僕とウチと恋路っ!   作:mam

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僕とウチと告白っ!

--12月24日 クリスマスイヴ

 

 美波と大切な約束をしているから、時間に遅れないように家を出た。

 待ち合わせをしている場所まで行く途中のお店や商店街の飾り付けを見て

 あらためて今日はクリスマスイヴなんだなと実感する。

 実際には昨日今日ではなくて、もっと前からの飾り付けなんだろうけど。

 

 そう言えば今日は一日中、美波のお願いを聞くって言ったんだっけ。

 どんなお願いをしてくるんだろう?

 

 そんな事を考えながら待ち合わせ場所へ……

 美波の家の近くの小さな公園。

 さほど広くない公園なので入るとすぐにベンチに座っていた美波が立ち上がる。

 手には大きな紙袋を持っている。

 

「アキっ。おはよう」

「おはよう、美波」

 白い息を弾ませながら美波が笑顔で駆け寄ってくる。

 

「ごめんね。待たせちゃって……寒かったでしょ」

「これくらいなんでもないわよ」

 そう言うと紙袋から白くてふわふわした物を取り出して

 

「早速だけどクリスマスプレゼントよ。はい」

 白いふわふわした物を僕の首に巻いてくれた。

 すごく暖かくて……仄かに優しい良い匂いがする。

 目を瞑ると、まるで美波がすぐ傍に居てくれるみたいだ。

 

 美波の手編みのマフラーか……すごく嬉しい。

 

「ありがとう。すごく暖かいよ」

「良かった」

 美波が頬を少し赤く染めて嬉しそうに微笑んでくれた。

 

「じゃあ、今度は僕からのクリスマスプレゼントなんだけど……」

 ポケットから小さい箱を取り出して、開けて中を見せた。

 ホワイトゴールドの小さいリングが二個付いたネックレス。

 

「えっ……アキは今日一日、ウチの言う事聞いてくれるだけで良かったのに」

「ははっ。それは約束だからね。僕も美波に形に残る物でプレゼントをあげたかったんだ」

「ありがとう」

「本当は僕も手作りで何かあげたかったんだけど……僕、料理くらいしか出来ないし」

「ううん。これ、アキが一生懸命選んでくれたんでしょ?それだけでウチ、すごく嬉しい」

 そう言って小さい箱を持っている僕の手を包むように両手を重ねて

 すごく嬉しそうにアクセサリーを見ている美波。

 

「ウチにつけてくれる?」

「うん」

 ネックレスを手にとって美波の背中へ……首のところで留め金を合わせるのに

 少し手間取ったけど、なんとか留められた。

 

「どうかな?似合う?」

 美波が僕から少し距離を取ると、くるっと振り向いて腰に手を当てて笑顔でポーズを取っている。

 胸のところで陽の光を反射してキラキラと光る小さいリングがちょっとだけ眩しかった。

 でも、それ以上に美波の笑顔が……すごく.眩しくて綺麗だった。

 

「どうしたの、アキ?」

「えっ……あ、いや……なんていうか、その……」

 僕が美波の笑顔に見蕩(みと)れていると

 美波が首を傾げながら僕に近付いてきて

 

「ひょっとして……どこか具合でも悪いの?」

 笑顔から一転してすごく心配そうな顔を近付けてくる。

 

「あ、ごめん……なんか、今日の美波はすごく嬉しいのかなって」

 僕は心配をかけないように笑顔で返事をする。

 

「もちろんよ」

 美波はそう言うと、僕の首に巻かれているマフラーを少し巻き直してくれて

「ウチが編んだマフラーをアキがすごく喜んでくれて」

 そして僕があげたネックレスを手に取り、握り締めると

「アキがウチのために一生懸命選んでくれたプレゼントをもらって」

 僕の横に来て……腕を組むと満面の笑みで僕を見上げながら

 

「やっと……アキと本当の恋人になれるんだもの」

 

 心の底から嬉しいって判る美波の優しい笑顔。

 僕は美波に声を掛けられるまで見蕩れてしまっていた。

 

 

 

 僕たちは腕を組んだまま、公園を出て歩き出す。

 今日は寒いのもあるけど……

 こんなに嬉しそうな美波と腕を組んでいると

 僕まで心も身体も温かくなる気がする。

 

 目的地は……美波が今日一番最初に行きたい場所らしい。

 行けば判るとの事だけど、何処へ行くんだろう?

 

「何で公園で待ち合わせにしたの?美波の家まで迎えに行ったのに」

「今日はお父さん一日家に居るみたいだから、もしアキに会っちゃったら……」

「僕、美波のお父さんに会ったらいけないの?」

「この前言ったじゃない。アキを紹介する時は恋人だって言いたいって」

 僕の腕を一瞬、ぎゅっと強く抱き締めてきて、「ね?」と言って可愛い笑顔を見せてくれる。

 

 しばらく歩いていくと……僕にも行き先がなんとなく判ってきた。

 古い洋館のような大きな建物。

 門を抜けて左右に中庭を見ながら歩いていき、正面のガラス張りのドアを抜けると

 吹き抜けのエントランスホールがあり、カウンターの脇にはクリスマスツリーが飾ってある。

 今日は三連休の真ん中だからなのか、休日の割には人は、さほど多くない。

 

 以前、美波と一緒に学校の帰りに来た……図書館だった。

 

