僕とウチと恋路っ!   作:mam

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12月30日(金)


僕とみんなとおせち料理part01

 今、美波と二人で霧島さんの家の前に居る。

 おせち料理を作るために来たんだけど……相変わらず大きい家だなぁ。

 左右の門柱には僕の背丈くらいの門松が(そび)え立っている。

 

 呼び鈴を鳴らして待つこと、しばし……大きなドアが開いて

 和服姿の霧島さんに出迎えられた。

 

「……吉井と美波。いらっしゃい」

 霧島さんについて歩いていく。

 長い艶やかな黒髪に端正な顔立ち、歩く姿は背筋をきちっと真っ直ぐにして規則正しく足を運んでいる。

 こういう格好や立ち居振る舞いを見ると、やっぱり霧島さんは美人だな、と思ってしまう。

 何で雄二なんかに……と、思う事も度々あるけど、よく考えたら

 何の取り柄も無い僕の事を、美波が好きになってくれたのと似ているのかもしれない。

 僕には雄二の良さはさっぱり判らないけど。

 

 そして美波が和服を着たら……

 前に見たのは、みんなで海に行った時に確か浴衣を着てたんだっけ。

 あの時の美波はすごく可愛くて……他の誰よりも色っぽくてドキドキしたんだよね。

 

 …………思い出したら、またドキドキしてきちゃったよ。

 

「アキっ!何デレデレしてるのよっ!?」

 美波に頬を抓られた。

 

「いひゃい」

「もぅ……ウチという者がありながら他の女の子にデレっとするアキが悪いんだからねっ!」

 美波が頬を少し膨らませながら僕を睨んでいる。

 

「ちっ、違うよ。美波が和服を着たらすごく似合うだろうなぁって」

「えっ……そっ、そうかな?」

 頬をほんのり染めて少し俯き加減に照れる美波。

 

「夏休みに美波の浴衣姿見せてもらったでしょ?」

「すごく動き辛かったけどね」

 少し俯いたままで、はにかんだ笑顔を見せてくれる。

 

「その時の美波が、その……なんて言うか、すごく色っぽくてドキドキしちゃってさ」

 ちょっと気恥ずかしくて頬を少し掻いてしまう。

 すると美波は頬を赤く染めたまま、大きな瞳を少し潤ませて両手を合わせて僕の方を向くと

 

「ほんと?アキが……ウチの事を色っぽいって思ってくれたの?」

「うん。ほら、和服って胸が無くても、すごく格好良いとっ、僕の腕の関節が増えるほどっ痛いぃぃぃっ!」

「ほんっと、アキは失礼ねっ!」

 美波に手首を掴まれて腕をへし折られそうなほど捻るように抱き締められている。

 

 すると霧島さんが歩みを止めて僕たちの方へ振り返ると……

 

「……美波。そこはもう少し、こういう角度で捻ると効果的」

 と、言いながら美波の手に自分の手を添えて僕の手首の向きを少し変えると……

 

「いだだぁぁぁっ」

 腕だけが捻じ切れるように痛かったのが、手首まで千切れるように痛くなったよっ!?

 

「本当だわ。すごく痛そうね。ありがとう、翔子」

 霧島さんに御礼を言う美波と小さく手をグッと握り締める霧島さん。

 女の子同士の会話って、こんなに痛いものだったのか。

 霧島さん相手の雄二の大変さが少し判ったような気がするよ……腕の関節が増えそうになるほど。

 

 そして美波に腕を極められたまま、霧島さんについて少し歩くと

 霧島さんが立ち止まり、ドアを開けると……すでに僕たち以外全員揃っているみたいだ。

 

「遅いぞ。明久に島田」

「ごめん。僕がちょっと寝坊しちゃったからさ」

「しかし、雄二よ。明久たちが最後なのは事実じゃが、わしとムッツリーニが来たのも10分くらい前じゃぞ?」

 秀吉が助け舟を出してくれた。なんていい人間なんだろう……顔も性格も。

 

