僕とウチと奇妙な三角関係part01
……ガラッ
「おはよう」
教室の扉を開けて今日も元気良く挨拶をする。
「アキ、おはよう」
ポニーテールを揺らしながら美波が挨拶をしてくれる。
「おはようございます、明久君」
鈴を転がすような声で挨拶をしてくれる姫路さん。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁ」
霧島さんにアイアンクローをされて悶えている雄二。
うん、いつものFクラスの爽やかな朝の風景だね。
「お前らは俺を助ける気はないのかっ!?」
全く無い。
「夫婦喧嘩は犬も食わないって言いますし」
「どうせ坂本が悪い事したんでしょ」
……ガラッ
僕が入ってきたのとは反対側の扉が開いて
「お姉さまっ!ずっと会えなくて寂しかったですっ!!」
何者かが美波の方へ駆け寄る……清水さんだった。
「みっ、美春っ!いい加減にしなさいっ」
両手を突き出して必死に清水さんの抱き付きを防いでいる美波。
……ガラッ
今度は僕が入ってきた方の扉が開いて
「今日も朝から騒がしいのぅ」
「…………おはよう」
秀吉とムッツリーニが教室へ入ってきた。
「あのね、美春。よく聞いて。もう、こんな事はやめて欲しいの。だって……」
美波が真っ赤な顔で清水さんの抱き付きを抑えながらハッキリと告げる。
「……だって、ウチはアキと本気で付き合っているんだから」
「
シュカカカカカカッ シュカカカカカッ
咄嗟に盾にした左右の畳に無数のカッターが突き刺さる。
『『『……チッ』』』
舌打ちが教室中から聞こえてくる。
僕の畳返しも進化してなかったら危なかった。
「お、お姉さま……付き合っているなんて……今度も冗談ですよね?」
打ちひしがれたようによろめいて、その場に座り込んでしまう清水さん。
そんな清水さんを見て、少し離れた所でムッツリーニが畳に顔をこすりつけている。
そして美波は静かに首を横に振って答える。
「今度こそ冗談じゃないわ。ほんとの話よ……ねぇ、アキ」
「う、うん」
いきなり話を振られて簡単な返事しか出来ない僕。
みんなに秘密だったのは、もう良いのだろうか。
『『『なっ、なんだとーーーーっ』』』
クラスの中の殺気が高まってくるのが判る。
カッターの刃を出す音が教室中に響く。
…………が、意外な人物からの一言で、みんなが落ち着きを取り戻した。
「ちょっと待てっ!みんな少し落ち着けっ!」
須川君だった。
「吉井が島田と付き合うと言う事は、姫路と木下がフリーになるって事じゃないか?」
須川君の一言で再び教室が、ざわめきだす。
「そっ、そうか」
「俺たちにもチャンスが来た訳か」
「姫路さんと結婚したい」
みんな思い思いに好きな事を言っている。
姫路さんに熱烈ラブコールを送っていた奴はまだ諦めていないのか。
そんな中……
「そこの豚野郎が……お姉さまの近くに居るから……」
清水さんが近くに落ちていたカッターを拾い、僕の方へ……
「その豚野郎を始末してお姉さまの目を覚まさせるのですっ!」
ヤバい、目が本気だ。
とりあえず逃げないと……って、あれ?
僕は、畳に顔をこすりつけているムッツリーニに
転んでいる僕と清水さんの間に美波が割って入ってきた。
「もう、やめてっ、美春っ!!」
「ですが、お姉さま……」
「こんな事を続けていても、お互いに辛いだけだって何度も言ってるでしょ?」
「お姉さまは、その豚野郎に騙されているのですっ!」
カッターの刃を更に出す清水さん。
「やめてって言ってるでしょ?ウチの居場所はアキの隣だけよっ!」
「お姉さま……」
そこへガラッと扉を開けて鉄人がやってきた。
「ホームルームを……って、清水。またお前か」
「先生、今大事な話をしているところなんです。邪魔をしないでください」
「大事な話って、また『お姉さま』か?」
「そうですっ!」
「教室へ戻れ」
そう言って鉄人は清水さんを教室の外へ……
『お姉さまが目を覚ますまで美春は諦めませんからねっ!!』
清水さんは教室の外で、そう叫んでいた。
----お昼休み
いつもの五人で卓袱台を囲んでお昼を食べている。
ムッツリーニはジュースを買いに行ってるので今は居ない。
「しかし、やっと公言したか……今更だと思うがな」
「そうじゃのう……これで明久の、わしを見る目が変わってくれると良いのじゃが」
「?秀吉は秀吉じゃないか。何を今更?」
「坂本に木下、アキを誘惑しないでよね?」
「なんで俺が……そういう事は、ひ……」
雄二が何かを言い掛けて止まった。
「ひ……秀吉に言ってくれ」
「雄二よっ!何でわしなんじゃっ!?」
「美波ちゃんが羨ましいです……私も……」
姫路さんは先週から元気が無いな……なんとか励ましてあげたいんだけど。
あとで美波に相談してみるかな。
やっぱり同じ女の子だから何か、きっかけがつかめるかも?
