僕とウチと恋路っ!   作:mam

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僕とウチと姉さん
僕とウチと姉さん


 

 

 ある晴れた日曜の朝。

 僕は気持ちの良いはずの朝から……リビングで土下座をしていた。

 

「アキくん、これはなんですか?」

「写真です」

「写っているのは誰ですか?」

「僕と美波です」

「美波さんが着ているのは何ですか?」

「ウェディングドレスです」

「アキくんが着ているのは何ですか?」

「タキシードです」

 

 姉さんが数枚の写真を手に持って、僕に見せるように質問をしてくる。

 その写真はムッツリーニが撮ってくれた物だ。

 タキシードの僕とウェディングドレスの美波が綺麗に写っている。

 こんな時だけムッツリーニの神技ともいえる撮影技術が恨めしい。

 

 まさか姉さんがこんな朝早く帰ってくるとは思っていなかったので

 机の上に大切に飾っていた写真が見つかってしまったけど……

 僕の大切な参考書(エロ本)を何処に隠しても必ず見つける姉さんだから

 隠していても一緒だったかもしれない。

 

「どうして看病してもらって結婚までしちゃうんですか?」

「姉さん、これには深い訳が……」

「では、その深い訳を聞いてる時間だけチュウをします」

「ウェディング体験です」

 休みの日曜とは言え、朝の貴重な時間を少しでも無駄にしちゃいけないよね。

 姉さんが時計を見る前に言い切れたようだ。

 

「短過ぎます」

 内容よりも時間の方が大事なのっ!?

 

「まぁ、それはともかく……ウェディング体験ですか」

「うん、雄二たちが招待されていて僕と美波もついでにやらせてもらったんだ」

「そうだったんですか……入籍までしたんですか?」

「すっ、する訳ないよっ!?体験なんだから……それに服を着ただけだよ」

「服だけですか……そう言えば姉さんのメイド服に使われた形跡があるのですが」

 美波が着てくれて色々お世話してくれたな。

 可愛かったから、もう一度美波のメイド服姿見たいなぁ。

 

「アキくんが着たんですか?」

「何で僕が着るのさっ!?」

 普通メイド服は男子高校生が(たしな)む物じゃないと思う。

 

「では美波さんが着たんですか?」

「うん……あっ!痛っ!姉さ……っ!ビンタはグーでするものじゃ……っ!」

「アキくん。歯を食い縛りなさい」

「言うの遅いよっ!?」

「まったく、貴方という子は……看病してくれてる美波さんに何をさせているのですか」

「ごめんなさい」

「姉さんではなく、美波さんに謝るべきでしょう?」

「それもそうだね」

 たしかに美波の好意に甘え過ぎていたかもしれない。

 姉さんが少し考え込んでいる。

 

「アキくん。美波さんは今日時間が取れるか確認できますか?」

「うん、電話すれば大丈夫だと思うけど……何か用でもあるの?」

「ええ、アキくんの看病をして頂いた御礼にお土産を買ってきたのです」

「そっか。美波も喜ぶと思うよ」

「では連絡を取ってくれますか」

「うん」

 姉さんから写真を返してもらい、自分の部屋に携帯を取りに行く。

 そして携帯を手に取り、またリビングへ……美波の番号を選んで、と。

 

  Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr

 

「アキ、おはよう」

「おはよう、美波。ちょっと聞きたいんだけど今日って暇あるかな?」

「ウチとデートしたいの?もちろん、いいわよ」

「うん……じゃなくて、姉さんが帰ってきたんだけど美波にお土産を渡したいって」

「そんな気を遣ってもらわなくても……ウチはアキの看病出来てすごく楽しかったんだし」

「僕も美波に看病してもらってすごく嬉しかったよ。心の底から、ありがとう」

 あれ?姉さんが携帯を渡しなさいって言ってるような?

 

「ちょっと待ってね。姉さんが替わりたいって」

「うん」

 姉さんに携帯を渡す。

 

「アキくん、ありがとうございます」

 そう言って美波と携帯で話し込む姉さん。

 

 時々聞こえてくる単語が少し気になった。

 『ありがとう』は良いんだけど……『お昼』や『メイド服』ってなんだろう?