 そして美波は僕の手を引っ張るように中を進んでいく。

 少し進むと、いつぞやの司書さんが居た。

 

「あら、あなたたち」

 軽く会釈をしてくれた。

 僕たちも軽く挨拶をして通り過ぎようとすると

 

「ごゆっくり」

 と言って、片手を振ってくれた。

 

 

 そして……言語の棚の前に着いた。

 

 美波が傍にある机のうえに上着や持っていたバッグを置いたので

 僕も一緒に美波から貰ったマフラーや上着を置くと……

 

「ここで……初めてアキの優しさに気付く事が出来たの」

 そう言って美波は優しく微笑むと僕に近付いてきて……

 

 僕の唇に触れるかどうかと言う軽いキスをすると一歩離れて

 

 

「ウチはアキが好きです」

 

 

 頬を赤く染めながら優しく微笑んで僕を見ている。

 その笑顔が……今まで僕が見てきた美波の笑顔の中で一番綺麗で見蕩れてしまった。

 

「アキが友達になろうって言ってくれて……ここで、その意味が判った時からずっと……」

 胸で揺れていたネックレスを握り締めると

「この想いは、これからもずっと……変わらない」

 そして何かを決心したかのような真剣な表情になって

 

「あのね……アキは今日一日ウチの言う事なんでも聞いてくれるって言ったでしょ」

「僕に出来る事なら何でも聞くよ」

「一個だけで良いから……ウチのわがまま、聞いてくれる?」

「うん」

 僕が返事をすると、頬を赤く染めて大きな瞳を潤ませて……

 

「ウチ……ずっとアキの傍に居たいの。ずっとアキの傍で笑っていたい……約束……してくれる?」

 いつもの元気な美波とは違って……すごくしおらしくて、何かを期待するような目で僕を見ている。

 

 

 …………僕も美波の笑顔をずっと見ていたい。

 

 誰よりも一番近くで見ていたい。

 この想いはきっと……

 

 気がつくと、僕は目の前のとても魅力的な女の子を……抱き締めていた。

 

「こんな魅力的な女の子が……僕のことを好きだって言ってくれたから僕も僕に自信を持って言える」

 僕の腕の中で……少し震えているけど、頬を染めて僕をじっと見ている美波。

 

 

「美波が僕に自信をくれたから……僕も美波の事が好きだ」

 

 

 僕がそう言うと、美波は目を閉じて僕の胸に頭をつけてくる。

 

「僕は将来どころか、まだ進路すら考えてないんだけど……これだけはハッキリ言える」

 美波は、まるで眠っているかのように静かに僕の言葉を聞いてくれている。

 

「僕も……美波とずっと一緒に居たい。誰よりも一番近くで美波の笑顔を見ていたい」

 僕が言い終わるのを待っていたかのように美波が……

 

「アキの心臓……すごくドキドキしてる」

「だって……こんな魅力的な女の子に好きだって言われて……抱き合っているんだよ?」

 美波が頬を染めて潤んだ瞳で僕を見上げて

 

「ウチ……アキを好きになって良かった。だってこんなに幸せなんだもの」

「僕も……」

「そしてアキがウチを好きになってくれて……本当に嬉しい」

「いつになるか判らないけど……必ず僕の方からお願いするよ」

 僕の言葉を待っているかのように、美波がじっと僕を見つめている。

 

「ずっと……僕の傍に居てくださいって」

 

 僕がそう言うと……美波は少し驚いたような表情をしたけど、すぐ僕の胸に顔をうずめて

 

「ふふっ。アキって……本当に楽しいわね」

「えっ……どうして?」

「だってウチが、この前言った将来の事って……進学するのか就職するのか進路のつもりだったんだけど」

「ええっ!そうだったのっ!?」

「うん……でもアキは自分の進路よりもウチの事を考えてくれてたんでしょ?」

「そうなる……のかな」

 うーん。ひょっとして僕の早とちり?

 

「アキ」

「なに?」

 僕が美波を見ると……

 

 僕の目の前には長く揃った睫毛に大きな瞳。

 ポニーテールから仄かにシャンプーの良い香りがして……

 

 僕の唇には柔らかくて温かい美波の唇が重ねられた。

 

 

「……ウチからの返事……嬉しい?」

「う、うん」

「嬉しくないなんて言ったら一生許さないからねっ」

「一生言わないよ」

 僕が言い終わると……また軽くキスをして僕から離れて

 

「そろそろ……行こ?」

「うん」

 僕と美波は机の上に置いた上着や荷物を持って

 エントランスホールの方へ……

 

 少し進むと…………通路上にポールが二本立っていて何かロープのような物が張られていた。

 それには【関係者以外立ち入り禁止】と書かれたボードがついていた。

 

 それを避けて美波と先へ行こうとすると

 

「あら?あなたたち、もう良いの?」

 先ほどの司書さんが片手に何冊か本を持って話しかけてきた。

 

「はい。ウチらの用事は済みました」

 と、美波が言うと

 

「ふふっ。この間のお詫びよ」

 そう言ってロープを外して、僕たちが来た方へ歩き出す司書さん。

 

「メリークリスマス」

 と言って、片手を上げて奥の方へ行ってしまった。

 

 僕と美波は二人揃って、その後姿に頭を下げた。

 

 

 

 僕と美波の関係が…………本当の恋人になった。

 

 

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