僕とウチと恋路っ!   作:mam

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僕とウチと帰ってきた姉さんpart01

 姉さんから携帯を受け取り

 

「もしもし、母さん?」

『明久っ!?アンタ、何考えているのっ!』

 いきなり怒られた……僕が何をしたと言うのだろうか?

 

「いきなり、どうしたの?」

『どうしたのじゃないわよ。玲から聞いたんだけど、アンタ……』

 何かすごい興奮してるみたいだけど……

 

『結婚するって本当なのっ!?』

「ええっ!僕も初めて聞いたんだけどっ!?」

『しかも相手が……』

 相手って、美波しか思いつかないけど……その美波は真っ赤な顔をして僕をジッと見ている。

 

『……玲って、アンタ、いくら女の子にもてないからって実の姉に結婚申し込むなんて何処までバカなのよっ!』

「僕がそんな事する訳無いじゃないかっ!!」

 なんてことを言ってくれるんだ、このバカ姉はっ!?

 僕は携帯に手を当てて姉さんに向かって

 

「姉さんっ!なんて事を母さんに言ってるのさっ!?」

 僕が姉さんに文句を言ってる間も、母さんは何か言っていたけど……

 

「母さんには私の願望を言っただけですが……」

 その願望のおかげで僕は怒られてるのっ!?

 とりあえず携帯をまた耳に当てて

 

「それは姉さんの冗談だよ。僕は今、ちゃんと付き合っている彼女が居るよ」

『嘘言うんじゃないわよ。アンタみたいなバカでブサイクで甲斐性無しに彼女なんて出来る訳無いでしょ』

 今、貴方が罵倒した僕は、貴方から生まれてるんですよ?

 

『だから玲しか相手をしてくれる人が居ないから結婚を申し込んだのかと思っちゃったじゃない』

「母さん……僕は今、本当に好きで付き合っている彼女が居るんだ」

 美波が僕の事を好きだって言ってくれて……

 僕も美波の事が好きだから……

 この気持ちだけはちゃんと伝わって欲しい。

 

「彼女の名前は島田美波。信じられないなら今代わるからね」

『代わるって、今そこに居……』

 母さんからの返事を聞くまでも無く、僕は美波へ携帯を差し出して

 

「美波?僕の母さんなんだけど……代わってもらっても良いかな?」

「えっ!?ウチがアキのお母さんと……」

 恐る恐る携帯を受け取る美波。

 そして携帯を耳に当てると……

 

「あっ、あの……うっ、ウチ……」

 明らかに上がってるな。顔が真っ赤で手が震えている。

 そして……

 

Ich bin froh, dich zu treffen(はじめまして。あえてうれしいです)

 

 あ……久しぶりにドイツ語で話す美波を見るな。

 そんなに興奮して緊張しちゃってるのか。

 

Mein Name wird Minami, Shimada, gerufen(ウチは島田美波と言います)

 

 言ってる内容はさっぱり判らないけど……母さんはドイツ語も話せるんだったっけ?

 美波と母さんの電話の邪魔にならないように僕は小声で姉さんに

 

(姉さん?)

(何ですか?)

(母さんってドイツ語も話せるの?)

(もちろんです。母さんは世界の何処ででも誰とでも会話出来ます)

 今更ながら、母さんはすごい人だったんだな……息子の生活資金を着服しようとしてたけど。

 

(ちなみに私も誰とでも会話出来ます)

(そうなの?すごいね)

(はい。これで会話出来ない人は居ません)

 と言って姉さんが自信たっぷりに差し出したのは……握り締めた拳だった。

 それで会話出来るのは漫画の中だけじゃないかなっ!?

 

Ich mag Aki, seit ich (ウチはアキに助けてもらってから)Aki mir helfen ließ(ずっとアキが好きです)

 

Dort will ich mit Aki überall im Leben sein(ウチはずっとアキと一緒に居たいんです)

 

 美波の言ってる事を聞いていた姉さんが僕に小声で話しかけてきた。

 

(アキくん。美波さんを泣かすような事をしてはいけませんよ)

(当たり前だよ。僕は美波にはずっと笑ってて欲しいんだ)

 僕の返事を聞くと姉さんはにっこりと微笑んだ。

 

 すると美波が携帯を僕の方へ差し出して

 

「アキ、お母さんが代わって欲しいって」

「ありがとう」

 僕は携帯を受け取って耳にあてると

 

「もしもし」

Ich glaubte nicht, daß du möglicherweise einen (まさかアンタに彼女が出来るとはねぇ)Liebhaber hattest』

「あの、母さん?僕はドイツ語はさっぱり判らないんだけど」

『自分の彼女の言う事くらい、きちんと聞いてあげないとダメでしょ』

「ごめんなさい」

 ん?彼女って……母さんも判ってくれたのかな?