 

「はい、ではアキくんに替わりますね」

 そう言って僕に携帯を返してくれる。

 

「姉さんと何を話していたの?」

「今日のお昼、アキが御馳走してくれるって……ウチ、今からアキの家に遊びに行くね」

 ははぁ、メイド服着せたお詫びに僕が美波にお昼を作ってあげるって事か。

 

「うん、そういうことなら腕によりをかけて、お昼御飯作らせてもらうね」

「ふふっ、楽しみにしてるわよ?」

「わかったよ。僕も楽しみにしてるね」

 携帯を切ると姉さんが

 

「さてアキくん、今日のお昼は美波さんを招待したのでお願い出来ますか?」

「うん、わかったよ。じゃあ僕、材料買いに行ってくる」

「お願いしますね。姉さんは少し疲れたので家で休ませてもらいます」

 うん、姉さんと一緒に買い物に行くと多分お昼御飯までに帰って来れない。

 

 

 

 

 無事買い物を終えて帰宅。すぐにお昼の準備に取り掛かる。

 

 そして大体調理が終わり、後はデザートをオーブンで焼けば終わりかな、と思っていると

 

「アキくん、お昼の準備は出来ましたか?」

 姉さんが邪魔をしなかったおかげで大分早く出来ました。

 

「うん、後はデザートを30分くらいオーブンにかければ終わりかな」

「ありがとうございます……では着替えをして頂けますか」

「はい?」

 何で御飯作ったら着替えないといけないのだろうか?

 

「着替えって……美波が来るのに何処か行くの?」

「何を言ってるのですか、アキくん。これに着替えるんですよ」

 そう言った姉さんが手に持っていたのは……美波が着ていたのとは違うメイド服だった。

 

「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってよ!?何で僕がそんな物、着ないといけないのさっ!?」

「何を言ってるのですか、アキくん。美波さんにメイド服着てもらって看病してもらったんでしょう?」

「そっ、そうだけど……僕がそれを着なくてもいいんじゃないのっ!?」

 まさか……さっきの電話のメイド服って、僕が着るのっ!?

 

「アキくんがそんなに恥ずかしがるなら下着は着なくても良いですよ」

「ちょっと待ってっ!?下着って女物の下着も着せようと思ってたのっ!?」

 まさか男物も着るなって言わないよねっ!?

 

「もう、アキくんはわがままですね。じゃあ、譲歩して下着は着用を認めましょう」

「違うっ!問題はそこじゃないっ!」

「ほら、早く着替えないと美波さんが来ちゃいますよ」

「美波が来るから、そんな物着たくないんだよーーっ!」

 すると姉さんがいきなり缶コーヒーを手に取り……

 

「ちょっと缶コーヒーが飲みたくなりましたね」

「姉さん、そんな物取り出して何を……って、わぁっ、何で僕に掛けるのさっ!?」

「あら、ごめんなさい。これは着替えないといけませんね」

「自分の服に着替えるよっ!」

「もっと缶コーヒーを飲みたくなりましたね」

 そう言って姉さんが台所の片隅を指差す。

 するとそこには……いつの間にか、箱買いされている缶コーヒーが大量にあった。

 

「姉さん……そこまでして僕にメイド服着せたいの?」

「はい。着替えてくれますね」

 にこにこと笑顔で答える姉さん。

 ダメだ、この人には何を言っても何をやっても多分通じないだろう。

 ……僕がメイド服を着るまで。

 

「わかったよ……着替えてくるよ」

「はい、お願いしますね」

 

 

 

  ピンポーン  ピンポーン

 

「はい、今開けるね」

 ガチャッと玄関のドアを開けると……

 

「アキ、可愛いっ!」

 いきなり美波に抱きつかれた。

 これはこれで嬉しいんだけど……

 

「みっ、美波?とりあえず中へどうぞ」

「あっ、そうね。あんまりにもアキが可愛いから、つい……」

 舌をぺろっとだして照れる美波。

 リビングの方へ案内する。

 