「…………お待たせ」
六人分のジュースを持ってムッツリーニが戻ってきた。
「「「ありがとう」」」
それぞれジュースを受け取る。
「しかし清水さんにも困ったなぁ」
美波と付き合うなら本当になんとかしないと……
美波は相手にする気は無いみたいだから良いけど僕の身が持たない。
「本当ね……アキに何かあったら、ウチ……」
美波にも心配掛けちゃってるしなぁ。
「お前も清水みたいに島田に抱きつけば良いじゃねぇか」
「そっ、そんな事出来る訳無いじゃないかっ!?」
「いつぞやみたいに清水の目の前でキスするとか、どうじゃ?」
「ひっ、秀吉までっ!?」
それで止まるなら僕たちのファーストキスの時に止まってるだろう。
「この前は付き合ってるのか不明瞭だったからな。今回は言ってあるし効果あるかもしれないぞ?」
「さっ、坂本までっ……そんな事出来る訳無いじゃないっ!?」
こんな時、頭の良い姫路さんなら何か良い解決方法が考えつかないかな?
と思って姫路さんを見てみると……うわっ、なんか泣きそうになってるんだけどっ!?
「姫路さん、大丈夫?」
「えっ……ごめんなさい、大丈夫です。ちょっとおかずにカラシ付け過ぎちゃって……」
姫路さんでも、そんな事あるのか……と思っていると
「アキっ、ちょっとこっちに来なさいっ」
「わっ、どうしたの!?」
美波に教室の外まで引っ張られた。
(瑞希にあんまり変な事言っちゃダメよ?)
(変な事?)
(その……ウチらが付き合ってる事とかよ)
(ええっ、僕たちが付き合ってるのって変なのっ!?)
やっぱり僕は美波に釣り合わないんだろうか……
(急に、どうしたの?泣きそうな顔して)
(美波……やっぱり僕なんかが付き合ってたら迷惑だよね)
(いきなりどうしたのよ?)
(僕たちが付き合ってるのが変な事って……)
(アンタ、何勘違いしてるのよ?そんな訳無いじゃない)
(だって……)
美波が両手を僕の頬に当ててジッと目を見て……
(いい、アキ?ウチはアキの事が本気で好きなの。今も昔もこれからも絶対この気持ちは変わらないわ)
(ありがとう、僕も美波の事が好きだけど……)
(ありがと。この前までのウチなら、こんな事絶対言えなかったと思うの)
(うん)
(でもアキ言ってくれたわよね?ウチの事好きだって)
(うん、本当に美波の事が好きだよ)
(ウチは何があってもアキの事信じてる……だからアキもウチの事信じてくれる?)
(わかった……ごめんね、美波)
(判ってくれたなら良いわ……それで瑞希の事だけど)
(うん)
(ウチが話してみるわ…女同士じゃないと話しにくい事があるかもしれないし)
(そうだね)
美波はやっぱり頼りになるな。
僕もしっかりしないと。
(じゃあ、戻りましょ)
(うん)
「随分、時間がかかったのぅ」
「どっか遊びに行く約束でもしてたのか?」
「…………妬ましい」
「美波ちゃん羨ましいです……」
姫路さんが泣きそうになって僕たちを見ている。
「ちっ、違うよっ」
「そうよ…それより瑞希?今日の帰り、ちょっと付き合ってもらえる?」
「はい、私で良ければ……」
きょとんとした表情の姫路さん。
とりあえず姫路さんの事は美波に任せるとして
清水さんは、どうしたら良いのかなぁ。