 

『まぁ玲が言ってた結婚の事は判ったわ』

「判ってくれた?良かった」

 僕がホッと胸を撫で下ろしていると

 

『美波さんはアンタには勿体無い彼女ね』

「うん。僕もそう思うよ」

『そう思うって……アンタ、美波さんに振られたら本当に玲と結婚するしかなくなるわよ』

「母さん……冗談でもそれはやめて」

 僕がガックリと項垂(うなだ)れると……美波が心配そうな顔で僕を見ている。

 

『まぁ良いわ。それよりアンタ、身体の方は問題無いの?』

 母さんが僕の身体の心配をするなんて珍しいな。

 いつも健康面に関しては“超”が三個付く位、放任主義なのに。

 

「うん。僕は元気だよ。父さんと母さんも元気?」

『そうね。大丈夫よ』

 元気って聞かれて普通大丈夫って返事をするかな?

 

『じゃあ、しっかり勉強するのよ。美波さんにもよろしく言っておいてね』

「判ったよ」

 僕がそう言うと電話は切れてしまった。

 母さんは相変わらず元気そうだったけど……

 姉さんに携帯を返すついでに父さんの事も聞いてみるかな。

 

「はい、姉さん。携帯ありがとう」

「どういたしまして」

「でも、何で母さんに電話したの?」

「母さんがアキくんと話がしたいから家に着いたら電話するように言付(ことづ)かってきたのです」

「ふぅん、そうなんだ……ところで母さんは元気そうだったんだけど、父さんは?」

 すると姉さんは笑いながら

 

「元気でしたよ」

「そっか。良かった」

 僕がホッとしていると……姉さんは信じられない言葉を続けてきた。

 

「ええ、病院のベッドの上で元気に寝てました」

「どうして元気な人が病院のベッドで寝てるのさっ!?」

 僕が驚いていると姉さんは何事も無かったかの様に

 

「姉さんが母さんのところへ行ったのは父さんが交通事故で太ももの骨を骨折したからです」

 とんでもない事をさらっと言ってるんだけど、この人……

 

「動けなくなった父さんの代わりに私が仕事をしてきたんですよ」

 えっへん、とばかりに姉さんは胸を張っている。

 そんな事より父さんの容態の方が心配なんだけどっ!?

 美波は自分の胸に手を当てながら姉さんを羨ましそうに見ていた。

 

「動けなくなったって……父さんは大丈夫なの?」

「ええ。とりあえず昨日から松葉杖で動けるようになったので姉さんは帰ってきました」

「それは大丈夫とは言わないのでは……」

「でも母さんは私が帰る時、嬉しそうに父さんを引っ張りまわしていましたし、父さんもそれを喜んでいました」

 父さん……どうしてそんな人と結婚して、生まれてきた子供をこんな娘に育てたのさ……

 

「ところでアキくん」

「どうしたの?」

「姉さんは疲れて、お腹も空いているのですが」

「あ、ごめんね。今日は姉さんが参加出来なかったクリスマスパーティーの代わりに美波と一緒に料理を作ったんだ」

「それは楽しみですね。では食事が先ですね」

 姉さんは笑顔になって鞄を持つと

 

「荷物を置いてきてから食事を頂きますね」

 と言って自分の部屋へ……

 僕と美波はキッチンへ行って食事の準備をする。

 

 

 

 そして姉さんがリビングに来る頃には……

 テーブルの上には御馳走が並んでいて

 姉さんが席に着くとノンアルコールのシャンパンで三人で乾杯をする。

 

「「姉さん(玲さん)お疲れ様(です)」」

「ありがとうございます」

 

「どれも美味しそうですね」

「うん、僕と美波で腕によりを掛けて作ったんだ」

「では頂きます」

 姉さんはカナッペを一つ手に取ると……一口食べて嬉しそうに顔を綻ばせた。

 

「美味しいです。チーズの味を邪魔しないようにいろんな味がして」

 美波が作ったカナッペを気に入ってくれたみたいだ。

 

「これはお酒がすすんでしまいますね」

 そう言ってグラスを傾ける姉さん。

「ごめんね。僕と美波はまだ未成年だし……」

「いえ、これも美味しいですよ」

 にっこりと微笑んでくれる姉さん。

 以前お酒を飲んだ時の姉さんは僕にしつこく絡んできたからなぁ。

 出来れば、それは避けたいんだよね。

 

「でも、アキくん」

 姉さんが少し不満気な顔になって……

「私は電話で、お出迎えしてくれる時は可愛い格好でお願いします、と……」

「ええっ!?そんな事言ってたっけ?」

 確か、メイド服がどうとか言ってた気がするけど……途中で電話を切っちゃったからなぁ。

 

「私からの電話を最後まで聞いてくれないアキくんが悪いんですよ。人の話は最後までちゃんと聞かないと」

「ごめんなさい……って、何で僕がメイド服を着ないといけないのさっ!?」

 僕が悪いって気がしちゃったじゃないか。

 あやうく姉さんに丸め込まれるところだったよ。

 

「アキくんの可愛い姿が楽しみで頑張ってきたのに……」

 姉さんが俯いて身体を震わせている……ひょっとして僕、姉さんを泣かせちゃったのっ!?