「美波さん、いらっしゃい。今日はお呼び立てして申し訳ありません」

「いえ、ウチの方こそ、お招き頂きましてありがとうございます。これ、つまらない物ですが」

 そう言ってフルーツの詰め合わせを頂いた。

 またフルーツジュースでも作ってもらおうかなぁ。

 

「じゃあ僕、お昼の準備するね」

「よろしくお願いします、アキくん」

「アキ、よろしくね」

 

 僕がキッチンの方で皿にスパゲッティを盛り付けしていると……

 

「まさか本当にアキがメイドになってるとは思いませんでした」

 僕も今朝、起きた時にメイドになるなんて思わなかったよ。

 

「ごめんなさいね、美波さん。せっかく看病してくれてたのにアキくんの変な趣味のせいで」

 このメイド服も美波が着ていたメイド服も持ち主は姉さんなんだけど……

 

「いえ、メイド服を着たのはウチの意思です」

「そうなんですか?」

「はい、アキが少しでも元気を出してくれるかな、と思って……」

「そうだったんですか……それに気付かないアキくんは本当に世界一のバカですね」

 

「バカな子ほど可愛いと言いますけどね」

「ウチはアキが世界一バカだと思う事にかけては誰にも負けません。たとえ玲さんでも」

「そうかもしれませんね」

 優しく笑う姉さん。

 たしかに日曜の昼間に好きな女の子と実の姉の前で

 メイド服を着て給仕をしている僕は世界一のバカかもしれない。

 

「おまたせしました。本日のメニューはプッタネスカです」

 そう言って僕はスパゲッティとサラダをテーブルの上に並べていく。

 僕が椅子に座るのを待って……

 

「「「いただきます」」」

 食事中は学校の様子を姉さんに聞かれたり

 姉さんが行ってた国の話を聞いたりして……

 

「デザートはアップルクランブルです」

 テーブルの上にアイスを添えたお皿を並べる。

 僕は何時までメイド服を着ていれば良いのだろう?

 

「ところでアキくん」

「何、姉さん?」

「さっきから気になっていたのですが、美波さんとお付き合いを始めたのですか?」

「なっ、なっ、なな何を根拠にっ!?」

「アキくん。顔が真っ赤ですよ……美波さんも」

 美波を見ると顔が真っ赤になって動きも止まっていた。

 

「わたしはアキくんが生まれた時から、ずっとアキくんの姉さんをやっているのですよ」

 普通、弟より後に生まれる姉は居ないだろう。

 

「美波さんが来てからのアキくんはすごく嬉しそうに話をしています」

「あっ、あの玲さん……ウチは、その……アキの事が大好きで……」

「美波さんの気持ちは初めてお会いした時から気付いてましたが……アキくんは気が付いてなかったみたいですね」

「そうなの?」

「そうよ……本当にアキは鈍感ねっ」

「ごめんなさい」

 

「一つお聞きしたいのですが……気を悪くされたらごめんなさい」

「はい、なんでしょうか?」

「瑞希さんは二人が付き合い始めた事をご存知なんですか?」

 すると美波が言いにくそうに……

 

「はい、瑞希には、ちゃんと……」

「そうですか」

 少し考え込んでから姉さんが……

 

「ではアキくんの女性との付き合いも少し緩和しましょう」

「ほんと、姉さん?」

「ええ、美波さんと姉さんには腕を組むまでは許してあげます」

 何で姉さんまで対象になっているかは、この際気にしないでおこう。

 

「本当ですか、玲さん」

「ええ。ただし他の女性と手を繋いだら死を覚悟しなさい」

「そうね。ウチ以外の女性とそんな事したらアキを殺してウチも死ぬわ」

「言い訳がそのまま遺言になりますから注意してください」

 それだけの事を実行出来る実力の持ち主二人に言われたら本当にそうなるだろう。

 

「ふつつかな弟ですがよろしくお願いしますね、美波さん」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 メイド服着てる弟だからふつつかでも仕方ないな、と思った。

 

 

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