僕とウチとツーテールpart01
今日は金曜日か。週末は何しようかなぁ。
……なんて考えながら歩いていて、学校までの坂道が見えてくると前方に
黄色いリボンでポニーテールを揺らしながら……って、なんか変だな?
少し頭がふらふらしてるみたいだけど……
「美波、おはよう」
後ろから、ぽん、と肩を叩くと
「あ、アキ。おはよう」
僕の方に振り向いて挨拶をしてくれているけど……いつもと違って元気が無いな。
「どうしたの?なんか具合が悪そうなんだけど」
「心配掛けてごめんね。ちょっと夜更かししちゃっただけよ……」
口に手を当てて欠伸を噛み殺している。美波が夜更かしって珍しいな。
何をやってたのかな?
「大丈夫?あまり無理しないでね」
「ありがと……」
僕をジッと見つめてきて……ほんのりと頬を染めて
「あの……あのね、アキ?ちょっとお願いがあるんだけど……」
さっきの欠伸のせいなのか大きな瞳を潤ませながら、指をもじもじさせて……
こんな可愛い美波のお願いなら多少の無理な事でも聞いてあげたくなるな。
「うん、遠慮なく言ってよ。僕に出来る事なら何でもしてあげるから」
僕が笑顔でそう答えると、美波もぱぁっと笑顔になって……
「ほんとっ?だからアキって大好きよ」
そう言うと腕を組んできて……すごく嬉しそうに
「じゃあ、眠気覚ましにほっぺで良いから……キスしてくれる?」
ちょっと僕の多少の範囲を超えてしまうお願いが来た。
さすがに登校中にそれはすごく恥ずかしい。
「ごめんなさい。さすがにそれは無理……」
僕の返事が終わるか終わらないかというくらいに
美波と組んでいる僕の腕が普通は曲がらない方向を向いている。
「痛だぁぁぁぁぁ」
僕は珍しく今日はそんなに眠くなかったんだけど……おかげでバッチリと目が覚めた。
「何よっ!何でも言う事聞いてくれるんじゃなかったのっ!?」
さっきまでの笑顔とは打って変わって美波がキッと僕を睨んでいる。どうやら眠気は覚めたみたいだ。
「でっ、でもみんな見てるし……」
僕がそう言うと少し周りを見回してから腕を開放してくれて
「それもそうね。今登校中だったわね」
元気なく俯いてしまった。本当に大丈夫かなぁ?
「ねぇ美波?夜遅くまで何をやっていたの?」
「秘密よ。そのうち判るから楽しみにしててね」
美波は笑顔で片目を瞑ってくれたけど……なんか無理をしているような?
いつも僕に見せてくれている、元気を分けてくれるような笑顔じゃなかった。
--放課後
校門を出て坂道を美波と並んで歩いている。
今日の美波は少し……じゃないな。だいぶおかしかった。
授業中や休み時間に今まで見た事の無い居眠りをしていた。僕や雄二ならしょっちゅうだけど。
普段、授業は真面目に受けている美波がそんな事をするのは絶対におかしい。
でも僕がいくら聞いても
「秘密よ」
この一言で片付けられてしまうし……どうしたらいいんだろう。
「アキ?ウチの顔に何かついてるの?」
「えっ?」
「さっきから、ずぅっとウチの顔ばかり見てるみたいなんだけど」
どうやら考え過ぎて美波の顔をずっと見ていたみたいだ。
「えっと……どうしたら美波が僕に教えてくれるのかなって」
僕がそう言うと申し訳なさそうに俯いて
「あのね」
美波が俯いたまま僕と手を繋いでくる。
いつもと同じ温かくて……僕を安心させてくれる美波の手だ。
「アキとウチって、お互いに好きって言う気持ちは伝えて付き合い始めたけど、ちゃんと告白ってしてなかった気がするの」
「そう言えば、そうかも……」
確か如月ハイランドでウェディング体験をやって帰る途中で、偶然美波の気持ちを教えてもらって
僕もそれがすごく嬉しくて、美波に僕が想っていることを伝えたんだっけ。
「それでね」
頬を仄かに赤く染めて……美波が言葉を紡いでいく。
「この前、アキがクリスマスに一日中、ウチの言う事を聞いてくれるって言ってくれた時にね」
「うん」
「ちゃんとウチから告白しようって…………決めたの」
頬を染めながら真剣な表情で僕を見ている。
「だからアキも……ちゃんとウチに告白してくれる?」
真剣な表情で美波が僕を見つめている。僕の答えはもちろん……
「僕もちゃんと美波に告白するよ」
美波の目を見て僕も答える。
美波の気持ちに応えるためにも僕も真剣にやらないといけないな。
「ありがとう。ウチ、楽しみにしてるね」
僕と腕を組むと僕の腕に頭を
美波の温かさと重さが心地好い。ずっとこうしていたいなぁ。
「その時にね、アキにウチの想いをプレゼントしたくて……」
少し眠そうに言葉を続けてくる。
そうか。それで夜遅くまで……僕のために……
「判った。もう聞かない。プレゼント楽しみに待ってるよ」
「アキ……ありがと。心配掛けてごめんね」
「でも一つだけ約束してくれる?」
「約束?」
「うん。僕に出来る事があったら手伝わせて欲しいんだ」
「えっ!でも……」
「あ、美波が何かをやっているのを手伝うんじゃなくて……僕に出来る事だと例えば御飯を作ってあげるとか」
「いいの?」