 

「姉さん……仕事で疲れて帰ってきたのに、僕……何もしてあげられなくてごめんね。でも……メイド服は着たくないんだ」

「判りました」

 姉さんは顔を上げて僕をジッと見つめてきて……

 

「アキくんの可愛い格好は諦めますが……」

 と言うと、椅子を持って僕の隣へ移動してきて椅子を置いて座る。

 そしてにっこり微笑むと……

 

「アキくんに食べさせてもらう事にします」

「ええっ!?」

 なんで美波の目の前で姉さんに食べさせてあげないといけないのさっ!?

 その美波は、と言うと……羨ましそうな寂しそうな複雑な表情をしていた。

 

 僕が美波の方を見ていると姉さんも美波の表情に気がついたのか……こんな事を言ってきた。

 

「そう言えば、アキくん。私が居ない間、美波さんにお世話になっていたのではありませんか?」

 

「うん。美波のおかげで冬休みの課題も終わったし、今朝も朝御飯を作ってくれたし」

「では美波さんにも食べさせてあげないといけませんね」

 そう言うと姉さんは美波の方へ笑顔を向ける。

 

「えっ!ウチも良いんですかっ!?」

 すごく嬉しそうな美波。

 僕としては姉さんより美波だけに食べさせてあげたいんだけど……

 

「もちろんです。アキくんがいつもお世話になっていますし……アキくんもたまには奉仕するのも良いでしょう?」

「そうだね。美波にはいつもお世話になってるし……心を込めて食べさせてあげるね」

「アキ……ありがとう」

 大きな瞳を少し潤ませながら頬を少し染めて……心の底から嬉しそうな美波の笑顔に僕は見蕩れてしまった。

 

「アキくん?実際には着なくても良いですが、心にメイド服を着たつもりで精一杯奉仕してください」

「結局、僕はメイド服を着ないといけないのっ!?」

「ふふっ。アキのメイド姿、可愛いからウチは好きよ」

 そんな会話をしながら僕は美波と姉さんに食べさせてあげて……僕も二人に食べさせてもらった。

 

 

 

 そして三人での楽しい食事が終わり……

 

「じゃあ、ウチ、そろそろ帰ろうかな……アキ、玲さん、今日は本当にありがとうございました」

 美波が立ち上がって、ポニーテールを揺らしながらぺこりと頭を下げている。

 

「僕、送っていくよ。もう、夜だし何かあったら危ないからね」

「あの……今から帰ると危ないので今日はうちに泊まっていきませんか?」

 僕が送っていこうとすると姉さんが美波を引き止めた。

 

「いいんですか?」

 嬉しそうに聞き返す美波。

 僕も美波と一緒に居る時間が増えるのは大歓迎なんだけど……

 

「ええ。今、外に出るのは危ないので是非」

「でも美波の両親も心配するんじゃ……」

 と僕が言うと、姉さんはにっこりと微笑みながら

 

「美波さんのご両親もたぶん今外を歩くくらいなら外泊を許可してくださると思いますよ」

「そうなの?」

「外を見た方が早いですね」

 姉さんがそう言うので僕と美波は窓の方へ行き、カーテンを勢い良く開けると……

 

 外は一面、白に支配された世界だった。

 そう言えば姉さんが帰ってきた時、白い結晶みたいな物が肩や鞄に乗っていたし

 テレビのニュースでは雪がたくさん降っていたっけ。

 

「うわぁ。これじゃ外を歩くのは大変だね」

「そうね」

「判って頂けましたか」

 姉さんがそう言ってると美波は携帯を取り出し

 

「じゃあ、お母さんに泊まって良いか聞いてみます」

「お母様とお話が終わりましたら私に代わって頂けますか」

「はい、判りました」

 と言って美波は携帯を耳に当てている……そして少し話した後、姉さんに携帯を渡した。

 

「着替えとか、どうするの?」

 僕が聞くと美波は自分が持ってきた大きなバッグを指差し

「大丈夫よ。念のため、ちゃんと用意してあるから」

「へぇ、ずいぶん用意が良いんだね……って、さっき言ってた『その時』って、ひょっとして今の事?」

「そうよ。よろしくね、アキ」

 優しく微笑む美波。

 

「美波さん。お母様が代わって欲しいとの事です」

 美波のお母さんと話し終わった姉さんが美波に携帯を返した。

 

「では、私は先にお風呂を頂きますね」

 姉さんはリビングを出て行き……

 美波も話し終わって携帯を仕舞うと

 

「じゃあ、後片付けしちゃいましょうか」

 テーブルの上のお皿を片付け始める美波。

 

「あ、僕がやるよ。美波は朝から働いているんだから少し休んでて」

「そう?でもウチ、休むならアキの傍で休みたいから……二人でさっさと終わらせましょ」

 

 そして二人で冬休みの色んな予定を話しながら後片付けを終わらせた。

 

 

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