「明久君と美波ちゃん、今日も仲が良いんですね」

 ふわふわとした長い髪と胸と雰囲気でいつもの笑顔の姫路さん。

 でも、これは腕を組んでいるんじゃなくて関節技を極められているんだよ。

 

「ねぇねぇ、ムッツリーニ君」

「?…………どうした、工藤」

 部屋に入った僕と美波を見て、工藤さんがムッツリーニに近付き……

 

「えいっ」

 いきなりムッツリーニの腕に自分の腕を絡めた。

 

 ボタボタボタ……

 

 うんうん、今日も綺麗な血の色だね。ちゃんと鉄分を取っているみたいでなによりだ。

 

 プシャァァァァァァッ

 

 あれ?ムッツリーニの出血量が増えたな。どうしたんだろう?

 

「愛子ちゃん?胸が土屋君の腕に当たってるみたいですよ」

「えっ?あっ、ムッツリーニ君っ、大丈夫っ!?」

「工藤よ。それは逆効果だと思うのじゃが……」

 鼻血を止めようと慌ててムッツリーニの頭を抱きしめる工藤さんと

 死に掛けているのに嬉しそうなムッツリーニを見ていると……

 

 何故か、物凄く恐ろしい殺気を感じるんだけど…………僕の隣から。

 

 恐る恐る美波を見ると……大きな瞳に涙を溜めて僕を睨んでいる。

 

「どうせウチは当たるほど胸が……アキのバカァァァーーっ!!」

 美波が僕の腕を離すと、すぐに僕の右腕と左足に自分の手足を絡めて身体を寄せてきて……

 全身の骨が砕かれるかと思うくらいの抱擁だった。

 

 

 ムッツリーニが輸血をしていて、僕は手足が痺れているので床に寝ている。

 ムッツリーニの横には工藤さんが座っていて、僕の横には美波が座っている。

 

「まったく、お前らは……何をしに来たんだ」

 雄二がおでこに手を当てため息をつきながら僕とムッツリーニを見ている。

 

「まぁいい。で、今日の予定だけどな」

「僕と美波はおせちを作りに来たんだけど」

「判ってる。後、他に作ったおせちを持って帰る者は居るか?」

 雄二が僕たちを見回す。

 ……どうやら僕と雄二だけみたいだ。

 

「じゃあ、持って帰るのは俺と明久だけか。島田はいらないのか?」

「ウチはいらないわ。アキと一緒におせちを作って……あの…その……」

 あれ?美波が真っ赤になって俯いちゃったよ?

 そして……床に寝ている僕のお腹に人差し指で『の』の字を書いている。

 

「美波?どうしたのぉぉっ、僕のお腹がぁっ!?」

「ウチはアキと一緒におせちを作って…………一緒に新年を迎えたいだけだから」

 

 …………僕のお腹に人差し指をめり込ませて『の』の字を書いている。

 

 字を書いているというより、内臓を触診されているみたいだ。

 美波の細くて綺麗な指がよく折れないな……と思うくらい、僕の内臓をマッサージしてくれた。

 

 

 そして僕とムッツリーニが立ち上がれるくらいまで回復すると霧島さんが

 

「……今日の夕食は今準備してもらってるから、おせちが出来る頃には食べられると思う」

「ありがとう、霧島さん」

「いつも悪いわね、翔子」

 僕と美波が御礼を言うと……霧島さんは染めた頬に両手を当てて

 

「……だって今日は私と雄二の披露宴だから」

「「「「ええっ!?」」」」

 霧島さんが雄二と今日結婚するのっ!?

 

 …………でも別に今更と言う気がしなくも無いけど。

 なんて考えていると

 

「……雄二が、この前私にプロポーズしてくれた」

「ばっ……お前、何言ってんだっ!?」

 いつもなら雄二がこんなに顔を真っ赤にして否定する事は無いから……霧島さんと何かあったのかな?