「もちろんだよ。美波は僕が風邪を引いた時、あんなに一生懸命僕の世話をしてくれた。そのお礼をしたいんだ」
「やっぱりアキって優しいね」
僕の腕をぎゅって抱き締めてくる。
「なんなら、あーんもしてあげるよ?」
「メイド服も着てくれるの?」
「ええっ!美波はそんなに僕の女装が見たいのっ!?」
自分の好きな相手が違う性別の格好をする事に抵抗は無いのだろうか。
…………美波が男装しても格好良いだけだったな。
「ふふっ。冗談よ」
「僕にとっては心臓に悪い冗談だよ?」
「ごめんね」
「そう言えば、そろそろ美波の家に着いちゃうね」
いつの間にか美波の家の近くまで来てたみたいだ。
もう少しこうしていたいなぁ。
「残念ね」
「うん」
美波が腕を離して僕がその温もりの余韻に浸っていると……
「バカなお兄ちゃんっ!」
いきなり声が聞こえたかと思うと、どんっと鳩尾に衝撃が……
だんだん衝撃がきつくなってくる気がする。
そして僕の鳩尾に額をぐりぐり当てている少女に向かって
「葉月ちゃん、久しぶり」
そう言って頭を撫でてあげると目を細めて喜んでくれて
「葉月に会いに来てくれたんですか?」
満面の笑みで僕に尋ねてくる。その笑顔を見ていると思わず、そうだって言いそうになってしまう。
「ごめんね、葉月ちゃん。お姉ちゃんが心配でついて来たんだよ」
「そうだったんですか。最近お姉ちゃん忙しそうなので葉月も心配です」
「ごめんね、葉月」
美波も葉月ちゃんの頭を撫でる。
「そういえば、バカなお兄ちゃん?」
「なにかな?」
「テストが終わったら、お姉ちゃんと一緒に葉月と遊んでくれるって言ってたです」
「えっと……」
しまった。そう言えば葉月ちゃんとそんな約束をした気がする。
でも美波はしばらくの間、時間を取るのが大変じゃないかな。
僕が返答に困っていると……
「あら、葉月。吉井君困ってるじゃない」
名前を呼ばれた方を見ると……美波のお母さんだった。
「お久しぶりです」
「いつも美波と葉月がお世話になっています」
ぺこりと頭を下げられた。
「いえ、僕の方こそお世話になりっぱなしで……」
僕が美波のお母さんに頭を下げていると
「葉月、ごめんね。ウチ、しばらく忙しいから一緒にお出かけ出来そうに無いの」
美波がそう言うと、少し頬を膨らませて葉月ちゃんが怒ってるみたいだ。
すると美波のお母さんが
「美波。忙しい所悪いんだけど、お母さん明日急に仕事が入っちゃって……」
「仕事なら仕方ないわよ。ウチと葉月は気にしないで頑張ってきてね」
しかし美波の両親は本当に忙しいんだな。
お母さんも普段あまり家に居ないみたいだし、お父さんに至っては会ったことすらない。
クリスマスパーティーの時に会えるのだろうか。
……などと考えていると、美波と目が合い……美波が満面の笑みになった。
「お母さん、心配しなくても良いわよ」
「そう?いつも悪いわね」
「ううん、本当に気にしないで。だって明日はアキがうちに来てくれるんだもの」
ええっ!僕、そんな約束したっけ!?
「ほんとですかっ?」
葉月ちゃんも満面の笑みで僕にしがみついてくる。
そんなに喜んでもらえると僕も嬉しいんだけど……
「えっと、美波?」
「アキ、さっき言ってくれたじゃない。手伝ってくれるって」
あ、そう言えば御飯とか作ってあげるって言ったっけ。
「吉井君、本当に良いの?」
「はい。さっき美波と約束したんです。僕にも手伝わせて欲しいって」
「そう……悪いわね。先週も葉月と美波がお世話になったのに」
「いえ、先週は僕の方こそ美波と葉月ちゃんに手伝ってもらったので」
「アキもこう言ってくれてるんだし、心配しないで」
「葉月もバカなお兄ちゃんが来てくれるなら寂しくないです」
両手を上げて満面の笑みで喜んでくれる葉月ちゃん。
うんうん、こんなに喜んでくれるなら僕もやりがいがあるな。
「じゃあ、お言葉に甘えてお願いします」
また美波のお母さんに、ぺこりと頭を下げられた。
「僕の方こそよろしくお願いします」
僕も頭を下げる。
そして二人とも頭を上げると……
「それなら私、明日は帰ってこないほうが良いのかしらね?」
あごに手を当てて何か考え込んでいるお母さん。
「ちょっとお母さんっ!」
美波が顔を真っ赤にすると
「ふふっ、冗談よ」
そう言って笑うお母さん。
そして二人を交互に見ている葉月ちゃん。
本当に仲の良い親子だなぁ。だから葉月ちゃんも美波も素直で優しい子なんだな。
「で、吉井君は今日はうちに泊まっていってくれるの?」
「「ええっ!?」」
僕と美波が驚いていて、葉月ちゃんが喜んでいる。
「そっ、そんな訳無いでしょ!!」
「そっ、そうですよ。さすがに今日は姉が家に居ますし」
「あら、うちは全然構わないのに」
お母さんは口に手を当てて笑っている。
「じゃあ、僕はこれで失礼します」
これ以上ここに居ると雄二の二の舞になる気がする。
「明日は二人の事、よろしくお願いします」
「バカなお兄ちゃん、早く来てくださいです」
「アキ、明日はよろしくね」
三人に見送られて僕は家路へ……
そう言えば姉さんには、なんて言おう?