やはり明久の召喚獣は問題なく動かせそうだな」
「他の人の召喚獣はダメなんですか?」
机を積み終えたムッツリーニや姫路さん、美波がこっちへやってきた。
「ああ。秀吉、もう一回召喚獣を呼び出してみてくれ」
「了解じゃ。
机を積んでいない扉のそばに居た秀吉が召喚獣を呼び出す。
そして教室の中央付近に居る僕たちの方へ歩いてくると
……フッと消えてしまった。
「明久以外だとこうなる」
「アキが観察処分者で良かったわね」
先生の雑用をやらされたり、フィードバックで痛かったりで全然良くないんだけどっ!?
「よし、次のところへ行くぞ」
そう言って雄二が空き教室を出て行く。
いつになったら美波が作ったおかず食べられるのかなぁ。