 

 すると普段表情があまり変わらない霧島さんが珍しく拗ねた感じで

 

「……雄二は私の事が好きだって言ってくれた」

「確かに言ったが俺が言ったのは好きだって事だけで結婚なんて一言も……」

「……どうして?お互いに好きなら結婚しても問題ないはず」

「それはお互いが、ちゃんと自立していれば問題ないが、まだ俺たちは学生……」

 雄二が真っ赤になって霧島さんに何か言っていると……

 

「翔子、おめでとうっ!」

「翔子ちゃんっ!おめでとうございますっ!!」

「代表っ!良かったねっ!幸せになってねっ!!」

 美波と姫路さんと工藤さんが霧島さんを囲むように祝福している。

 そして僕たちは、と言うと……

 

「ついに言ったか、雄二よ」

 満面の笑顔の秀吉と

「くたばれぇーーっ!」

「ぐぁっ!?」

 真っ赤になって照れて隙だらけの雄二の顔面に、僕がハイキックをお見舞いすると

「…………(バチッバチッ)」

 ムッツリーニがスタンガン(二十万ボルト)で雄二にトドメを刺した。

 とりあえず僕たちも雄二を囲んで制裁という名の祝福を……

 

「おぬしらはまったく……」

 秀吉は雄二が起き上がるまで呆れ顔だった。

 

 

 

「いつつ……まったくひでぇ目にあった」

 首筋を押さえながら雄二が立ち上がると僕を睨んで

「大体、俺らより先に明久たちの方が付き合ってたんじゃないのか」

「僕たちはまだ結婚なんか考えてないよ……って、痛ぁっ!」

 僕がそう言うと美波が思いっきり僕の左手の甲を抓った。

 

「アキのバカっ!ウチにずっと隣に居て欲しいって、ウチのお父さんにも言ってくれたのにっ!」

 美波がそう言うと女性陣が……

 

「ええっ!?あの明久君が、美波ちゃんのお父さんにそんな事言ったんですかっ!?」

「吉井君、もぅ美波ちゃんのお父さんにご挨拶しちゃったんだねっ」

「……美波が羨ましい」

「明久よ。おぬし、言う時は言うんじゃのぅ」

 それぞれ笑顔で美波に祝福をしている。

 そして雄二とムッツリーニは……

 

 

「さっきのお返しだっ!」

 僕が美波に手を抓られているので油断しているところを

 雄二が僕の頬を殴ろうとすると、その拳を霧島さんが両手で包みこみ

 

「……今日、雄二も私のお父さんとお母さんに話をしていって」

「はぁ?何で俺が……」

 雄二がそう言うと……

 

――ゴキッ

 

「痛ぇぇっ!」

 雄二の拳を包んでいた霧島さんの両手が、雄二の手首の関節を外したみたいだ。

 

 

「…………覚悟」

 ムッツリーニがスタンガンを僕に向けようとすると……

 

 スタンガンが握り締められているムッツリーニの右腕を工藤さんが引っ張って

 

「ねぇ、ムッツリーニ君?ボクも誰かにそんな事を言われてみたいんだけどなー」

「…………誰かに言ってもらえばいい。それより俺は明久に……」

 ムッツリーニが工藤さんの手を振り解こうとすると……

 

「土屋君っ!愛子ちゃんのお願いを聞いてあげてくださいっ」

「そうじゃのぅ。ムッツリーニよ、工藤の言う事をちゃんと聞いてあげたらどうじゃ?」

「…………何故、俺が……」

 ムッツリーニがすごく困っているみたいだ。

 女の子に囲まれて羨ましい状況だというのに。

 

「明久君は美波ちゃんと、坂本君は翔子ちゃんとカップルなんですから」

「…………俺と工藤には何の関係もない」

 ムッツリーニが往生際悪くジタバタしていると……姫路さんが

 

「だってここには男子は後、土屋君しか居ませんから」

「ちょっと待つのじゃ、姫路よ。男子なら、わしも居るじゃろう?」

 秀吉がそう言うと……雄二を除く全員が

 

「「「「「「ええっ!?」」」」」」

 

「納得できんのじゃぁぁぁっ」

 

 秀吉の魂からの叫びが部屋に響いた。

 

 

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